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レッドがロケット団に入った理由は、誰も知らなかった。
ただ…1つ、思い当たることならある。
レッドがいなくなる、前日。
アイツは俺に言った。
『グリーン。お前ならさあ。全部犠牲にしても、一番大切なものを守れるとしたら…どうする?』
アイツにしては、ひどく真面目な話題だったと思った。突拍子もない話題だとも。
でもすぐに『やっぱいいや!』と、笑顔になったからその時は気にとめなかったが…
後日、ロケット団に入ったレッドを見て、
アイツは何か、“大切なもの”を守るために他を全て犠牲にしたのだと、そう思った。
濁した言い方だったから断定はできないが、レッドにとっての大切なものはきっとイミテのことだろう。
レッドがロケット団に入らなければ、イミテが危険にさらされる状況にあったということか…
「(最初は、それほど気にとめてなかったんだがな。)」
ロケット団に入ったとしても、それは騙し(フェイク)で、アイツの実力なら内部からロケット団を撲滅させることも可能だと思っていた。
まさか、本当に悪事に加担するようなことをやるとは思っていなかった。
だけど、数日前。
俺もイミテもいないとき、マサラタウンが襲撃された。
マサラの人たちの話しによれば、中心となっていたのは…レッドで。
止めようとしたオーキド博士(おじいちゃん)は身体中に大怪我をした。
今も自宅のベッドから一歩も動けずにいる。
「(見損なったぞ、レッド…)」
いくらイミテのためとはいえ、
そこまで簡単に全てを犠牲にできるというのか?お前は。
もう一度、手持ちのモンスターボールを確認する。
…戦う準備は万端だ。
「いくぞ、リザードン。」
リザードンを出して背に乗ると、リザードンは心配そうに振り返った。
コイツがこんな表情をするのは、俺の気がたっているときだけだ。
目を閉じて、深く2、3回呼吸をする。
…落ち着け。冷静さを失っていては、何も解決しない。
「…行くぞ。」
今度こそ、と、リザードンにそう言うと、リザードンはバサッバサッと翼をゆっくりと羽ばたかせ始めた。
ふわり、と上昇する。
…あとはこのままロケット団の本拠地に向かうだけだ。
「!待て、リザードン!」
リザードンが急上昇し始める直前、遠方にこっちに向かって走ってくる、ギャロップとケンタロスが見えて、あわててリザードンに指示をする。
再び地面に降りたリザードンの背からとびおり、彼らに近づく。
傷だらけのそいつらは、やけに焦った様子で俺に向かって必死に鳴いていて。
「(やはりイミテの手持ちか!)何があった!?」
人間の言葉が話せない彼らは、俺の服の裾をぐいぐいと引っ張ってとにかく先に進もうとする。
「イミテに何かあったのか?」
聞くとギャロップが頷いて、すぐに地面に伏せた。
背中に乗れということだろう。
リザードンをボールに戻して飛び乗ると、ギャロップはものすごい勢いで走り出す。
「…、」
このままたどり着く先は、おそらくロケット団の本拠地だろう。
おじいちゃんが襲われて、詳しい話を聞いたとき、イミテも隣にいたのだから。
「(また、アイツは勝手に…!)」
1人で本拠地に乗り込もうとしていた俺が言えることではないが。
でも、昔からそうだった。
イミテは何かと1人で解決する癖があって、事後報告が基本で。
幼なじみの俺とレッドは、そのたびに冷や冷やしていた。
特にレッドがそうだ。
アイツは…イミテのことが好きだったから。
(でもきっと、イミテは、)
(俺のことが好きだった。)
「…!」
俺がおじいちゃんの怪我を知ったとき、隣にはイミテがいた。
俺の表情を見て、今回の、この行動を起こしたのだとしたら…
(俺の…ため?)
「!ギャロップ!急いでくれ!!」
ギュッと首根っこにしがみついて、そう言う。
「くそ…!何をしようとしているんだ…!」
イミテがしようとしていることが分からない。
でもただただ、頭には嫌な予感ばかりがよぎる。
これは
レッドの気持ちを知っていながら、
イミテの気持ちを知っていながら、
今のままの関係でいたいと、答えを出さずにいた罰なのか。
「(早まるなよ…!)」
俺が行くまで何も起きないでくれ。
嫌なことばかり想像してしまう自分の弱さを恨めしく思いながら、ギャロップの背中で拳を握った。
地獄のブーメラン
(代償は全て俺に返ってきていいから)
(アイツらは、どうか無事で)
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