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ロケット団の攻撃はえげつないものだった。
彼らのアジトに正面から堂々と入って宣戦布告をした私。
手持ちポケモンのギャロップとかケンタロスとかにいい感じに暴れてもらって。周りにあるいろんなものを破壊して。
…気づいたら、真っ暗な闇の中にいた。
意識を失う最後にロケット団の団員の1人がプリンを出してたから(よくそんな可愛らしいポケモンを持っていたもんだ)、うたうで眠らされたってとこかな。
手持ちのポケモン達には、「私が捕まったら逃げて」とあらかじめ伝えておいたから、ちゃんと逃げただろう。
忠実な子達だけど、すごく優しいから…このことをグリーンに伝えにいってしまうっていう可能性があることが少し心配だけれども…。
続いて自分の状況を確認すれば、片足に鉄の足枷がしてあった。
モタモタしてる時間はないと、自由の聞く片足で壁を蹴ったり、叫んだりしてひたすら音をたてていたら、
案外すぐに扉が開いて、胸にRのマークの入った服を身につけた団員が数人入ってきた。
…最悪なことに、その中にレッドはいなくて。
もう、そこからは拷問にもほどがあるってくらい、殴るわ蹴るわの繰り返し…
私が挑発し続けたのも原因なんだろうけどね!
お腹を思いっきり蹴られたときは意識飛びそうになって死ぬかと思ったけど。
女の子なんだから少しは手加減しろって心底思った、全く…
しばらくして。
私の強情さに呆れ果てたのか、ロケット団もいなくなり、
真っ暗な部屋で1人、時が過ぎるのを待った。
身体がところどころズキズキ痛むけど…
でもさあ。
私にとってはグリーンが苦しんでる姿見るほうが、すごくすごく痛いから。
「(無理に、決まってるじゃん…)」
思い返して、苦笑がもれる。
祖父(オーキド博士)を傷つけられたときの、グリーンの表情っていったら、ほんと…
そんなの見せられて、さ
黙っていられるわけないじゃん。
しかも、私が見てることに気がつくと、何事もなかったみたいにいつもの表情に戻るんだもん。ずるいよ、そんなの。
(私だって、アナタのために何かしたいのに)
ボロボロの自分自身の身体を見て思う。
私の今の姿見たら、グリーン、あの時と同じ表情してくれるかなあ、なんて。
それはそれで、少しいいな、なんて思ってしまった。
そんなことを考えて、ただぼんやりしていたらギイッとまた、扉の開く音がした。
扉から差し込んできた光が直撃して一瞬目を細めたけど、案外すぐに目は慣れた。
「(来た…!)」
さあ、ここからだ。
大きく見開かれた目を見て思う。
気づいてた。彼(レッド)は私のことが好きだって。
だからこそ。それを利用する。
ひどいって分かってる。
最低だって、分かってる。
でもね。これにかけるしかないの。
……彼(グリーン)が傷つくところはもう見たくないから。
(大丈夫)
(誰だって、)
(好きな人が傷つくところなんて見たくないものでしょう?)
「イミテ…」
レッドが私の名前を呼んだ。
声色は…うん、昔と同じ。
まだ彼は感情を殺し切れていない。…よかった。
笑みがこぼれそうになるのをこらえて、私も「レッ、ド……?」、と、あくまで潮らしく、切なくつぶやく。
長い沈黙のあと、目をそらしたレッド。
「レッド…」
もう一度、名前を呼んでみた。
そして、これまでのことが水の泡にならないように、今の自分の表情を頭の中で慎重に想像しながら。
ゆっくりと、彼を見つめる。
泣きそうな顔で。
すがるような瞳で。
表情がくずれないように、細心の注意をはらいながら。
それにつられたのか、レッドもすごく悲しそうな顔をして、ゆっくりと私に近づいた。
スッと、彼の手が私の頬に触れる。
「(あーあ…)」
レッド。何で、ロケット団なんかに入っちゃったんだろう。
なんで、止めてあげられなかったんだろう。
あのまま何事もなく時が流れていれば、
私も、グリーンも、レッドも、
皆、仲のいい幼なじみでいられたのにね。
自分でも気づかないうちに、自然と涙が流れていて。
次の瞬間にはもう、レッドに抱きしめられていた。
反動で、
鎖が…鳴る。
ゆっくりと抱きしめ返せば、さらに強く抱きしめられての繰り返し。
「レッド、」
私が呼ぶその名前は…どんどん、どんどん彼の思いを募らせるだろう。
(まるで、)
(手を出してはいけない、麻薬のように)
「助け、て」
決定的なものは。
たった一言で良かった。
たった一言で、彼は完全に私に堕ちた。
「もう絶対に、誰にも傷つけさせないから。」
最後にもう一度強く抱きしめられたあと、ゆっくりと身体を離して…
私の頬にレッドの手が添えられて、私は彼の方に向く。
ごめんね、
そう思いながら、彼を見つめた。
「イミテ。」
名前を呼ぶのと同時に、額にレッドの唇が触れた。
…ごめんね、本当に。
「レッドが来てくれて、良かった…」
いないと聞いたときはどうしようかと思った。
暴力を受けている間もずっと「レッド、レッド、」と彼の名前を呼んでいたかいがあったらしい。
さあ、へんしんをして私の身体にはりついているメタモンに攻撃させるのは、どのタイミングにしようか。
貴方に恋した私は死んだ
(攻撃の合図は、)
(愛してる、の言葉なの)
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