人魚姫の投影
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「狂ってるって…?」
まだほのかに残る笑いの余韻をおさえて、あたしは言う。
「ねえ、狂ってるのはゴールドのほうだよ?」
「……俺の、何が狂ってるって?」
やっぱり、気づいてなかったんだ、ゴールド。
「今さ、クリスの心配したでしょ?」
「…ああ。」
「ほら、おかしいよ、ゴールド。」
「何がだよ…!」
気づいてない
かわいそうに
「ゴールドはクリスに騙されてる。」
「何をだよ!」
あたしが今、
教えてあげる
「どうしてそんな人の心配するの?」
「はっ……?」
「ゴールド。騙されてるんだよ、ねえ。そんな奴の心配する価値ないよ。」
クリスなんか好きになって、いったい何の意味があるの?
ねえ、ゴールド
そんなものよりあたしを見てよ
「……頭おかしい。いつからそんなんになっちまったんだよ…っ!」
「だから、おかしいのはゴールドだっ「黙れ!」
ゴールドの怒鳴り声が響く。
「いいかげんにしろよ…!こんなことしてただですむと思ってんのか?」
「あたしは、何も悪いことしてない。」
おかしいなあ。
むしろ誉めてもらえると思ってたのに。
「普通じゃない。おかしい。怖いよ、お前。」
ゴールドは冷たく言う。
なんで?
ゴールドに怪我させちゃったから怒ってるの?
ごめんなさい、あたし、ゴールドのことは傷つけるつもりなかったんだよ
「ごめんなさい…!」
本当に、好きだったから。
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい…!」
ゴールドもクリスも、何も言わず、ただ呆然とあたしを見ていた。
まるで、可哀想なものを見る目。哀れむような目。
やだ、そんな目しないで?
あやまってるのに、許してもらえないの?ねえ…。
空気が悪くて、居心地が悪くて、思わず下を向いた。
そしたら、ふとゴールドの腕に刺さったままのナイフが目に入った。
ゴールドの血がナイフの切っ先から滴り落ちる。
ああ、
今、やっと分かった
おかしかったのは、あたしだ
あたしはゴールドに近づいて、ナイフを勢いよく抜いた。
「うっ…」と彼から声がもれて「きゃあああ!」と彼女の叫び声。
そんなの気にせず、
抜いた、ナイフを、
自分の喉元へと向けた
なーんだ。
これであたしを刺せば、
私の血とゴールドの血が混ざり合う。
永遠に一緒にいられる
それってすごく素敵なことじゃない。
次の瞬間、真っ暗な闇に血が舞った。
「イミテ!バカ―……!!」
ぐらりと視界が揺れて、天井が移る。
でも床に叩きつけられる痛みはやってこなくて、
「おいイミテ!イミテ!」
あたしは気づいた。
「ゴー、ルド……。」
あたしは今、温かい腕の中。
愛しの彼の、腕の中。
「やっと…抱きしめくれたね。」
あたしの言葉にゴールドはびくりと反応し、顔をこわばらせた。
「えへへ……」
やっと、あたしを心配してくれた
やっとあたしだけを見てくれた
人魚姫は
泡になって消えたの
何故って
王子様を愛してるから
こんなの狂ってる?
別の方法があったって、彼女を否定する?
どちらにせよ、人魚姫は王子様を愛していた
とてつもなく愛していたんだ
愛と憎しみは隣りあわせ
ほんの少し歯車がくるうだけで、
歪んだ愛になってしまう
愛しすぎて、周りが見えなくなってしまう、
そうあたしみたいに、ね
だけど許してあげて?
人魚姫はただ王子様に愛されたかっただけだから
幸せになりたかっただけだから
大好きな大好きな、王子様に
どうか、王子様
愛してあげてください
けなげにアナタを想い続けた、
むくわれない、1人の少女を
(人魚姫は泡になって消えた)