人魚姫の投影
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「そ。じゃあ、あたしがクリスを消してあげるね?」
最後の最後に助かる方法を教えてあげたのに、クリスはそれを無視した。
これで何の罪悪感もなく殺せる。
あたしは悪くない。
そう、悪くないの。
大きくナイフを振り上げた。
クリスがいなくなれば、
クリスがいなくなれば、
クリスがいなくなれば
あたしは幸せになれるんだ
クリスにナイフが刺さる直前、あたしの視界の端に、見慣れた背中が映った。
グサリと、肉に刃がくいこむ感触。
え、何で…、
ここにいるの?
「ゴール、ド…?」
あたしの大きな一振りは彼の背中に突き刺さっていた。
どうして?
あたし、アナタを傷つけるつもりなかったのに…!
「い、いや…!」
怖くなって、思わず勢いよくナイフを抜いた。
カランカランとナイフは音をたてて床に落ちる。
同時にゴールドの体がびくりと動き、彼は「うぐ…!」と声をあげる。
「ごめんなさ「…っ!クリス!大丈夫か、クリス!」
あたしの謝罪の言葉が言い終わらないうちに、彼はクリスに近づいた。
自分の痛みに耐えるわけでもなく、
あたしの行動を怒るわけでもなく、
ただクリスを心配していた
「大丈…、っ!」
「動くな!傷口がひろがる!」
「ゴールドこそ、背中……!」
「これくらい平気だ!もうしゃべるな!」
クリスがよりかかれるように、彼は彼女を自分の肩にひきよせた。
やだ
触らないで、
触れないで、
「いや、だ………」
どうしていつもいつもクリスなの?
ゴールドが他の人の名前を呼ぶとこなんて見たくないの
他の人を触るのなんて見たくないの
「離れてよ……!」
やっぱりクリスがいなくならないと、あたしは幸せになれない
落ちてたナイフをつかみ、今度こそ彼女を殺そうともう一度振り上げた。
でも、また
それは彼女には当たらなくて
グサリ、と肉にささった感覚。
真っ赤な血がポタリと滴れ落ちる。
「お前、なんなんだよ。」
次に聞こえたのは愛しい彼の低い低い、声。
ずいぶん落ち着いたように見えるけど、その額にはうっすらと汗をかいていた。
ゴールドが、自分の腕を一本犠牲にする覚悟でナイフを止めていた。
ナイフの切っ先が刺したほうとは逆側からチラリと見える。
そう………、貫通するほど深く、刺さっていた。
「い、いやああああああ!!」
クリスの叫び声が部屋に響く。
クリス、自分が刺されても何も発狂しなかったのに。
何、今さら。
ゴールドは額に汗をうかべながら、はあはあと少し乱れた呼吸をしていた。
そして冷たく鋭い瞳であたしを見る。
ああ、アナタの目にあたしが映ってる。
……でもあたしが憧れてたものとはずいぶん違うね。
「何なんだ…!」
冷たい視線。
それは彼がいつもクリスに向ける温かい視線じゃない。
何だか怖いよ。
「おかしいだろ、狂ってる…!」
狂ってる?あたしが?
「あはっ、」
思わず、声がもれた。
「あははははは!」
そして部屋に響いた。
お腹をかかえて、あたしは笑った。