悲しい心
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プツッという音をたてて電話はきれた。
きったのはもちろん私じゃなくて、ゴールドだ。
「はあ……」
緊張の糸がほどけて一気に気が抜けて、ペタンとその場にすわりこんだ。
ゴールド…怒ったよね、絶対。
私が逆の立場でもきっと怒ってたもん。
自分の好きな人が自分のこと好きじゃなかった、なんて知ったら。
でもなんだか、やけに私の心は晴れていて。
今までずっと私の心の中を支配してた後ろめたさとか罪悪感とか、何もなくなって。
“これでよかったんだな”と、改めて感じた。
「好きに…、なれればよかったのになあ…。」
ゴールドは、私に、優しくしてくれた。
おもしろい話しをたくさんしてくれた。
明るく笑いかけてくれた。
私の異変に一番に気づいて、心配して声をかけてくれた。
私を、好きだと言ってくれた。
彼は私に、たしかに、数えきれないほどの何かを与えてくれたのに。
私は彼に、何も返してあげられなかった。
「(ごめん、ね…)」
心の中でそう呟いたまさにそのとき、ピンポーン、と家のチャイムが鳴った。
「…っ、先輩…!!」
「!?ゴールド!?」
ドアの向こうから聞こえてきたのは切羽詰まったような声が聞こえて、私は驚きながらもドアノブに手をかける。
でも、
「そのままで聞いてください。俺、今すげー情けない顔してると思うんで。」
そんなゴールドの言葉に、手を止めた。
「…先輩。俺、急に別れるなんて言われても納得できないッス…」
ゴールドは悲しそうに、つぶやくように話し始める。
「俺にここを直してほしいとか、直ればまだ付き合えるとか…そう言う可能性はないんスか?」
ゴールドの話を聞きながら、そういう問題じゃない、と再確認した。
「うん…ごめん、ね。……ゴールドは何も悪くないの。私が悪いだけで、本当に……だから、」
うまく言葉がまとまらない。
でも私はゴールドと付き合っていながら彼に惹かれてなくて…
たしかなことは、
悪いのはゴールドじゃない。私だ。
私がズルかった。
だから、彼を傷つけた。
「……そうッスか。」
ゴールドはやっぱり、さびしそうにつぶやく。
「……じゃあ、仕方ないッスね。」
「え、」
「俺だけ想ってても、仕方ないじゃないッスか。」
「ゴールド、「俺、気づいてたんスよ。」
トン、とドアの向こうで音がした。
ゴールドがドアに寄りかかったのかもしれない。
「先輩が、俺のこと好きじゃないかもって。」
「え…」
「一緒にいるときとか、いつも遠い目…してたから。」
もしかしたら、ゴールドは覚悟してたのかもしれない。この日を。
知ってて、彼もまたずっと苦しみながら私と一緒にいたのかもしれない。
「別れましょっか、先輩。」
ははっ、と乾いた笑いとともに、彼は言った。
「………うん。」
私は、それしか言えない。
今私が何を言っても彼を傷つけてしまいそうで、何も言えない。
言葉がうかばない。
「今後はちゃんと、心の底から好きになった人と付き合ってくださいね?」
皮肉でもなんでもない、本当にそれが彼の気持ちなんだな、と分かるような口調でゴールドは言った。
「そうじゃないと、俺が別れた意味、なくなっちまうから。」
きっとドアの向こうで彼は少し悲しげに笑っている。
「俺、先輩の笑った顔がすげえ好きなんッスよ。……だから、約束してください。」
私の返事も聞かず、……「じゃ。」と、ゴールドは言って、どんどん遠ざかっていく。
「うっ…、ふ…」
そこで初めて、涙がこぼれた。
ほんの少し前まで気持ちが晴れた、なんて思っていた自分が情けない。
自分の気持ちしか考えられてなかったことが、たまらなく情けない。
「ごめん、ね…、ごめん…な、さい…!」
嗚咽でうまくしゃべれなくて、途切れ途切れに、そう言う。
彼もまた、苦しんでいたのに。
「ごめ、んね…、ゴールド……!」
こんなときにも彼の助けになれないなんて、
私は本当に、彼に何もしてあげられなかった。
それでもやっぱり、未練はなくて。
この道を選んだことに、後悔はなくて。
ゴールドを好きになれなかった自分に、ほとほと嫌気がさした。
彼は、こんなにも私のことを想ってくれていたのに…ね。
悲しいのは、誰?
(私には、結局、)
(彼に想われる覚悟なんてなかったんだよ)
******
お題→『ひよこ屋』様
きったのはもちろん私じゃなくて、ゴールドだ。
「はあ……」
緊張の糸がほどけて一気に気が抜けて、ペタンとその場にすわりこんだ。
ゴールド…怒ったよね、絶対。
私が逆の立場でもきっと怒ってたもん。
自分の好きな人が自分のこと好きじゃなかった、なんて知ったら。
でもなんだか、やけに私の心は晴れていて。
今までずっと私の心の中を支配してた後ろめたさとか罪悪感とか、何もなくなって。
“これでよかったんだな”と、改めて感じた。
「好きに…、なれればよかったのになあ…。」
ゴールドは、私に、優しくしてくれた。
おもしろい話しをたくさんしてくれた。
明るく笑いかけてくれた。
私の異変に一番に気づいて、心配して声をかけてくれた。
私を、好きだと言ってくれた。
彼は私に、たしかに、数えきれないほどの何かを与えてくれたのに。
私は彼に、何も返してあげられなかった。
「(ごめん、ね…)」
心の中でそう呟いたまさにそのとき、ピンポーン、と家のチャイムが鳴った。
「…っ、先輩…!!」
「!?ゴールド!?」
ドアの向こうから聞こえてきたのは切羽詰まったような声が聞こえて、私は驚きながらもドアノブに手をかける。
でも、
「そのままで聞いてください。俺、今すげー情けない顔してると思うんで。」
そんなゴールドの言葉に、手を止めた。
「…先輩。俺、急に別れるなんて言われても納得できないッス…」
ゴールドは悲しそうに、つぶやくように話し始める。
「俺にここを直してほしいとか、直ればまだ付き合えるとか…そう言う可能性はないんスか?」
ゴールドの話を聞きながら、そういう問題じゃない、と再確認した。
「うん…ごめん、ね。……ゴールドは何も悪くないの。私が悪いだけで、本当に……だから、」
うまく言葉がまとまらない。
でも私はゴールドと付き合っていながら彼に惹かれてなくて…
たしかなことは、
悪いのはゴールドじゃない。私だ。
私がズルかった。
だから、彼を傷つけた。
「……そうッスか。」
ゴールドはやっぱり、さびしそうにつぶやく。
「……じゃあ、仕方ないッスね。」
「え、」
「俺だけ想ってても、仕方ないじゃないッスか。」
「ゴールド、「俺、気づいてたんスよ。」
トン、とドアの向こうで音がした。
ゴールドがドアに寄りかかったのかもしれない。
「先輩が、俺のこと好きじゃないかもって。」
「え…」
「一緒にいるときとか、いつも遠い目…してたから。」
もしかしたら、ゴールドは覚悟してたのかもしれない。この日を。
知ってて、彼もまたずっと苦しみながら私と一緒にいたのかもしれない。
「別れましょっか、先輩。」
ははっ、と乾いた笑いとともに、彼は言った。
「………うん。」
私は、それしか言えない。
今私が何を言っても彼を傷つけてしまいそうで、何も言えない。
言葉がうかばない。
「今後はちゃんと、心の底から好きになった人と付き合ってくださいね?」
皮肉でもなんでもない、本当にそれが彼の気持ちなんだな、と分かるような口調でゴールドは言った。
「そうじゃないと、俺が別れた意味、なくなっちまうから。」
きっとドアの向こうで彼は少し悲しげに笑っている。
「俺、先輩の笑った顔がすげえ好きなんッスよ。……だから、約束してください。」
私の返事も聞かず、……「じゃ。」と、ゴールドは言って、どんどん遠ざかっていく。
「うっ…、ふ…」
そこで初めて、涙がこぼれた。
ほんの少し前まで気持ちが晴れた、なんて思っていた自分が情けない。
自分の気持ちしか考えられてなかったことが、たまらなく情けない。
「ごめん、ね…、ごめん…な、さい…!」
嗚咽でうまくしゃべれなくて、途切れ途切れに、そう言う。
彼もまた、苦しんでいたのに。
「ごめ、んね…、ゴールド……!」
こんなときにも彼の助けになれないなんて、
私は本当に、彼に何もしてあげられなかった。
それでもやっぱり、未練はなくて。
この道を選んだことに、後悔はなくて。
ゴールドを好きになれなかった自分に、ほとほと嫌気がさした。
彼は、こんなにも私のことを想ってくれていたのに…ね。
悲しいのは、誰?
(私には、結局、)
(彼に想われる覚悟なんてなかったんだよ)
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お題→『ひよこ屋』様
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