「アンタ、彼氏できたんだって？」


急に家にやってきた親友のブルーは、開口一番にそう言った。



「え、あ…うん。何で知って…」

「あたしの情報網なめるんじゃないわよ。」

「………。」


ブルーならこれぐらい余裕…かあ。


「というか、相手は？誰？」

「ブルーの…知らない子。」

「…ふうん。アンタ、別に好きな人いないって言ってたじゃない。」

「そう、だけど…。」


ブルーは意味ありげな笑みをうかべながら、ズイッと私に詰め寄った。



「まあいいわ。どんな人なの？」

「えっと…年下で、」

「年下！？アンタは絶対年下は選ばないタイプだと思ってたわー。かっこいいの？」

「うん。普通…かな？」

「何よ、その微妙な反応…。どこを好きになったの？」

「………。」



ズキッと胸が痛んだ。



痛い。

苦しい。



「…どうかした？」

「……ううん。あのね、優しくて、ね。私のこと、すごく想っててくれて…。すごく、いい人、で…。」


そう、すごくいい人なんだ。

こんな私のこと好きって言ってくれて。

大切にしてくれて。



「彼と関わりのある人は皆、彼のこと、いい人だっていうの。」



そういえば、ゴールドと仲のいい女の子が、ある日突然私に話しかけてきたことがある。



“アナタ…ですよね？ゴールドと最近、よく一緒にいる…”

“私、クリスって言います。ゴールドとは幼なじみなんです。”

“アイツ、バカだけど話しもおもしろいし、何だかんだで優しいし、周りからの人望もあついし…”

“どうぞ…仲良くしてあげてくださいね。”



今思えば、あの子はゴールドのことが好きだったんじゃないかなあ…。

それで、ゴールドが私のこと好きなことを知って、自分が身をひくけじめを示すためにあんなこと言ったんじゃないのかなあ…。



もし、そうだとすれば…。

私なんかより、あの女の子のほうがよっぽどゴールドにふさわしいのに。


どうして今私は、彼に一番近い場所にいるの？



「……ねえ、それは周りからの評価でしょう？」

「え…」


「そこにアンタの気持ちはあるの？」



でもゴールドが選んだのが私なんだから…。

きっと、……いいんだよね、ここにいても。


それが一番、幸せなんだよね。


彼にとっても、私にとっても。










無意味すぎる慰め
(黙りこんだ私の気持ちを見透かしたように、)
(ブルーは１つ、ため息をついた)