君の誕生日
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7月21日。
ガララ、と教室のドアを開けた。
そしたら、バッと鋭く、1つの視線がアタシに向けられた。
「……おう。」
その視線の正体―…ゴールドは、すぐにニッと笑って片手をあげてアタシに挨拶をする。
……笑う前。
一瞬、とても悲しい顔になったことを、アタシは見逃さなかった。
(きっと、期待してた人じゃなくて、)
(がっかりしたんだろうなあ)
「こんな遅くまで何してたんだ?」
「…ゴールドこそ。何してたの?」
ドキドキと胸が鳴っている。
冷静を装って、彼の質問に、質問で返した。
幸い、不自然に思わなかったらしく、ゴールドは
「まあー…待ち合わせ?いや、待ち伏せ?」
イタズラっ子のような笑みを見せる。
(待ち伏せ、かあ。)
(いいなあ、クリスは。)
「そっか。生徒会の会議、長引いてるみたいだもんね。」
「は…!?//な…、え…生徒会って…!」
「さっき生徒会室の前通ったら声がしたからそうかなあと思ったんだけど、当たりみたいね!」
弾む口調で言う。
ホントは辛いのに、押し隠す。
バカみたい。
でもそのおかげで、目の前の彼は照れくさそうに苦笑いをうかべてるからまあいいか、なんて。
そう思ってしまうアタシは救いようがないぐらい、重症だ。
「生徒会室の前通ったってことは…お前は図書室でも行ってたのか?」
「うん、まあ…ね。」
「うげえ。お前、いつからそんな優等生になったんだよ。」
「図書室言っただけで優等生って、どんな基準なの。おかしすぎでしょ。」
「おかしくねぇって。んな勉強ばっかしてると、誰かさんみてぇに堅物な真面目ちゃんになっちまうぞ。」
ゴールドはニッと笑う。
彼女の話をするときはいつも、アナタはその笑顔を見せるよね。
アタシもはりつけたような笑みをうかべる。
彼はもちろん、気がつかないけど。
「なにそれ。ゴールドはもっと真面目になりなよ。」
「無理無理。性に合わねえ。」
そう言ってゴールドは笑うけど、アタシ知ってるの。
アタシなんかよりもっと優等生な彼女が何かとゴールドに注意するのを、アナタは密かに楽しみにしてるんでしょ?
(私のがゴールドの気持ちこんなにも分かってるのに)
(悔しいな)
ねえ、
アナタのためを思って、こうしてただのクラスメイトを演じてるんだから
ちょっとぐらいご褒美をもらったって、バチはあたらないよね
ゴールドに近づいてスッと彼の首もとに手を伸ばす。
「はっ…?」と言う声とともに、眉をひそめた彼と目が合う。
(ほんと、悔しい)
これが彼女だったなら、
彼は嬉しそうに笑っただろうに
手を少しひっこめ、私は彼のシャツを指差して言う。
「ボタン。開けすぎ。ゴールドは優等生とは無縁だね。」
校則では第1ボタンまでしかあけちゃだめなのに、彼のシャツは第2ボタンまで開いている。
「お、おー…。」
少し戸惑いがちに返事をしたゴールドに
「優等生さんに、注意されないようにね!」
と笑顔で言い、そそくさと逃げ出すように教室から出た。
そのまま足早に階段まで行き、壁にもたれかかる。
「(誕生日おめでとうって、言えなかったな。)」
せっかく、2人きりになるために
こんな時間まで待ってたのに、ね。
「あら?ゴールド。まだいたの?」
「ま、まあな。」
「またアナタは!服装みだれてるわよ!…まあ、今日ぐらいは見逃してあげるわ。」
「!クリス、お前知ってたのか?」
「シルバーに聞いたの。ねえ!お祝いにこれからシルバーも誘って、」
会話が聞こえる。
彼と彼女の。
聞きたくなくて、耳をふさいだ。
彼女になりたい。
“誰かさんみてぇに堅物な真面目ちゃんになっちまうぞ”
あのときアタシは作り笑いをうかべたけれど、
なれるもんなら、なりたいよ。
あの子になってしまいたい。
そうすれば、
アナタはアタシを好きになってくれたの?
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