スケートボード
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「…ゴール、ド。それ…、乗せて…。」
つっかえつっかえになりながら、私はゴールドが脇にかかえていた、それを指差した。
「スケートボード…?」
これなら泣き顔が見られないし、小さい頃からの思い出と重なって安心できる気がした。
「……乗りてえの?」
「…うん。乗りたい。」
「結構恥ずかしいぞ。こんな町中で乗るの。」
「…乗せてくれたら、泣き止む…と思う。」
「……たく、」
トン、と優しい音がしてスケートボードが地面におろされる。
ゴールドはそれに右足を乗せると私のほうを振り返り、スッと左手を差し出した。
「怖いって言ったって、途中でおりられないからな!」
少しイタズラな笑みを浮かべたゴールド。
「だいじょうぶ。」
私がそう言って手をとれば、ゴールドは少し呆気にとられたような顔をしてから笑って、ぐっと私を引き寄せた。
そして彼はちょっと強引に自分の腰に私の腕を回させる。
「行くぞ!」
彼の言葉とともに地面が勢いよく蹴られて車輪がシャーという音をたてながら、ぐんぐんと前に進んでいく。
「え、ちょ、はや!」
「まあここ、微妙な坂道になってるからな。」
「ええ!?;」
そんなの初めて聞いた!
予想外のスピードに少し怖くなってギュッとゴールドの背中にくっついた。
すれ違う人達が私達を見て振り返ってたけど、そんなの気にしてる暇はない。
「ぷ…、」
「わ、笑わないでよね!こっちはゴールドみたいに慣れてないんだから;」
「わりいわりい。」
ゴールドは悪びれた様子もなく笑いながら、腰に回されている私の手に自分の手を重ねた。
「慣れればいいもんだぜ?」
「……うん。」
手に感じる彼の体温、ぬくもり。
あたたかくて、優しかった。
心強かった。
ゴールドの言ったことは本当で慣れてくると、風がずいぶんと心地よく感じられた。
頬に伝っていた涙が乾いていく。
風が私達を優しくなでる。
邪魔もの扱いするわけでもなく、まるで喜んで歓迎してくれてるようだった。
「ゴールド、あのね、」
ねえ、一歩、
踏み出せるかな?
伝えられるかな?
……伝えたいよ
「あの、」
私の言葉は喉のところでつっかえてなかなかでてこない。
ああ、気持ちを伝えるのってこんなに勇気がいるんだ…。
「好きだ、」
変わりに風が、彼のつぶやくようにささやいた言葉を私の耳まで運んでくれた。
「好きだ、イミテ。」
ゴールドの視線は前に向けたまま、振り返ることもない。
でも、温かい背中から、彼の想いが伝わってくる。
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