スケートボード
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暗い表情の私を見て、グリーンさんはフッと笑った。
「でも好きなんだろう?アイツのことが。」
核心をつかれたようなセリフ。
私はこくりと頷いた。
「はい。それでも、好きなんですよね。」
たとえ自分を見てくれなくたって、私はアイツを思ってる。
けなげだなあ、私。
けなげで、バカだなあ。
「グリーンさん。ゴールドって意外にモテるんですよ。ちょっとだらしないけど明るい性格だから。」
「確かに、アイツは誰にでも話しかけられるからな。」
「…ゴールドのこと好きだって子に、昔言われたことがあるんです。『幼なじみっていいなあ』って。」
ゴールド、
私いつも不安なんだよ
アナタが他の子の話しをする度に、
もしかしたら付き合うのかな?好きなのかな?って
ただの軽い気持ちで声かけただけだって分かった時には
心底ほっとしてる私がいる
「…でも、私はそうは思わない…。」
いつかは大切な人ができて、
私から離れちゃうんじゃないかって
不安で不安で
仕方ないんだよ
もしそうなったとしても
ただの幼なじみの私には、
ゴールドを引き止める権利なんてないから
「“幼なじみ”が邪魔して、いつも一歩が踏み出せない…。こんな関係、嫌なんですっ…、」
ただ黙ってアナタの離れていく姿を見なきゃいけないなんて、怖くてたまらない
怖いんだよ、苦しいんだよ
「…本当にそうか?」
グリーンさんは窓に視線を向けたまま言った。
私が「えっ?」と聞き返すと、今度は視線をこっちに向けて口を開く。
「幼なじみだからこそ経験できたものもあるんじゃないのか?」
「………。」
私は少しうつむいて考えてみた。
―…そうだ、グリーンさんの言う通り。
確かに嫌なことばかりじゃなかった。
「そうかも、しれません。」
私がポツリと呟けば、彼はフッと笑う。
「…ねえグリーンさん、さっき私、小さい時は泣き虫だったって言いましたよね?」
「ああ。」
「でも、そんな時はいつもゴールドが慰めてくれたんです。少し上から目線だったけど。」
懐かしいな。
ゴールドは私が泣く度に「んなことで泣いてんな!悔しいならなおさら泣くなよ!」って言ってた。
「それで、私が泣き止むと必ず乗せてくれたんです。…スケートボードに。」
『乗ってみるか?楽しいぞ!』満面の笑みでそう言われて、私は大きく頷いたんだ。
今でも頭の中に思い浮かぶ。
「そのスケートボード、大切なものらしくて私以外は誰も乗せたことないらしいんです。何だか私、それ聞いて嬉しくなっちゃって。」
まるで私と彼だけの特別なもののようで。
「幼なじみじゃなかったら、こんなことしてくれなかったと思うし、今の関係もなかった…。」
「………。」
「…この関係は嫌なことも嬉しいこともあるから、どう思えばいいか分かんないんです。」
これが私の本音。
幼なじみ。
この関係が好きだった、でも嫌いだった。
誇らしかった、でもねたましかった。
はっきりとした答えがみつからなくて、悔しい。
もっと簡単なものだったらよかったのに。
目頭がジーンと熱くなった。
やばい、泣きそう。
でもグリーンさんは窓の方見てるから、きっとバレない。
「おそらく…、」
もう何杯目かは分からない、食後のコーヒーをすすりながらグリーンさんがつぶやいた。
「ゴールドも、同じことを思ってるだろうな。」
「え…?」
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