ロマンチストはいない
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「…あはは!意外!すごいびっくり!」
「突然なんだ。」
「だってグリーンには『そんな感情をもつの、青春時代特有。今だけだ。どうせすぐ冷める』とか言われると思ってたからさー。」
「今のまさか俺の声真似したのか?」
「似てる?」
「まったく。」
「えー、残念。もはやグリーンの口癖になってて何回も聞いたから、ばっちり完コピしたつもりだったんだけどなあ。」
全く残念がっていない様子で、むしろ上機嫌に彼女は続ける。
「でも本当に、今日はなんで言わないの?」
「さあ…な。」
そのセリフをしつこいぐらいにイミテに言い聞かせていたのは、半分は八つ当たりで。
自分でいうのもなんだが、俺は容姿に恵まれている。学校にはファンクラブまでできるほどで、成績も学年で1、2に入る。
人と関わるのはめんどうだが、人が嫌いなわけじゃない。
むしろ自分が信頼している奴らには気にかける方だ。
そんなまるで青春漫画にでてくるヒロインが恋する相手にぴったりな条件がそろっているのに。
俺に、一番近いところにいるのはお前なのに。
それなのに、
全く俺に見向きもしない
漫画のような、ドラマのような、青春を描いた恋愛ストーリーは始まらないと気づいたから、
(そんな思いをこめた、皮肉。)
「グリーンはお返しあげないの?ファンクラブの子達に。」
「返すもなにも、誰からももらってないからな。」
「嘘!あの人数逃げ切ったの!?すご……くない!かわいそう!」
「お前なあ……」
かわいそう、か 。
青春時代の感情は今だけだ、なんて言ったもう半分の理由は……、
学年があがるにつれて、同じ学校の女子が"グリーン様ファンクラブ"だのなんだのを作り始めた頃。
『なーんか、グリーンが遠い存在に感じちゃうなあ。』
そうイミテがつぶやいたからだった…のに。
所詮テレビにでてるアイドルや、若くて顔のいい教師や、近所にすむ年上の男に憧れるのと同じで、アイツらが騒ぐのは今だけだ。
(そう俺が言ったら、)
(彼女は安心したかのように「そっか。」とやわらかく笑ったから)
「?なに?」
「……いや、いい。で、誰に渡すんだ?」
「え?そこ聞くの?デリカシーなーい。」
「お前に言われるとひどく心外だ。」
「ふん。今の私は心が広いからね。そんな小さいことで怒らないの。というか、グリーン友達少ないから言ったところで分からない……あ、違う。友達だって言ってたんだ。」
「…。まあ別にお前が誰に渡すかなんて知りたくもないからな。教えなくていい。」
「え、自分から聞いたくせになにそれ。まあいいならいいけどー。」
「俺のクラスのやつなら協力してやろうかと思ったんだがな。」
「え?え!?どうしちゃったのグリーンさん!?グリーンが私のこと気にかけるとか、やばいよ!年に2度あるかないかだよ!でも残念!自分のクラスの人だから、特にグリーンに協力してもらうことはないです。」
ああやっぱり。
イミテのクラスで、俺とそこそこ仲がいいっていう奴は1人しかいない。
「……レッドか。」
「!!??なんで!?なんで今ので分かったの!?」
「お前のクラスに俺の友人は1人しかいないからな。」
「ちょ……!それはそれで交遊関係せますぎてかわいそうになってくる!」
「絶対絶対言わないでよ!」と顔を真っ赤にしながら必死に訴えるイミテ。
「…………レッドは、やめとけ。」
「は?」
「アイツとお前は似合わない。」
「な……!よけいなお世話です!」
「レッドがお前のこと、なんて言ってるか知ってるか?」
「え!?な、なにそれ!レッドくん、私のこと話してるの!?恥ずかし……!ていうか聞きたくない!怖い!絶対この流れ悪口じゃん!」
「『大人しくてあんまり喋ってくれないけど、たまに照れ臭そうに笑うのが、可愛い』。」
「……悪口じゃないじゃん。」
「っていうか、好印象じゃん。」とイミテは続ける。
そう。レッドもレッドで、イミテのことを気になっているらしかった。(はっきりとした恋愛感情かは知らないが)
俺とイミテが幼なじみだと知るよしもないアイツの話を、俺は特に大した反応を返すわけでもなく聞き流していた。
……まさかイミテのほうも、レッドを気にかけているなんて、思いもしなかったから。
「どうせ緊張して猫かぶったままなんだろ?レッドの中に印象づいてるお前と、素のお前は全く性格が違う。」
「よ、余計なお世話ですー!それにこれから仲良くなってく予定なんだからいいの!」
「本性を見せるのか?」
「本性ってなに!やっぱりグリーンになんて話すんじゃなかった。もう怒った。グリーンとはしばらく口きかないから。」
さっきまで上機嫌だったのに忙しいやつ。
会話はそこで途切れ、またしばらくカチャカチャと調理器具を動かす音だけが響く。
「……ホワイトデーに作ってるってことは、バレンタインになにかもらったのか?」
「……。」
「それでアイツがお前に好意もってることを知って、気になり出した、とか?」
「……。」
「…。もしそんな理由なら、やっぱり"今だけ…、っ!」
頭に何かがコツンとぶつかった。
痛くはなかったが突然の出来事にひるむ。
なんだ、これ…、
ニンフィア柄の包み紙に包まれた、飴玉サイズのチョコレート。
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