アナタにとっての、あたし
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「さっさと着替えてこい。そんな格好じゃろくに動けないだろ。」
グリーンの言葉が、胸に刺さった。
「そんな格好って…ひどいなあ、お前。あたしだってたまにはおしゃれしたくなる時だってあるんだよ。」
無理矢理笑顔を作ってそう言った。
なあ、本当は全部グリーンのためなんだぞ。
「なあ、何か一言ないのかよ?」
「……。『かわいい』とでも言ってほしいのか?」
「べ、別にそんなんじゃ…、」
慌てて顔を上げたら、冷たい目つきの彼と目があった。
「そういうのは他の奴の前でやれ。何しにここに来てるか、よく考えろ。」
「………っ!」
なんだよ…。
そんなこと分かってるよ。
でもさ少しぐらい、あたしのこと見て、誉めてくれたっていいだろ?
「はいはい、分かったよ。着替えりゃいいんだ、ろ……、…っ、」
こらえてたものが、あふれでた。
コンクリート造りのトキワジム。
冷たい床に、ポタポタと涙がこぼれる。
自分でもびっくりした。
情けない。
こんなことで泣くなんて。
あたし、こんなに弱かったっけ?
おかしいな、涙もろくはないはずなのに。
「…う…っ……」
必死に涙を止めようとするけど止まらない。
せめて気づかれないようにと、声を出さないように口元に手を当てるけど、あんまり意味がない。
隙間から声がもれる。
「おい……?」
グリーンがあたしのほうを振り返った。
ああ、本当に情けない。
泣き顔、見られたくなかったのに、なあ……。
「何で……泣いてるんだ?」
あたしだって分かんないよ。
……違う、分かってるけど認めたくない。
……トキワジムには修行に来てる。
強くなるために来てる。
だから、グリーンの言ったことは間違ってない。
当たり前のこと言われたんだ。
悪いのは、あたし。
――……でも、何でこんなに苦しいんだよ、
何で胸がはりさけそうなくらい、ズキズキ言ってるんだよ……、
違う、違う、
認めたくない
認めない、
きっと、違う―………、
彼に言われたのがショックだったなんて
それほど彼の存在が、あたしの中で大きくなってたなんて
(この気持ちが、恋、だなんて)
「おい、」
「っ、触んなっ…」
伸びてきた彼の手をパシンと叩いた。
バカだ、あたし。
こんなんじゃさっきの言葉気にしてんの、バレバレじゃんか。
「はあ……」
と彼がため息をついた。
瞬間、あたしの体はびくりと反応する。
なんだか、怖い。
グリーンが今のあたしを見て、どう感じてるのか、怖い。
反応が、怖い。
「……そんなに、ショックだったか?」
「……、」
違う、と言おうとしたけど、涙のせいで声にならない。
「別に似合ってないとは言ってない。修行の時はもっと楽な格好をしてこいと言ったんだ。」
「分かってる、よ…!」
大丈夫、軽蔑されたわけじゃない。
分かってる、でも、
苦しい、苦しい。
胸が痛い。
彼は泣き止まないあたしを見て、またため息を1つもらす。
「そんなに気どることないだろ。俺は、いつものほうがお前らしくて好きだ。」
「……え?」
思わず顔を上げれば、グリーンはほのかに笑った気がした。
「!?」
次の瞬間、腕がつかまれ、前のめりになる。
彼はあたしの耳元でささやいた。
「俺は、いつものイミテのほうが好きだ。」
「は……?」
グリーンはつかんでいたあたしの腕を離して、「修行するぞ。」とスタスタ歩き出す。
「な、なあ!」
あたしは思わず呼び止めた。
聞くのは怖い、けど…聞きたい。
「さっきの、どういう意味だよ…?」
いつものあたしのがいいって意味の“好き”なのか。
それとも…。
ああ、今なら聞ける気がする。
「なあ、グリーンにとって、あたしってどんな存在?」
張りつめる空気に、痛い静寂。
でも、ただ彼の言葉を待つことしかできない。
祈るように、彼を見る。
どうか、どうか―…。
「…お前と同じ、だ。」
「え?」
「お前が俺に対して思ってるのと、同じだ。」
そう言って彼はフッと笑った。
それって期待してもいいの?
自惚れてもいいの?
だって、きっと、
あたしもグリーンのこと―……、
遠まわしな告白
(直後、あたしの顔は赤く染まって、)
(彼はまた、フッと笑った)