アナタにとっての、あたし
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グリーンのファンは日々増加中らしい。
町を歩けば「ねえ、あれって…!」とすぐに気づかれる。
そして「握手してください」とか「サインください」とか女の子達が集まってきて、行く手をはばまれる。
(どこのアイドルだ!)
ほら、今も囲まれている彼を、あたしは遠目でぼー、っと見ていた。
ここはタマムシデパートの屋上。
数時間前の修行で、あたしが「ポケモンに道具なんて持たせたことない」って言ったら、ため息をつかれた。
そして有無も言わさずリザードンの背中に乗せられて、たどり着いたのがここだった。
デパート内を周りながらグリーンは、「これは素早さがあがる」とか「こっちは体力を回復するんだ」とか言ってたけど、そんな言葉右から左にぬけていった。
だってあたし、覚えるの苦手だし?
1時間ぐらいデパートの中を歩き回ってたけど、覚えられたのはとりあえず気合いハチマキともくたんとかわらずのいしの効果ぐらい。
それだけで頭が痛くなってきたから「ちょっと休憩したい」って言って今屋上でサイコソーダを飲みながら一休み。
「キャー!グリーン様ー!」
「かっこいいー!」
女の子達の黄色い声はエスカレートしていく。
グリーンの何がそんなにいいんだか…。
まあかっこよくて、知的で、ジムリーダーだから将来安泰で、優しいから……うん、モテるはずだ。
「ねえ、アナタ?」
「え?」
声をかけられ顔をあげると女の人がいた。
「聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「はい?」
「アナタ、いつもグリーン様と一緒にいるみたいだけど、お友達か何か?」
「え……」
あたしとグリーンが友達?
即答できるはずなかった。
だって友達ってグリーンとブルーのような関係のことだろ?
あたしはそこまでグリーンのこと知ってる訳じゃないし、困っている時に力になってやることもできない。
そんな関係なのに、友達なんて言えるはずがない。
「違う…。」
「じゃあ何で一緒にいるの?まさか、恋人とかかしら?」
「違う!あたしはただグリーンに修行を教わってるだけで……、」
そう。
ただそれだけ。
この数ヶ月、彼とはいつも一緒にいたけど、修行を見てもらってるだけ。
あたしはジムリーダーにバトルを教えてもらってる、ただのトレーナー。
ただ、それだけの関係。
「それ以上の、何でもない。」
「そう、ならいいんだけど。ありがとう。」
女の人はしれっと言うと、グリーンの元へと向かう。
――………何で、あたし、こんなに苦しくなってんだろ
グリーンのそばにいるのは強くなるため。
バトルを上達させるため。
でもさ、何かこの間から、グリーンとブルーの関係がたまらなく羨ましいんだ
もしグリーンに、自分の町のトレーナーの1人としてしか思われてなかったら…、って考えると悔しいんだ
ファンクラブとか言いながらグリーンに近づく女の子達か、なんだか妬ましいんだ
「(おかしいよ、あたし……)」
ずっとサイコソーダを持っていたからか、手はすっかり冷えてしまった。
グッとそれを飲み干して、ゴミ箱に空き缶を投げ捨てる。
あたしが立ち上がったことに気づいた彼が、女の子達の間をすり抜けて近づいてきた。
「そろそろ行くか。」
「ああ。なあ……、」
…あたしとグリーンってどんな関係?
そんなこと聞けるはずもなく、言葉を飲み込んだ。
「どうした?」
「いや、あのさ…、やっぱあたしには道具、使いこなせないみたいだなー、なんて。」
慌てて別のことを口にした。
でも本音だから別にいいや。
道具とか、そんなんまどろっこしいし。
「やる前から諦めるな。とりあえずライチュウにこれを持たせて見ろ。」
「なに、これ?」
「たべのこしだ。体力が徐々に回復する。」
「……。」
あたしのこと、考えてくれる。
嬉しいような、くすぐったいような。
………ああ、なんか、この変な気持ちもまどろっこしいや。
冷たい指先
(何て言ったらいいか分からない)
(とりあえず、無言でそれを受け取った)