彼女はシンデレラ
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リザードンの背中にブルーを乗せて、マサラタウンまで連れていくように指示した。
こんな状態の彼女を独りにするわけなもいかず、かといって自分と一緒に連れて行くことは尚更できなかった。
だから、マサラタウンのオーキド博士とナナミのところへ送り届けるようにリザードンに指示をした。
リザードンは飛び立つ前、心配そうにグリーンの顔を見た。
「大丈夫だ。お前はとにかく、ブルーを無事にマサラタウンに届けてくれ。」
頬を撫でれば、リザードンはその温もりをより感じようとするかのように目を細め、そして空へと舞い上がる。
それを見届けて、グリーンは駆け出した。
ブルーが言っていた、惨状へ。
「……!」
何も、言葉がでなかった。
木の根本に倒れているイエロー。
そしてその手前に真っ赤な血で染まっているレッドが横たわっていて、…まるで、抱きしめられるかのようにしてレッドの真横に倒れている1人の少女。
「(何が…、何があったんだ…!?)」
信じがたい状況に、気持ち悪いぐらいの嫌悪感と、全身から吹き出すようにどっと冷や汗が溢れ出す。
とにかく…もう手遅れなことが張りつめた空気で、痛いぐらいによく分かった。
「!」
グリーンはあることに気づき、レッドの横にいる少女に近づく。
なるべくレッドのことを見ないようにしながら、真横にしゃがみ…、顔にかかっている少女の##NAME2##色の髪をどけた。
「……っ!」
安らかなその顔に見覚えが、あった。
それは横にいる今は血まみれの親友が、よく彼女のことをつぶやいていたからだ。
『ほら、あの子!あの##NAME2##の髪の子!』
トキワジムの控え室。
窓の外を見てレッドが言っていた。
『あの子、いつもこの時間にジムの前通るんだって。グリーンのファンだろ、絶対。』
『だからどうした?』
グリーンが乾いた口調でそう言えば、レッドは『だーかーら!』と、まるで幼い子供がだだをこねるような口調で続ける。
『声ぐらいかけてやれよ。毎日毎日通ってんのにかわいそうだろ。』
『俺の知ったことか。』
『声かけるぐらい何でもないのに…。』
頬杖をついてレッドはまだ窓の外を見つめていた。
少女の姿が見えなくなるまで。
愛おしそうに、切なそうに…ずっと見ていた。
『はあーあ!お前は相変わらずクールだよな。』
『…。』
そんなレッドの言葉に無言を返す。
その反応にレッドはむすっとした表情になった。
『……そんなに気になるんだったら、お前が声かけてやればいいだろ。』
(王子様はガラスの靴には気づかなかった)
(気づかずに踏んで、粉々にしてしまった)
『俺が…?』
『気になるんだろ、そいつのこと。』
『気になるって…まっ、まあ…毎日毎日、ここ通るし、気になるけ、ど…。』
分かりやすい反応に、グリーンは心の中で笑う。
『だったら声かけて、友達にでもなってこい。』
『な…、あのなあ!お前は簡単に言うけど、そんな、いきなり声かけたら何だコイツとか思われちまうだろ!』
『いけるだろ、お前なら。俺も最初はお前のこと、何だコイツと思ったぞ。』
レッドの今までの出会いと出来事を思い返すかのように、フッとグリーンは笑った。
『…っっ!!』
レッドは何も言い返せなくなって黙り込むと、しばしの沈黙のあと、ははは!と声をあげて笑っていた。
『よっしゃ!じゃああの子と友達になること目標にする。仲良くなるためには…ま、やっぱ最初はグリーンのこと話題にすっかなー。』
『…おい。この道を通るからって、俺のファンとは限らないだろ。』
一言。
そう、何気ないその一言に、なぜか、空気が張りつめた。
『……レッド?』
不信に思いグリーンが聞く。
『…さあ。どうだろな。』
レッドはそのとき確か…
笑っていた、…気がする。
レッドとそんな会話をしたのは、まだ記憶に新しい。
でも、少女の首にくっきりと残る手の痕は、レッドの手の大きさとぴったり合うような気がした。
いや…たぶん、必ず合うだろう。
「(何で、こんな…)」
どうしてこうなったか分からず。
グリーンはグッと、拳を握った。
「(なんでだ、レッド…!!くそ!!)」
レッドはいつも、この少女を愛おしそうに、眺めていたはずなのに。
王子様は気づかない
(魔法使いに、恐ろしい呪文を教えてしまったなんて)
王子様は気づかない
(自分もこの物語のキャストだったなんて)
王子様は気づかない
(シンデレラの存在に)
ああ、だから、きっと…
(彼女はシンデレラにはなれなかった)
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