彼女はシンデレラ
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自分を王子様だと思いこんだ、
魔法使い。
魔法がとけることを知っている、
シンデレラ。
巻きこまれて殺されてしまった、
王子様。
(舞台は最悪の配役で進んでいる)
「…。」
黙り込む。
王子様はいない。
殺したのは、自分の目の前にいる魔法使い。
「……。」
不思議と、怒りはこみあげてこなかった。
(だって彼は、私と同じ。)
「私のこと、想っててくれたの?」
「…ああ。」
イミテが聞けば、レッドは照れくさそうにでも、穏やかに笑う。
「いつから?」
「グリーンのこと、見てるとこを見つけた、その日から。」
「私、は。グリーンさんのことが、ずっと、好きで、」
「…ああ、知ってる。」
レッドは続けた。「だから、殺した。」と。
そしてイミテに謝った。「ごめんな。」と。
何せ、魔法使いは分かってて魔法をかけたのだから。
いつかはとけてしまう魔法。
そのときにシンデレラが何を思うかなんて、想像すれば分かったはずなのに。
彼女を“絶望”させてしまうことを分かっていたはずなのに。
魔法を、使った。
(シンデレラを、騙す魔法を。)
(人々に、偽りを見せる魔法を。)
「…いいよ。私を、好きだからなんでしょ?」
「ああ。」
自分と彼は似ている。
だから、責められない。
たった1人を愛してる。
狂おしいぐらいに想ってる。
その気持ちは、何となく分かった気がしたから…。
「…レッドさん。だったら、私のことも、殺して?」
イミテは言った。
レッドは「え…」と聞き返す。
「私を好きって想ってくれてるなら、私を殺してください。」
イミテはレッドの手を掴んで言う。
その手をそのまま、自分の首もとへと運んだ。
成り立たないと思ったから。
王子様がいない物語なんて。
王子様がいないなら、シンデレラの存在価値はない。
彼がいないこの世界に、
私が生きている意味はない
気づかなかった
(彼に対する気持ちが、こんなにも大きくなっていたなんて)
知らなかった
(人を想う気持ちが、こんなに暖かくて、そして、怖いものだなんて)
もう、いいと思った
(舞台は、幕を閉じる)
(いや、むしろ、)
(幕はあがっていなかった)
(配役が、そろわなくて)
「お願い、します。」
すがるように、つぶやく。
レッドはごくりと喉を鳴らして、そして意を決したように、スルリと、イミテの首に手をかける。
「……愛してた…」
そんなレッドの呟きが、イミテの耳にまるで悲しい音色のように届いた。
私に対する彼(レッド)の愛を
狂った愛と呼ぶのなら、
私が彼(グリーン)に向ける愛も
狂っていたんだと思う
だって、私は彼をとてもとても愛していた
彼がいない世界なら、
生きていたくないと思うほどに
レッドの瞳にイミテの顔が映る。
イミテの瞳にレッドの顔が映る。
憂いをおびたその表情は、やはり、似ていた。
同じ、だ。
彼もまた、
私がこの世界から消えてしまえば、
私のあとをおうのだろう
(私達は、同じ)
(歪んだ愛の上にいる)
(そのベクトルの向きは)
(決して交わることはないけれど)
グリーンはその日、朝早くからジムで書類整理をしていた。
ポケモン協会に提出する資料をまとめ終え、ふうと、息を吐く。
ふと窓から見えた空は、すがすがしいぐらいの晴天だった。
ああ、そろそろ、ジムの開館準備をしなければー…
そんなとき、突然
バアン!と勢いよく扉が開いた。
せっかちな挑戦者だろうか。
コーヒーでも飲んで一息つこうと思っていたのに…全く。
グリーンはため息をついて、闘技場へと続く扉を開けた。
「グリー、ン」
「な…!?」
そしてそこにいる、膝をついて肩で息をしている、青い少女を見つけてすぐさま駆け寄った。
少女の身体…特に左腕にはには、べったりと、赤い血がついていて。
「なんだ!?何があった!?」
ただならぬ事態に、グリーンはとにかく血まみれの少女…ブルーの腕にそっと触れた。
彼女の血ではないらしい。
とりあえず、怪我をしているわけではないことに一安心し、ブルーにもう一度聞く。
「…何があったんだ?誰の血だ、ブルー。」
自分は冷静でいなければいけないと思い、落ち着いた口調で聞く。
ブルーの身体は震えていた。
「 」
ブルーは口を動かしているが、それは声になっていない。聞こえない。
「ブルー。」
ガタガタと震える彼女の背中に手をやる。
ブルーは一瞬、ビクリと反応したが、しばらくするとその温もりに少し落ち着きを取り戻したようで…
「この血、は、レッドの…」
「レッド!?どういうことだ!?」
「トキワの森の上、を、プリンで飛んでたら、偶然、目に入っ、て…、」
ブルーの目に、涙がにじむ。
「グリーン…。…レッドが、イエローが……!!」
涙を流して言った。
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