彼女はシンデレラ
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「なんで、殺したの?」
今度はイミテが責めるように言う。
「なんで…殺しちゃったの?」
「…。」
今度はレッドが、何も言えない。
(彼女はシンデレラじゃなかった)
(自分は彼女を救う王子様にはなれなかった)
「ねえ、なんで…殺す必要があったの?」
「…。」
否定の言葉に、レッドが下を向いた、そのとき…。
「なんで殺したの…“もったいない”。」
「へ…」
その言葉に、レッドは顔をあげて、思わず言葉をもらす。
「だって、死ねばそこで終わりでしょう?」
ぷつん、イミテの中で、とっくに何かが変わっていた。
心の奥底にしまっていた感情は、ふつふつと現れだしていた。
「もっと苦しめたかったの。彼をとって、私だけのものにして、あの子の顔が悔しさでゆがむ顔がみたかった」
ボロボロの雑巾で、毎日毎日、家の中を掃除する
その上で成り立っている生活があることを知らず
のうのうと生きている彼女たちが…憎かった
シンデレラはお姉さんを見て、いつもいつも思っていた
イツカ、ミカエシテヤル
ああ…よかった。
(やっぱり彼女は、シンデレラ)
レッドはホッと息をついて、イミテの前に片膝をついて屈む。
彼女と目線を合わせる。
「分かってる。イミテ、怖かったんだろう?」
優しく微笑んで言った。
怖かった
シンデレラは臆病だった
お姉さん達にいじめられるつらい毎日
ても少し勇気をだせば
助けを求めることも
逃げ出すこともできた
少しの勇気があれば
運命は変えられた
でもシンデレラにはそれがなかった
怖かった
勇気がなかった
「もう大丈夫だ。俺は君のこと、全部分かってるから。」
レッドが頭を撫でた。
優しく微笑んだ。
「レッド、さん…」
知っていた名前を、イミテはつぶやいた。
レッドはそれに目を見開いて、次いで、嬉しそうに笑った。
「なんで、笑うの?」
「自分の名前覚えてもらえてたなんて、嬉しいじゃんか。」
嬉しそうに笑う。
純粋な人なんだなあ…と、イミテは思った。
きっと彼は私に対して、真っ直ぐな想いを抱いてくれていて、私を助けようとして、こんなことしたんだ。
ちょっと歪んでしまっただけで、その想いは確かなものなのかもしれない。
イミテもつられて笑う。
だけど、
「(…あれ?)」
疑問がうかぶ。
自分がシンデレラだとしたら、
この人は王子様なのだろうか?
(シンデレラを救って幸せを与えてくれた、王子様?)
「もう大丈夫だから。」
レッドはイミテを強く抱きしめた。
抱きしめられながら思う。
違う、気がした。
だって自分はずっと、グリーンのことを想っていたんだから。
違う。おかしい。
レッドは、王子様じゃないはずだ。
自分にとっての王子様は、ずっと前から想い続けてきた、グリーンなんだから。
じゃあ、彼(レッド)はなに?
「イミテを苦しめるものは何もないから。」
「…。」
何も、ない?
そんなはずはない。
イエローの死を知れば、親しくしていたグリーンは悲しむ。
イミテもそんな彼を見て、きっと苦しくなる。
「…グリーン、さんは?」
イミテの口から出たその名前に、レッドがピクリと反応したのが分かった。
嫌な予感がどんどんつのる。
「ねえ、グリーンさんは…?」
もう一度、聞く。
「何も、心配することはないから。」
レッドは答える。
「…何が!?どういう意味!?…グリーンさんは!?」
イミテはどん、と彼の胸をおして、身体を離した。
レッドが力を入れなかったこともあって、イミテの力でも簡単に離れた。
「グリーンも、“いない”から。大丈夫。」
「…!!」
言葉の意味は、すぐに分かった。
「なんで、」
「イミテの笑顔を奪う元凶はアイツだろ?だから、さ、」
レッドは、優しく笑った。
「もう平気だから。」
イミテは、思う。
(彼は魔法使いだったんだ)
シンデレラの中にある、恐ろしい思いを呼び起こした、魔法使い。
シンデレラに錯覚させた、魔法使い。
ガラスの靴も、カボチャの馬車も、すべてが幻想。
シンデレラの幻想。
それを魔法使いがいたずらをして、具現化した。
でも、魔法はいつかとける。
12時の聖なる鐘で。
魔法はとけてしまう。
すべてがきらびやかな世界から、また元の無情な世界にもどる
(シンデレラはそれを、知っている)
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