彼女はシンデレラ
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名前はグリーンさん。
性格はクールで、努力家。プライドが高い、なーんて書いてあった雑誌もあったなあ。
手持ちはリザードン、ゴルダック、ピジョット、ストライク、キュウコン、ポリゴン。そのうちストライクは幼なじみのポケモン。
1位の…レッドという人とは、最初は犬猿の仲だったらしい。
今でこそ良き仲間であって良きライバルらしいけど。
少し前のシルフカンパニーでのロケット団を捕まえた出来事にも彼は関与さていて。
バトルも出来て顔もすごく良いから、ファンはいっぱい。
そして、ポケモンの権威オーキド博士の孫。
ポケモンリーグが終わってからは雑誌とかテレビとかで、そんなような彼の情報がたくさん出回っていた。
レッドという人よりかは、その情報量は少なかったけれど。
でも些細なことでも知れるのが嬉しくて。
彼が関わっている話しを聞く度に頬が緩んでしまう自分がいた。
……憧れは、確実に恋心へと変わっていったんだ。
『イミテ!トキワの森のジムリーダーが、グリーンさんに決まったらしいよ!』
だからそう友達に教えられたとは、すごくすごく嬉しかった。
だって、私はトキワシティ出身だから。
彼との間に、共通点ができた瞬間だった。
運命なんじゃないかって、バカみたいにはしゃいで。
すごくすごく嬉しかった。
グリーンさんがジムリーダーになっていよいよジムがオープンする日。
開館時間の数時間前。
私はとにかく彼に会いたくて、ジムの前でウロウロしていた。
ジムが開館する時間になってしまったら、きっとファンの子達がいっぱい押し寄せて姿を見ることも難しくなってしまうから。
でも挑戦者でもないのにどうしよう…なんて思っていたら、ジムの扉がギイッと開いて…
想い続けていた彼が、そこにいた。
『…』
きょとんとしているグリーンさんの様子からすると、特に私に気づいて扉を開けたわけではなくて、ただ単に外にでようとしただけだったんだろう。
『…挑戦者か?悪いが、ジムの開館は10時からだ。』
『あ、いえ、その…』
数年ぶりに聞く彼の生の声にドキドキしながら、何と説明すればいいのか言葉を探す。
そして、
『グ、グリーンさん…!ジムリーダー、就任…お、おめでとうございます!』
私がつっかえながらもそう言うと、いつも冷静な彼らしくないぐらいに目をまん丸にさせて「…ああ」と言って、少し困ったように笑ったその口元は弧を描いていた。
優しい優しい笑みに、私はさらに、彼におちていくのを実感した。
私の顔も名前も知らなかったハズなのに、
それなのに、私に笑いかけてくれたのが、
すごくすごく、嬉しくて。
大好き。
改めて思った。
その声も、表情も、笑みも。
全部全部大好き。
あの日から、ずっと大好き。
でもしょせん、そこまでだった。
私はトキワシティの市民で。
彼はトキワシティのジムリーダー。
そう、そこまで。
バトルも強くない私は挑戦することもできず、かといって見学に言ったとしてもファンの子にまぎれてしまうだけ。
しょせん、接点はそこまで。
それ以上は近づけない。
意気消沈しながら毎日毎日トキワジムの前を通った。
あわよくばあのポケモンリーグのときみたいに、ばったり会えないかと。
声をかけてくれないかと。
もう一度、話ができないかと。
そう思いながら、願いながら、
毎日毎日、ジムの前を通る。
(おとぎ話のシンデレラみたいに、)
(偶然、王子様が私のこと、みつけてくれないかな、なんて。)
(そう、願いながら。)
でももちろんそんなことありえるはずもなく…そして、見てしまった。
私と同じトキワシティ出身の女の子が、普通に彼と話している姿を。
『イエロー。』と、その女の子のものであるだろう名前を呼んでもらっていることを。
なんで、なんで、なんで…?
なんであの子は、あんなに簡単に彼の隣にいるの?
私が望んでいたもの、なんであんなに簡単に手に入れてるの?
ギュッと胸が苦しくなった。
周りの友達に聞いて彼女はトキワの力をもった特別な子で、カントーの危機を救ったすごい子なんだと言うことが分かった。
感じたのは、劣等感。
私だってトキワシティ出身なのに、なんであの子にだけ力があるの?
どうして?なんで?
汚い思いがふくらむ。
彼女に対する妬みはふくらむ。
彼女が憎くてたまらなかった。
特別な力を持っていて、トキワシティ…ううんカントーの皆からほめたたえられていて、何よりなんの疑問もなく彼の隣にいられる。理由なく話ができる、なんて。
………ずるいよ。
ずるい。ずるい。ずるい。
憎んで、うらんで。妬んで。
…“消えちゃえ”、なんて、そう思った。
トキワシティから、彼の隣から、…この世界から。
「(ああ…)」
でも、“それが叶った”この現状を見てひどく胸が痛むのは、憎い、と思いながらも、
私の心の中にはまだ人としての良心が残っていたからかもしれない。
(気づかなかった)
(物語のプロローグは)
(とっくに始まっていたなんて)
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