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「ふう……。」
自販機でイチゴミルクを買って、一口。
はあ……よかった逃げられて。
あのままあそこにいたら絶対バレてたよ…。
まだ顔が熱い…。
やっぱり私に恋バナは向いてないと思う。
次は何聞かれても答えないようにしよう。
そうしないと絶対ボロがでる。
「(よし…!)」
気合いをいれなおして、教室に戻ることにした。
イチゴミルクの紙パックを片手に曲がり角を曲がる、と………
「「…」」
ちょうど目の前に人がいて思わず足を止めた。
いや、ぶつかった訳じゃないんだけど、なんかその人が足を止めたから、ついつられて…。
そしてほんの数秒、空気が止まったかのようにあたりに静寂がはしる。
え、何?この空気。
さすがに耐えきれなって思わず顔をあげると、
「あ、れ…?」
そこには見知った人がいた。
「レッド、さん…?」
「お。ちょうどよかった。」
「?」
「はい」と紙袋を手渡される。
「え…?」
突然の出来事に思考がついていかない。
あたふたとしている私に、レッドさんは優しく笑いかける。
「バレンタインのお返し。」
「え、うそ…!」
実は、バレンタインの時、義理チョコと称してレッドさんにもチョコをあげてたんだ。
「い、いいんですか?」
「ああ、もちろん。」
「そのために持ってきたんだから」とレッドさんは笑う。
うわあ、まさかお返しくれるなんて嬉しいな。
「それ、イエローのぶんも入ってるから渡しといてな。」
「………。あ、はい。」
………そっか。
私だけ、なはずないよね。
きっとレッドさんはすれ違ったのが私じゃなくてイエローでも、こうやって同じこと頼んでたんだろうな。
……少しでも浮かれた自分が恥ずかしい。
そうだよ、
私だけ特別なはず、ない
「じゃあ、よろしくな。」
レッドさんはポンと私の頭を撫でた。
やっぱり優しい人、だなあ…。
「…はい。ありがとうございます。」
―……もしかしたらレッドさんは、私なんかが好きになっちゃいけないのかもしれない。
あんなに素敵な人、私とは不釣り合いすぎる。
そんなことを考えながらだんだんと小さくなるレッドさんの後ろ姿を見送る。
なんだか今日はやけに遠く感じるな。
しょせん憧れ。
思い知らされる前に、この気持ち、なかったことにしようか。
ふと、急に彼が振り返った。
「チョコ、ありがとな。おいしかったよ。」
「……!」
レッドさんは片手をあげて、とびきりの笑顔でそう言った。
私にかけられた、たった一言。
でもそれだけで、胸がじんわりあったかくなる。
幸せな気持ちになる。
「ありがとうございます…!」
私も精一杯の笑顔で、レッドさんにお礼を言った。
やっぱり好き、だなあ。
諦めたくない。
もっと、近づきたい。
これから、頑張ってみよう…!
ギュッと紙袋を抱きしめ、あたたかい気持ちを胸の中に感じたまま、私は教室に向かった。