4話. 根源にあるものは愛情
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
君がくれた以上のものを
私は返せているだろうか
早朝。
ジムリーダー試験の会場…トキワジムに着き、試験前の案内があるからとさっきレッドと別れた。
これだけ早くに着いてれば観客席の一番前を陣取れる!
…と思っていたんだけど、ジム内に入ってびっくり。
「あーあーあー…」
観客席と記された場所には、胸下ぐらいの高さのバリケードが申し訳程度に立っているだけ…
なんと立ち見席しかありませんでした!
早起きした意味が全くない。
「まだまだ時間あるし、立って待ってるの疲れそう…」
はあ、とため息がこぼれる。
こんなことならレッドに着いていけばよかったな、控え室ぐらいはあるだろうし。
あ、でも試合直前に人がいたらさすがに落ち着かないか。
会場内を見回してもいるのは会場設備をしてるっぽい人とか、私と同じく早く来すぎたらしい観客が数人。
イエローもナナミさんも、グリーンもいない。
「立ち見席なら場所取りの必要もないし、ピジョ。一緒にトキワの森を散歩しよっか。」
いつだって故郷は嬉しいはず。
ピジョの入っているモンスターボールに触れてそう言うと、返事をするかのようにボールが小さく動いた。
「あ、この辺だよね。私とピジョが会った場所。」
ピジョがオニスズメに襲われて瀕死の状態だったところを、私とイエローが助けた場所。
隣で心なしかいつもよりも嬉しそうに翼を羽ばたかせるピジョに言うと、彼はこくりとこれまた嬉しそうに頷いた。
もうピジョの中ではあの日の記憶は辛いものじゃなくて幸せなものに変わっているらしい。
…素直に、嬉しいなあ。
「私、あの時ピジョが仲間になってくれてすごく嬉しかったんだよ。……本当はあの時少し心細い気持ちを抱えたまま旅してたからさ。」
そう言って頭をなでると、ピジョは不思議そうに首を傾げた。
「旅なんて初めてだし、前触れもなく始まった旅だから、この先どうなるかとかも全然分からないし。勢いまかせに旅にでたこと、いつか後悔しないか不安で。」
何が正しいかなんて分からない。
自分の選択に自信なんてなかった。
「ウインとサンがいたからまだ良かったけど、2人とも旅に出る前からの仲間だったから。だから、旅って楽しいなって初めて思ったのは、ピジョと出会って仲間になった時なの。」
命を救えた嬉しさと。
仲間が増えた喜びと。
単純と言われるかもしれないけど、少なくともピジョに会えたことで、その先旅に出たことを後悔することはないと確信した。
「ピジョ。」
もう一度手を伸ばすと、ピジョは自ら私の手に頬をすりよせてきた。
あの時はまだ小さなポッポだったこの子。
お母さんのみたいな立派なピジョットになれるようにとつけた“ピジョ”という名前通り、こんなにも大きく逞しく進化した。
本当に、愛しい。
ピクッとふいにピジョが何かに反応する。
次いで、少し先に飛んで行ってクエッと軽く一鳴き。
「?どうしたの、…あ。」
ピジョに近づくと、茂みの向こう側にイエローがいた。
イエローは耳に花をつけたピカチュウに真剣な面持ちで話しかけている。
…野生のポケモンかな?
私とピジョには気づいていないらしくて完全に声をかけるタイミングを失ってしまった。
「チュチュ…どうしよう。もうすぐレッドさんのジムリーダー試験が始まるんだよ…!僕もすごく緊張してきちゃった……!」
チュチュと呼ばれたピカチュウはゆらゆらと尻尾を揺らして、イエローの顔をのぞきこんだ。
「レッドさんがこの町のジムリーダーになったらすごくすごく嬉しいなあ。レッドさん…あの時の約束、覚えてくれてるかな。」
イエローは嬉しそうに笑う。
ああそういえばレッドが話していたっけ。
昔トキワでサカキと戦って怪我をした自分を助けてくれた名前も知らない女の子(それがイエローなんだけどレッドは気づいてない)と約束したって。
ジムリーダーに、なることを。
「バトルは苦手だけど、レッドさんになら教わりたいなあ。チュチュ。僕ね、レッドさんなら絶対に素敵なジムリーダーになると思うんだ。」
イエローはピカチュウを抱き上げて、優しく笑う。
「レッドさんが合格したら…言えるといいな。僕が女だってことも、ジムリーダーになったら真っ先に会いに来てくれるって、約束したことも。全部、全部…言えるといいなあ。」
その姿はすごく可愛らしくて、微笑ましいものなのだけれど。
なんとなく私自身の心のうちに重い鉛のような気持ちがあることに気がづいた。
レッドがジムリーダーになったらイエローは全部話すって、覚悟をきめてる。
手足の痺れのことをぬきにして考えれば、私はレッドがジムリーダーになることを応援していて、だから、レッドが合格してくれればすごく嬉しい。
…はずなのに。
イエローから本当のこと話されて、レッドはどんな反応するんだろうって、そう…考えたら。
「(もう…嫌だなあ、私。)」
一瞬。ほんの一瞬だけ。
素直に応援できないかもしれない、って、思っちゃったなんて。
「ちょっと早いけど会場に行こっか。もしかしたら試合前にレッドさんに会えるかもしれないし。…ふふ!チュチュもピカに会いたいよね、分かってるよ。」
楽しそうにトキワジムへと向けて歩きだすイエロー達。
「…。」
イエローは、可愛くて、呆れちゃうぐらいに優しくて、私のこと妹みたいに慕ってくれてて。
だから私もイエローのことが大好きで。
…大丈夫。そんなはずない。
私がイエローに対して、汚い気持ち
、持つわけない。
大きくかぶりをふって、一度にこりと笑ってみる。
うん。大丈夫。
「……イエロー!」
私の声に気づいて振り返った彼女は、「イミテさん!」と、すごく嬉しそうに笑ってくれた。
.
私は返せているだろうか
早朝。
ジムリーダー試験の会場…トキワジムに着き、試験前の案内があるからとさっきレッドと別れた。
これだけ早くに着いてれば観客席の一番前を陣取れる!
…と思っていたんだけど、ジム内に入ってびっくり。
「あーあーあー…」
観客席と記された場所には、胸下ぐらいの高さのバリケードが申し訳程度に立っているだけ…
なんと立ち見席しかありませんでした!
早起きした意味が全くない。
「まだまだ時間あるし、立って待ってるの疲れそう…」
はあ、とため息がこぼれる。
こんなことならレッドに着いていけばよかったな、控え室ぐらいはあるだろうし。
あ、でも試合直前に人がいたらさすがに落ち着かないか。
会場内を見回してもいるのは会場設備をしてるっぽい人とか、私と同じく早く来すぎたらしい観客が数人。
イエローもナナミさんも、グリーンもいない。
「立ち見席なら場所取りの必要もないし、ピジョ。一緒にトキワの森を散歩しよっか。」
いつだって故郷は嬉しいはず。
ピジョの入っているモンスターボールに触れてそう言うと、返事をするかのようにボールが小さく動いた。
「あ、この辺だよね。私とピジョが会った場所。」
ピジョがオニスズメに襲われて瀕死の状態だったところを、私とイエローが助けた場所。
隣で心なしかいつもよりも嬉しそうに翼を羽ばたかせるピジョに言うと、彼はこくりとこれまた嬉しそうに頷いた。
もうピジョの中ではあの日の記憶は辛いものじゃなくて幸せなものに変わっているらしい。
…素直に、嬉しいなあ。
「私、あの時ピジョが仲間になってくれてすごく嬉しかったんだよ。……本当はあの時少し心細い気持ちを抱えたまま旅してたからさ。」
そう言って頭をなでると、ピジョは不思議そうに首を傾げた。
「旅なんて初めてだし、前触れもなく始まった旅だから、この先どうなるかとかも全然分からないし。勢いまかせに旅にでたこと、いつか後悔しないか不安で。」
何が正しいかなんて分からない。
自分の選択に自信なんてなかった。
「ウインとサンがいたからまだ良かったけど、2人とも旅に出る前からの仲間だったから。だから、旅って楽しいなって初めて思ったのは、ピジョと出会って仲間になった時なの。」
命を救えた嬉しさと。
仲間が増えた喜びと。
単純と言われるかもしれないけど、少なくともピジョに会えたことで、その先旅に出たことを後悔することはないと確信した。
「ピジョ。」
もう一度手を伸ばすと、ピジョは自ら私の手に頬をすりよせてきた。
あの時はまだ小さなポッポだったこの子。
お母さんのみたいな立派なピジョットになれるようにとつけた“ピジョ”という名前通り、こんなにも大きく逞しく進化した。
本当に、愛しい。
ピクッとふいにピジョが何かに反応する。
次いで、少し先に飛んで行ってクエッと軽く一鳴き。
「?どうしたの、…あ。」
ピジョに近づくと、茂みの向こう側にイエローがいた。
イエローは耳に花をつけたピカチュウに真剣な面持ちで話しかけている。
…野生のポケモンかな?
私とピジョには気づいていないらしくて完全に声をかけるタイミングを失ってしまった。
「チュチュ…どうしよう。もうすぐレッドさんのジムリーダー試験が始まるんだよ…!僕もすごく緊張してきちゃった……!」
チュチュと呼ばれたピカチュウはゆらゆらと尻尾を揺らして、イエローの顔をのぞきこんだ。
「レッドさんがこの町のジムリーダーになったらすごくすごく嬉しいなあ。レッドさん…あの時の約束、覚えてくれてるかな。」
イエローは嬉しそうに笑う。
ああそういえばレッドが話していたっけ。
昔トキワでサカキと戦って怪我をした自分を助けてくれた名前も知らない女の子(それがイエローなんだけどレッドは気づいてない)と約束したって。
ジムリーダーに、なることを。
「バトルは苦手だけど、レッドさんになら教わりたいなあ。チュチュ。僕ね、レッドさんなら絶対に素敵なジムリーダーになると思うんだ。」
イエローはピカチュウを抱き上げて、優しく笑う。
「レッドさんが合格したら…言えるといいな。僕が女だってことも、ジムリーダーになったら真っ先に会いに来てくれるって、約束したことも。全部、全部…言えるといいなあ。」
その姿はすごく可愛らしくて、微笑ましいものなのだけれど。
なんとなく私自身の心のうちに重い鉛のような気持ちがあることに気がづいた。
レッドがジムリーダーになったらイエローは全部話すって、覚悟をきめてる。
手足の痺れのことをぬきにして考えれば、私はレッドがジムリーダーになることを応援していて、だから、レッドが合格してくれればすごく嬉しい。
…はずなのに。
イエローから本当のこと話されて、レッドはどんな反応するんだろうって、そう…考えたら。
「(もう…嫌だなあ、私。)」
一瞬。ほんの一瞬だけ。
素直に応援できないかもしれない、って、思っちゃったなんて。
「ちょっと早いけど会場に行こっか。もしかしたら試合前にレッドさんに会えるかもしれないし。…ふふ!チュチュもピカに会いたいよね、分かってるよ。」
楽しそうにトキワジムへと向けて歩きだすイエロー達。
「…。」
イエローは、可愛くて、呆れちゃうぐらいに優しくて、私のこと妹みたいに慕ってくれてて。
だから私もイエローのことが大好きで。
…大丈夫。そんなはずない。
私がイエローに対して、汚い気持ち
、持つわけない。
大きくかぶりをふって、一度にこりと笑ってみる。
うん。大丈夫。
「……イエロー!」
私の声に気づいて振り返った彼女は、「イミテさん!」と、すごく嬉しそうに笑ってくれた。
.