1話. 大丈夫だよって
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向き合うために、知りたいの
自分にできる、最大限の努力を
「博士!ウツギ博士に渡す資料の準備終わりました。」
ヨシノシティに来てから数日が経って、そろそろここでの生活にも慣れ始めてきた。
書類をトンと机の上に置けば「そうか。ありがとう。」と博士は優しい笑みを浮かべる。
「ウツギ博士のお手伝いの子、どうしたんでしょうね?もう予定してた待ち合わせの時間、1時間も過ぎてますけど…。」
「なんじゃと?」
私の言葉につられて博士は時計に目をやる。
作業に没頭してて気づいてなかったんだろうなあ。
博士が閉じた論文の、『ポケモンのワザが人間に与える影響』というタイトルが目に入って、少し、切なくて…温かい気持ちになる。
同時に頭をよぎった、赤い色。
「うーむ。何かあったのかもしれんな。イミテ。すまないがこの辺りを見て来てくれるか?」
「はい!分かりました。」
ピジョの入ったモンスターボールを手にとり、私は研究所の外にでた。
「ピジョ、お願いね!」
早速ピジョの背中に乗り、空へと飛び上がる。
ウツギ博士の手伝いの子の顔とかは分からないけど…まあ、ヨシノシティの研究所に来る人はそんなにいないから、何となく分かるよね。きっと。
「うーん…」
と思ってたけど研究所の近くに人影は全くない。
本当に何かあったのかな…。
「!」
「?ピジョ?どうしたの?」
「クエ!」
急にピクンとピジョが反応して、何かを見つけたようで小さく鳴いた。
その方向を見てみるけど、残念ながらなにも見つけられない。
「私、ここからじゃ遠すぎてよく見えないや。ピジョ。もっと近くまで飛んでくれる?」
あてもないし、ピジョにまかせよう。
バサバサとゆったりと翼を動かしてピジョは水平に飛んでいく。
すると、
「あ。」
前方に帽子をかぶった男の子とジョウトでの新ポケモン…オドシシが見えて思わず声を上げた。
よく見れば男の子の足元にはおろおろしているコラッタもいた。
…あれ?なんかあの子、オドシシにつのでつくされてない?
「うーん…どうすべきか…。ピジョ。とりあえず、仲介に入ってくれる?間めがけてひるませる程度に飛んでって。」
男の子達まで数十メートルのところでピジョの背中から降りてそう指示した。
彼はオドシシからの攻撃を防ぐことに必死で私達には気づいていないみたい。
ビュッ!とピジョは指示通り自慢の速さで男の子とオドシシの前を横切る。
「うわあ!?」
男の子は驚いて後ろにしりもちをつくという、それはそれは可愛らしい反応をした。
オドシシも驚いて攻撃を止め、敵意を男の子からピジョへと変更する。
「ピジョ!戻っておいで!」
大声でそう呼びかければ、私に気づいた男の子とオドシシが同時にこっちを向いた。
あのオドシシ、すごい興奮してるなあ…なんて思っていたら、案の定、狙いを私に変えたようでものすごい勢いで走ってきた。
でもそれをピジョが許すはずもなく、オドシシよりも先に飛んできて、私を庇うように前にでる。
バサリ、バサリ…
ピジョの翼を羽ばたかせる感覚がほんの少し大きくなる。
相手を威嚇している合図だ。
「…、」
その気にすっかり怯えたのか、オドシシは地面にふせて身を縮める。
「賢いね。…いい子。」
レベルの違いを悟ったのだろう。
「だ、大丈夫でやんすか!?」
その声にオドシシから視線をうつせば、男の子がこっちに向かって走ってきていた。
一瞬、ピクリとオドシシの耳が動く。
「大丈夫。彼がキミに何かをしそうになったら私が守るよ。」
まあ実際に動くのはこの子達なんだけど、と付け加えて、白衣をちらりとめくり手持ちのポケモンたちを見せた。
「!」
「…。」
オドシシはモンスターボールを見て、少し後ずさりをしたようにも思えた。
さっきの様子から、何かに怯えて興奮していたのは明らかだ。
じゃあ何に怯えているんだろう…、人間?手持ちのポケモン?モンスターボール?あるいは…捕獲されること?
「あの!!」
「へ!?」
耳元で大声を出され私はハッと我に返る。
隣を見れば、男の子が困ったような表情を浮かべて続けた。
「あ、すいません。何度も呼んでるのに反応がなかったからつい大声を出しちゃったでやんす…」
「あ、いえいえ、こちらこそ気づかなくてすいません。考え事していました。」
「え、この一瞬で?」
確かに男の子がここに走ってくるまで数十秒もかからなかったけど、一度気になったことってすぐに頭から離れないんだよね。仕方ない!
「その格好…研究者でやんすか?ってことは、オーキド博士の、」
「博士を知っているんですか?じゃあやっぱり君がウツギ博士のお手伝いの子ですかね?」
「はい!そうでやんす!オイラはたんぱんこぞうのゴロウでやんす。危ないところを助けてもらって、ありがとうでやんす!」
「ご丁寧にどうも。私はイミテといいます。よろしく。」
にっこりと笑えばゴロウくんもつられて笑っていた。
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