7話.笑っていられるといいね
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時には、道に迷っても
時には、歩くことを止めてしまっても
時には、道がなくても
たどり着けば、いいんじゃないかな
「追いついた…っと!」
走りだすまでに時間差があったけど、そこは自転車とポケモンの速さの差。
すぐに追いついて、ウインがレッドの隣に並ぶ。
「!?イミテ、それ、揺れるんやないんか!?怪我、」
「(しー!)」
あわてて人差し指を口元に持ってきて黙ってて!と合図するけど…
「?怪我?」
レッドにはばっちり聞こえてしまったみたいだ。
…まあいいか。
あとからバレたらまた怒られるもんね!
「この前背中に怪我しちゃって、でも大したことないから全然平気!」
「…怪我って、何で?」
「んー?ポケモンのワザがかすっただけだよ。」
「は!?なんで、」
「もう大丈夫だって!この話はいいから!それよりレッド。オツキミ山でレッドの形の氷像をタケシが見つけたらしいけど、レッド、氷づけになってたの?」
半ば無理矢理話をそらした。
マサキが小さくはあーとため息をついた気がする…。
全然平気なのに、皆、過保護すぎるんだって!
「ああ。四天王のカンナのワザで、な。」
「?挑戦状の名前はシバだったから、てっきりシバと戦ったのかと思ってた。」
「初めはな。でも途中でシバの様子がおかしくなって…。シバは他の四天王に操られてたんだ。」
「え!?」
でも確かに、さっきの戦いでもシバの目が不気味なものになってたっけ。
「イミテ、バッジエネルギー増幅器のこと覚えてるか?」
「うん。レッドが前に説明してくれた…ロケット団が持ってたやつだよね?」
2年前、ナツメがシルフカンパニーでその機械が生み出したバッジエネルギーを使って、サンダー・ファイアー・フリーザーの合体した生物をつくりあげた。
私達はそのポケモンと戦ったから、よく覚えてる。
「あれは今、四天王が持ってるんだ。バッジエネルギー増幅器から発生したエネルギーを利用して、人間を消そうとしてる。」
「!」
ワタルが前に言ってた、人類滅亡を実現する秘策があるって、そのことだったんだ…!
「…悪い、止められなかった。」
レッドは少しうつむいて言った。
「(レッド…)」
まるで悔しさが伝わってくるようだった。
彼らの目的を知りながら負けてしまったことが許せないんだろう。
彼はすごく、正義感が強い人だから。
「…。」
考えてみれば、私もレッドと同じだ。
彼と同じで、止められなかった。
ワタルと1対1で向き合う機会があったのに。
同じ立場にいる私は。
慰めの言葉なんて欲しくないし、罵倒してほしいわけでもない。
……だから、レッドだって同じ想いでしょう?
「じゃあ、次は何としても止めよう。」
過去を振り返ってる暇なんてない。
いつだって前を見据えていたいから。
変えるべきは、未来だ。
「…そうだな。」
レッドの瞳が、また力強いものに変わった気がした。
「なあ、レッド。走りながらでええから教えてくれへん!?どうやってその氷像から出たんや?おまけにさっき使うた進化の石は『クチバの伝説の石』……やろ!?あんなん持っとるなんてホンマ、驚いたで!」
「氷像からは自分の力で出たんじゃない。助けてくれた人がいたんだ。石もその人にもらった。」
「ええ!?助けてくれたうえに、石をくれた人がいたやてぇ!?だ、誰なんやその人は!!?」
「イヤ、顔は見てないんだ。氷から出てすぐは、目もはっきり見えなかったからな。でも、その人は俺を氷から出した後、みっつの石をさしだしながらこう言ったよ。『これを持っていけ、レッド。おまえはこんな所でくちるやつではない。』」
「…。」
…レッドが氷像にされていた場所は、大量の岩でふさがれていたはずた。
オツキミ山の地形に詳しいタケシでさえも、そこに入るのに時間がかかったらしいのに…
その人はどうやってそこまでたどり着いたんだろう…。
それにレッドのこと知っているような言葉も引っかかる。
「そして、さらに、これも渡された。『再びおまえを決戦の地へ導くものだ』って言ってな。」
「う、運命のスプーン!!」
「俺はこいつの曲がるほうへ進んでこの島まで来れたんだ。」
「一体だれなんや…。」
加えて、運命のスプーンを持っていたってことはナツメと関わりのある人だということ。
「(あれ…確かあの人…)」
脳裏にうかんだその人は、
“地面”タイプの使い手だったはずだ。
複雑な地形をもろともせず、レッドがいた場所に行けたのが、そのおかげだとしたら…。
「イミテ、さっきから難しい顔しとるけど、何か分かったんか?」
「え、いや…、ううん。」
首を横に振る。
今までのはあくまで推測で、それにあの人がレッドを助ける理由が見つからない。
この推測を口にするのは、状況を知ってる…グリーンあたりにでも言ってみてからのがいいね、きっと。
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