4話.独りよがりの
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罠にかかったのは
彼か、私か、
カイリューから飛び降りた少年は、タンッという音をたてて地面に着地した。
そして鋭い目つきで私を見る。
ピリピリとした空気が肌にまとわりつくように、一瞬で緊張が辺りを包んだ気がした。
思わず、のどが鳴る。
「…マサラタウンのイミテ。第9回ポケモンリーグ準優勝者…。間違いないな?」
「…そういうアナタは、四天王のワタル、でしょ?」
「フッ…。そうだ。やはり気づいていたのか。このワタルが、お前を探しているということに。」
彼の問い(というか確信があるといった表情だったけど)に、ただ笑みを返した。
緊張しているけど、不思議と気持ちは落ち着いている。
…彼には聞かなきゃいけないことがたくさんあるんだ。
「何が目的で私を探し回っていたの?」
「まあ待て。初対面の相手にそこまで敵意をむき出しにされるのもいい気はしない。」
ワタルはそう言ってモンスターボールに手を伸ばした。
「!」
私もウインの入ったボールに手をかける。
その様子にワタルはフッと鼻につくような笑みをうかべて、そのままボールをカイリューに向け…
「もどれ、カイリュー。」
「…!」
…彼が手に取ったボールは空だったらしく、カイリューはボールの中に収まった。
「危害を加えるつもりはない。むしろ俺はお前に友好的な考えを持っているんだ。」
「…どういう意味?」
「お前はポケモンの保護施設を回っているんだろう。ポケモンのためを思って動いている。良い行いだ。」
「…。」
そうは言うものの、その言葉に含まれているのは、賞賛とか尊敬とか、そんなものじゃないのが、彼の声色と表情から伝わってきた。
きっとその言葉の本意は、この先。
「そして、それゆえ見てきたはずだ。愚かな人間どもの姿を。」
…ほら、口調が一段と冷たいものに変わった。
「人間は自分達のことしか考えない。環境破壊がその良い例だ。人間によってすみかを奪われ、食料不足におちいり、今この瞬間にも命をおとしているポケモンがいる。」
憎しみのこもった声色に、その想いの強さを感じた。
「(ああ…だから、か。)」
ワタルは人間に憎しみを抱いていて、イワヤマの荒野にあった工場を襲ったのもそれが理由だとすれば納得がいく。
「先ほどから黙っているが、お前も保護されたポケモンと接してきたのなら分かるだろう?」
彼が浮かべたのは、確信を持った笑みだった。
確かに、身勝手な人達も大勢いる。
ポケモンが苦しむ姿を見るのを楽しんで虐待を繰り返したり。
命の重さを理解せず自分の身勝手でポケモンを捨てたり。
ロケット団のようにポケモンの改造のために生体実験をしたり。
彼が言ったように、環境破壊によってポケモンが間接的に被害を受けていたり。
私はこの数年で、そんなポケモン達を目の当たりにしてきた。
「ポケモンにとって、人間は邪魔な存在にすぎない。」
でも…、彼のその考えにはとても共感できなかった。
それはきっと、私自身が…
ポケモントレーナーだからだ。
「…そんなことない。絶対に。」
ワタルを見てはっきりと言う。
彼は顔色一つ変えず、冷めた目で私を見ていた。
「確かに身勝手な人間もいるかもしれないけど、人とポケモンが一緒にいることで得られるものもたくさんある。」
私はモンスターボールに手を当てて続ける。
「現に私は、この子達と出会っていろんな感情を教えてもらった。本当に信頼しているし、この子達も私のことを信頼してくれてる。一緒にいてすごく幸せだって思ってる。」
私はこの子達といることがすごく幸せで。
この子達も私のことをすごく大切に思ってくれていて。
「私の周りにもポケモンにちゃんと愛情をもって接している人はたくさんいて、ポケモン達は皆幸せそうな顔してる。だから…人間は邪魔だなんて、一概に言うことは、私は間違ってると思う。」
人間はポケモンといることで、
ポケモンも人間といることで、
いろいろな感情を知ることができる
お互いが成長できる、強くなれる
.