2話.浮かんでは消え
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大切だから、傷つけたくない
大切だから、頼りにしたい
その想いの狭間は、
混沌としている
目の前の金髪の少女の黒い瞳は、大きく大きく開かれていた。
「イミテ…!言いすぎよ!それに、ピカはこの子についていくって、さっき決めたばかりなの!かき乱さないで!」
険しい表情でカスミが言った。
そりゃあそうだよね。
私、今ひどいこと言ったもん。
自分でも自覚はしてる。
でも、止めるわけにはいかない。
「さっきはさっきでしょ?グリーンと私が加わったら、どうなるか分からないよ。」
さらっと言って、ピカを見て続けた。
「ピカ。おいで。」
ピカの耳がピクリと動いた。
「…ピカ!僕に、ついてきてくれるんでしょう?」
イエローが不安な顔をしてピカを抱き上げた。
イエローの腕の中でピカは困った顔をする。
「ピカのことは私達のがよく知ってる。戦闘になってもピカに上手く指示できる。」
「イエローだって、理科系の男との戦いでピカの特性をいかした指示をしていましたわ!」
「じゃあイエロー。ピカのワザ、今言ってみて。」
「え…、」
「早く。」
冷たく言えば、鋭くにらみかえされた。
反抗するように黒い瞳が私をとらえる。
「〝でんきショック〟〝10まんボルト〟〝かみなり〟あと…えっと…」
「〝みがわり〟は?体力をけずって分身を作るワザ。」
「い、今言おうと思ってたところです!」
「それと〝どくどく〟。でんきワザばかり覚えてるわけじゃないよ。」
「それも、今…」
やっぱり。
イエローはポケモンの知識量が足りない。
「これが本当の戦闘だったら敵は待ってくれない。ピカのワザを生かしきれずにそこで終わり。」
「…っ、」
「ピカ。どうする?そのままイエローといるのが、アナタにとって最良なの?」
イエローには力も、知識もない。
そして何より…優しすぎる。
誰かが傷つくたびに、彼女自身もまた傷ついてしまう。
「ピ…」
ピカだってちょっとぐらいは感づいているはず。
イエローが大切なら、傷つけたくないなら、自分は彼女についていくべきではないと。
「イミテ、お前…」
グリーンが私の気持ちを察したのか声をかけてきたけど、私はそれを無視してイエローを見つめる。
彼女はピカを抱きしめたままうつむいていて…。
「(やっぱりイエローには負担が大きすぎるよ)」
…ブルーが言っていた。
ピカのことを四天王がねらってるって。
つまりピカを連れているだけで危険が及ぶってこと。
「イミテ、ひどいわ!たしかにアナタは強いけど、でもだからってそんな言い方するなんて!」
「…。」
責められる覚悟はできてたけど、やっぱりキツいなあ…。
でも周りからひどいって言われたって、私はイエローを危険な目に合わせたくない。
「イミテ、さん…!」
イエローの声が響いた。
少し震えてはいるけど、凛としたよく通る声。
「僕は…バトルも苦手だし、経験も、知識だってないけど…!」
視線は真っ直ぐ私に向けられている。
「でも…!レッドさんを助けるためなら、バトルだってやります!」
意志の強い、真っ直ぐな瞳に、
「僕を…強くしてください!」
なぜか彼のおもかげをみた。
「…っ!」
まさかあんなに冷たい言葉をあびせたのに反論してくるなんて思ってもみなかった。
2年前よりも確実に着実に…大人になってるんだ、彼女は。
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