1話.まるでかくれんぼ
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ドクン、ドクン
心臓の音がこんなにもうるさいのは
その事実を認めていないからだ
“どういうことなの…?レッドが、行方不明って。”
そんな私の問いかけに、ブルーは少し気まずそうに…でも、はっきりと言った。
「そのままの意味よ。」
「考えすぎとかじゃなくて?ただ連絡がつかないだけ…とか。」
私もそうだけど、レッドは通信手段がない。(ちなみにブルーは携帯型の通信機、グリーンはパソコンっていう通信手段をもってる)
だからいつも連絡をとるときは、近くのポケモンセンターに連絡して伝えてもらうか、時間を決めて連絡をとるか、ポケモン達に頼むかのどれかしかない。
だからほんの1ヶ月、連絡がとれなかっただけで行方不明なんて、大げさな…。
そうであってほしいと願う私の想いを、ブルーは首を横にふって否定する。
「昨日トキワの森の上空をぷりりで飛んでいたときに見たのよ。」
「…なにを?」
声が低くなる。
心臓の音がうるさい。
「レッドのピカがひどい怪我をおいながら逃げていたの。追いかけてくるサワムラーから。」
「え…」
「ピカの必死な様子からして、ただごとじゃないってすぐに思ったわ。」
「でも、ただ野生ポケモンに追いかけられただけかも…、」
「イミテ。お前もよく分かっているだろう。アイツの手持ちがただの野生ポケモンにそこまでやられるハズがない。」
「っ…!」
もう、認めざるをえないみたいだ。
少なくとも、レッドに何かがあったんだってことを。
「それで、ピカは!?」
「そのあとすぐに森の中にはいっていったから見失っちゃったの。でも追いかけたその先である子に出会った。」
「?だれ?」
「トキワ出身の不思議な力をもつ少年よ。」
「!トキワの力…!」
「知ってる?」
「うん…。」
前にトキワの森であった女の子─…イエローがその力をもっていて、実際に見たこともある。
「それで、ここからは私情なんだけど、アタシをさらった鳥ポケモンについて調べてみて、四天王のワタルって言うトレーナーが何か関係があるんじゃないかって分かったの。」
「四天王って?」
「ジムリーダーをもしのぐかなりの実力をもっているポケモントレーナーよ。名前のとおり、そのワタルって人も含めて4人いるわ。」
「そうなんだ…(ジムリーダー以上の、実力者…。)」
「ワタルもトキワの力をもっていて、対抗するためにはトキワ出身のその力をもったトレーナーとトキワ出身のポケモンでなければいけない…そんなウワサがながれてた。」
「…。」
「だからアタシは四天王の情報を集めるため、そして、レッドを探してもらうために、その子に頼んだの。」
「!?そんな…!無関係の子を巻き込むなんて…!!」
「まったく関係がないわけじゃないわ。2年前、トキワの森の野生ポケモンが凶暴化したとき、レッドがその子のこと助けてたの。その子はレッドのこと尊敬してた。」
2年前ってことは、サカキがこの森を利用しようとたくらんでたときだよね。
トキワの森の凶暴化した野生ポケモンたちのこと、レッドと一緒に落ち着かせたっけ。
なんだかなつかしい。
「そうは言っても、ポケモントレーナーなの?その子。」
「ええ。一応は。バトルは全然苦手みたいで、昨日アタシが簡単に教えた程度だけど。そして、今日送りだした。」
「…ブルー。今すぐ止めるべきだよ。ブルーがその四天王って人達の情報を集めたいのも、もし仮にレッドに何かあったとして、そっちの情報も集めなきゃいけないのも分かる。けど、」
ブルーを見つめて、言う。
「それは一般の人に頼んでいいようなことじゃないよ。その子は絶対に危険な目にあっちゃう。」
「ほらな。」
私の言葉を聞いたグリーンが、諭すように続ける。
「言ったとおりだろう?イミテも必ず俺と同じことを言う、と。今すぐそいつを連れ戻せ。」
「…イヤよ。」
「ブルー。」
否定したブルーに、グリーンは低い声で言う。
「アタシがあの子にバトルを教えたとき、全然センスはなかったけど、あの子には優しさがあった。」
「優しさ?」
「ポケモンを傷つけたくないっていう、本当に無垢で小さな子供みたいな優しさが。あの子なら、アタシ達には出来ないことをやってくれる…そんな気がするの。」
ブルーがその子に期待していることはその声色からよく分かった。
でも、ポケモンを傷つけたくないなんて、きっと多くのトレーナーが思っていること。
できることなら相手のポケモンにも自分のポケモンにも怪我は負わせたくない。
そんな考えじゃポケモンバトルなんてなりたたないことを皆知っているから、仕方ないことだと妥協しているんだ。
妥協した上で、もはやそれが当たり前だと身体にしみついている。
それをしたくないって表面にだすようなら、それは優しさではなくて…単なる甘えだ。
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