しみついた価値観
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望むものは、平和な世界
多くの幸せのための
ごくわずかな犠牲は避けられない
…それって、ほんとう?
こんなにも“声”が聞こえるのに
助けて、って
私は今、タマムシデパートにいる。
なくなった道具を補充するために。
普通にフレンドリーショップで買ってもよかったんだけど、やっぱりデパートのが品揃えいいしね!
「(キズぐすり、なんでもなおし、どくけし、ピーピーリカバー…っと。うん、これで足りないものはそろった。)」
買い物袋を見て再確認。
「ちょっとちょっと。そこのお嬢ちゃん。」
「え?」
急に声をかけられて顔を上げると、目の前のお店にいた、人の良さそうなおじいさんが手招きをしている。
「?私ですか?」
「そうじゃ。ちょっとこっちにおいで。」
「…?」
言われるがままおじいさんに近づく。
このお店…占いのお店なのかな、内装的に。
水晶玉とか置物とか飾ってあるし。
目の前までいくと、おじいさんは声をひそめて言った。
「持ってるだけで両思いになれる石があるんじゃが、買わんかね?」
「興味ないです。すいません。さよなら。」
間髪入れずにそう答えると、おじいさんは目を見開いて驚いていた。
その手のウソはブルーで免疫ついてるからね。
というか、私、だませそうに見えたから声かけられたんだよね。
うわ…地味にショック。
「ま、待ちなさい!…ふう。そんなに興味を持たなかった子は初めてじゃ。近頃の女の子は恋占いとかおまじないとかすぐ信じるのにのう。」
「はあ…そうですか。」
「お嬢ちゃんは興味ないのかい?」
「え…別に。おまじないとかただの気休めですし。」
「…今時の子にしてはずいぶんと冷めてるのう。しかしその気休めが思わぬ力を発揮することがあるんじゃよ。言霊というのを知っているかい?」
「言霊?」
復唱すればおじいさんは嬉しそうに話し始める。
…なんだか帰っちゃいけない雰囲気に巻き込まれた…。
「言霊と言うのは言葉に宿る霊力の事じゃ。言ったことが本当になる。もちろん実際には霊力など存在しないのに。なぜだか分かるか?」
「?」
「人間の意識的な問題なんじゃ。例えばわしが有名な占い師で、お嬢ちゃんに今日悪いことがおこる、と言ったとしよう。すると、お嬢ちゃんは今日一日、そのことばかりにとらわれてしまうじゃろう?」
「…そうかもしれませんね。」
「わしはお守りやまじないはその人間の意識を利用したものなんだと考えておる。“これを持っていれば幸せになれる”という気持ちが、無意識的に行動につながり、運命すらも変える。」
「……。」
「よく信じるものは救われると言うが、それが関係しているとわしは思うんじゃ。」
まるでさとすように話すおじいさんの表情はいきいきとしてて…。
この仕事にほこり持ってるんだなあ。
…だますだけのブルーと違って。
そんなこと、怒られそうだからブルーには口が裂けても言えないけどね!
「じゃあ、私も何か買おうかな。」
「本当かい!お嬢ちゃん!」
「こういうのはやっぱり信じられないけど、でもおじいさんの言葉に、すごいなあ…って感動したんで。」
「!そうかいそうかい!嬉しいこと言ってくれるのう。さ、好きなものを選ぶといい。安くしとくよ。」
「えーっと…」
でもはっきり言って水晶玉とかは邪魔になりそうだからいらないや。
「(あ…)」
目に入ったのは真っ赤なバンダナくらいの大きさの布。
思わずレッドを思い出して、笑ってしまった。
「お嬢ちゃん、いい物に目を付けたのう。それは身に付けてると運命の人と出会うことができるんじゃよ。運命の赤い糸にちなんで作られもので、グレン島でとれた糸から、」
「あ、いいです、そういう説明みたいなのは。信じてないから。」
「…。」
ピラッとめくって布の裏を見てみると値札があった。
普通のハンカチよりちょっと高い程度だし、これでいっか!
「おじいさん、これにします。」
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