insufficient
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ギイッ…と重い鉄の扉を開けると、暗闇でびくりと気配が動いた。
扉を開けたことで差し込んだ光で、その人物の怯えた瞳が俺に向いていることが分かった。
「イミテ…」
思わず、声がもれた。
半信半疑だった。
まさか、そんなはずはないと思いながらここに来たのだ。
でも目の前にいる少女は、自分が長年…いや、今でも想っている少女で。
「レッ、ド……?」
彼女も俺に気づたように、そうもらした。
久々に彼女の声で呼ばれる俺の声に、ギュッと胸が苦しくなる。
これは、愛しさからか、心苦しさからかはよく分からない。
「…。」
沈黙が続く。
暗闇に目が慣れたところで改めて彼女の姿を確認すると、傷だらけで。
両足も両腕にも青白い痣ができていて、何をされたのか、左腕にはぱっくりと大きな切り傷があった。
彼女は肌が白いから小さな傷でも妙に目立つ。
幸いにも顔には目立った傷はできていなかったが、腹を殴られたのか、口の端から血が一筋流れていた。
両手は自由がきくようだが、片足には足枷がはめられており、一定の範囲しか動けないようになっている。
ー…ひどい。
イミテをここまで傷つけたヤツに対して、ふつふつと殺意が芽生えた。
「(くそ!俺が…、
俺がもっと早くここ(アジト)に戻ってれば…!)」
そんなことを考えてしばらく動かなかった俺を、気づけばイミテはジッと見つめていた。
今の俺が身にまとっているこの服の、胸についたRのマーク。
なんだか彼女には見られたくなくて、フッと視線をはずした。
「レッド…」
力のない、今にも消えてしまいそうな声で、もう一度俺の名前が呼ばれた。
その声に、もう一度イミテを見れば、やっぱり俺の方を見つめていて。
その瞳は苦しくて、悲しくて、
今にも泣きそうな…
すがるような、瞳。
ドクン!
例えるならそんなような音を立てて、胸が高鳴るのが分かった。
…ギュッと、苦しくなって。
この、気持ちは……、
「(ああ…愛しいのか。)」
一歩、一歩と、イミテにゆっくりと近づいて、スッとその頬に触れた。
触れた瞬間、びくん、と一瞬イミテの身体がはねて、
次いで…ツゥッと目から涙が流れ落ちた。
たまらなく…たまらなく愛おしく感じて、思うままにその華奢な身体を自分の腕の中に抱きしめた。
そのせいでジャラ…とイミテの足枷から繋がっている鉄の鎖が、悲しげな音をたてた。
「っ…」
そのまま抱きしめていると、少しためらいながらといったように俺の背中に細い腕が回されたのが分かった。
すがりつくように、ギュッと弱々しくイミテは俺の服をつかむ。
イミテの髪から昔と変わらない花のような甘い匂いがふわりと香って。
「レッド、」
腕の力が強くなった。
イミテは俺の胸に顔をうずめたまま言った。
静かに。
そして、心をどこかに置き去りにしてしまったかのように。
「…助け、て」
声も身体も震えていて。
こんな小さな身体で、今までずっと屈辱に耐えていたのかと思うと、苦しくなる。
「もう絶対に、誰にも傷つけさせないから。」
そう言って、強く抱きしめた。
安心したかのように震えがだんだんと止まっていく。
そのままでいるのも良かったけど、顔が見たくなって、ゆっくりと身体を離す。
彼女の頬に手をあてて、俺の方に向けさせた。
すると、変わらず俺をジッと見つめてくるその瞳。
まるで俺しかいない、と。
そう言っているようで。
ドクンと、また心臓がはねる。
「(ああ、)」
あの時は手には入らなかったものが、今ここにある気がした。
いつも自分独りでなんとかしようとする甘え下手な彼女が、今は俺だけに助けを求めている。頼っている。
そして、彼女を守れるのもまた、俺だけだ。
親友だけれども彼女のことに関してだけは邪険に感じていたグリーンも、ここにはいない。
イミテを独占しているような気がして。
彼女が俺だけのようなものになった気がして。
「イミテ。」
彼女の名前を呼んで、引き寄せて、額に口づけをおとす。
「レッドが来てくれて、良かった…」
ささやかれた言葉に、また、心臓がはねた気がした。
心のバランス落ち着けて
(感情はあの日に置いてきたはずなのに)
(会えて嬉しいと思うのは…)
.
1/4ページ