人魚姫の投影
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私が小さい頃に憧れたのは、シンデレラでも白雪姫でも眠り姫でもなく、人魚姫だった。
子供向けのハッピーエンドな話しばかり読んでいた私にとって、その話はすごく衝撃的だったんだ。
“人魚姫”
人魚姫。彼女は人魚の国の王様の、一番下の娘として生まれました。
人魚は人間にその姿を見られてはいけません。
彼女も海の中でひっそりと暮らしていました。
ある日、息抜きに海の外の世界に出た人魚姫は、難破した船を見つけました。
彼女は我も忘れて、1人の、人間の王子様を助け出しました。
………そして、彼に恋をしてしまいました。
海に戻った後も、どうしても王子様のことが忘れられません。
むしろ想いはつのるばかり。
ついに人魚姫は、魔女の力を借りて王子様に会いに行く決心をしました。
彼女はその美しい声とひきかえに、人間の足をもらったのです。
大好きな王子様に会えた人魚姫。
しかし声が出ないため、その想いは伝えられず、おまけに足には刺すような痛みがはしったけれど、…それでも人魚姫は幸せでした。
王子様の隣りにいられたから。
でも、ある時王子様は、隣国のお姫様のことを自分の命の恩人だと勘違いして、彼女と恋におちてしまいました。
恋が叶わなかった人魚姫。
このままでは彼女は泡になって消えてしまいます。
その様子をずっと見守ってきた人魚姫のお姉さん達は、魔女に頼んで、その長い髪を1本の剣に変えてもらいました。
これで王子を殺せば人魚姫は助かる。
お姉さん達は人魚姫に剣を渡しましたが、人魚姫は剣を投げ捨て、海に身を投げました。
そのまま最後は泡になって、彼女は消えてしまいました。
ああ、この話読む度に泣いてたっけ。
人魚姫は王子様が大好きだったから、殺せなかった。
きっと人魚姫にとって王子様のいない世界は意味のないものだったんだ。
だから自分が消えることを選んだんだ。
子供の頃は、そんなふうに人魚姫の一途な思いに純粋に感動してたけど、今はそうは思わない。
そんなことしなくても別の方法があったはずだもの。
王子様を殺さず、
人魚姫も消えない方法
そう、例えば―……、
王子様が愛したお姫様を殺してしまう
とか、ね
【人魚姫の投影】
うそつき、
うそつき、うそつき、うそつき―……!
ねえクリス。
アナタ言ったじゃない。
『ゴールドみたいな不良、絶対好きにならない』って。
言ってたじゃない。
たとえアナタが忘れたって言ったって、あたしの耳は覚えてるよ。
だってそれを聞いたあたしがどれだけ安心したか。
どんなに心が軽くなったか。
アナタ、知らないでしょう?
あたしね、ずっとクリスがうらやましかった。
だってゴールドに、いつもかまってもらってるんだもん。
アナタは『こんな喧嘩のどこが羨ましいのよ。』って苦笑しながら言ったっけ。
喧嘩、とか簡単に言うけどさ、あたしには2人がお互いを特別な存在として扱ってるようにしか見えなかったよ。
何であんなふうに言い合いができるの?
何でゴールドはあたしにはあんなふうに接してくれないの?
何で2人ともあんなに素直じゃないの―……?
(分かってた、)
(2人がお互いを特別に思ってることぐらい)
(だって、)
(何度その関係に憧れたことか)
そうそう。
ゴールドとあたしが初めて会ったとき、言ってくれたの。
『こんな可愛い子がクリスの友達にいたのかよっ!なあ、暇な日あったらデートしようぜ!』ってさ。
あの時はそれを聞いたクリスが彼にくってかかってたけどね。
でもあたしはあの時から彼のこと意識し始めたんだよ。
明るくて見てるこっちまで笑顔にさせてくれる人だなー、って。
すごくドキドキした。
そして、すぐにアナタ達の関係に気づいた。
ゴールドって、何なんだろう?
彼が話しかけるのはいつもクリス。
あたしのことなんて、まるで何とも思ってないのまる分かりなぐらい。
たまに2人になって話してみるけど、
話しが上手な彼はあっという間に会話をもりあげてくれるけど、
―…彼の瞳とあたしの瞳がぶつかることはない。
あたしがどんなに見たってさ、彼はどこか遠くを見てるから。
(それはまるで、心の中で大切な人のことを思っているみたいで―…)
ゴールドが遠く感じる。
近いのに遠い。
手の届く場所にあるはずなのに、遠すぎて手が届かない。
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