ロマンチストはいない
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このお話『いつか、きれいな思い出になるの』の続きです。
(レッド夢/微甘/学パロ)
読むと内容分かりやすくなると思います。
読まなくても大丈夫です。…たぶん。
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まるでドラマのように。
まるで映画のように。
そんなふうに物語が進むことはないって、分かってた。
【ロマンチストはいない】
「あ、グリーン。おかえりー。」
「…なにやってんだ。」
その日家に帰るといるはずのないやつがいた。
エプロンをして、頬になんだか分からない白い粉をつけて。
「イミテちゃん。そろそろいいかもしれないわ。」
「やったー!今度こそ膨らみますよね!?」
俺の姉さんに、なにやら料理(?)を教わっていた。
まあ、この時期ということもあって大体想像はつく。
「ホワイトデーの菓子か。」
「そう!でも残念、グリーンにはありませんー。チョコあげようとしたら逃げる悪い子にはありませんー。」
オーブンに菓子を入れ、ふりかえり、ふん、とすねたような表情をするイミテ。…子供か。
「別にいらん。」
「あら。グリーン、イミテちゃんからのチョコ断っちゃったの?」
「断るもなにも、コイツは義理チョコの1つすら用意してなかったぞ。」
「あははー。今年はホワイトデーにもらった人にだけ返せばいいかなーと思って。でもナナミさん!グリーン、ファンの子が心をこめて作ったチョコ、断固拒否してたんですよ!!ひどい!」
「あらあら。かわいいところあるわね、グリーン。」
「……。」
「え?かわいい?」
姉さんは全てわかってる、とでもいうように俺に笑顔を向けた。
一方でイミテは訳がわからないといった様子で首を傾げる。
思ってもいないんだろうな。
俺が、お前のことを好きで。
お前以外からのチョコは受け取るつもりはなかったなんて。
「グリーンもイミテちゃんに逆チョコあげておけば、もらえたかもしれないのに。残念ねー。」
「あははははは。グリーンから逆チョコなんて……笑えないですよ。義理だとしてもそんなもの受け取ったら…私は次の日にファンクラブの子に血祭りにされる……。」
「ファンの子たちはそんな熱狂的なの?物騒な世の中になったものねえ。私のファンは遠くから見守るタイプだったけれど。」
「それはちょっと気持ちわかるなあ。ナナミさんはそう簡単には触れられない聖母みたいな存在ですもん。というか兄弟そろってファンクラブができるとか、凄まじいですね、この家系。」
「あ、イミテちゃん大変。焦げてるわ。」
「きゃあ!?また失敗!?」
イミテが慌ててオーブンからとびだしたそれは見るも無惨なほどに真っ黒になっていた。
「あーあ…。明日までに間に合うのかなあ…。」
「大丈夫よ。今度はふくらんだじゃない。生地はまだ半分残ってるし、これを時間通り焼けばうまくいくわ。最悪1人分できればいいんでしょう?」
「は……はい…!」
イミテは頬を赤らめて、恥ずかしそうにしながら髪を耳にかける。
ああ……そのままの手で髪を触ったから、触ったところが白くなってるし。
鈍くさくて…イライラする。
大体"1人分"って、………なんだ?
「私がいると話し込んでまた失敗しちゃうかもしれないし、ちょっとおじいさまの部屋に行くわね。話したいこともあったし。」
「は、はい!ありがとうございます!ナナミさん!」
「ふふ。いいのよ。それにしてもイミテちゃんがこんなにはりきるなんて妬けちゃうわ~。いいわねえ、その手作りのお菓子もらえる人は。」
「ナ、ナナミさん……!!」
「うふふ。グリーンもそう思うでしょ?羨ましいなら羨ましいって言わなきゃ。ね?」
「……は?」
姉さんはにこりと綺麗な笑みをうかべて。
すれ違いざまに、「今伝えとかないと、とられちゃうかもしれないわよ?」と、意味深につぶやいた。
「姉さ、」
俺が言う前に、バタンと扉がしまる。
「……。」
なんなんだ。分からないことだらけでもやもやする。
はあ、とため息をはき、ソファーに座る。
「え、グリーンは行かないの?そこにいるの?」
「いちゃ悪いか?」
「悪くないけど、気が散るっていうかー……。」
「そもそもここは俺の家だが?」
「そうですねー。はいはい、どうぞご自由にー。」
そんな軽い返事を返して、イミテは…少し照れ臭そうな顔をしてシックな雰囲気の茶色のカップに生地を流し込んでいた。
「…お前、それ誰にやるつもりだ。」
「は…!?別に誰だっていいでしょ!」
「……さっき1人分って言ってたし、…ああ、好きなやつ、か。」
「~っ……!?あ、こぼれた!もー!グリーンのせいだー!!」
イミテはわたわたとしながらこぼれた生地をふく。
「(……嘘だろ。)」
姉さんとのやりとりでまさかとは思ってはいたが、
まさか本当に、イミテに、好きなやつ……?
「もー!グリーンにだけはばれたくなかったのに…!!どうせちゃかすんでしょ!ふん!」
顔を真っ赤にしながらそういうイミテはいつもよりも可愛らしく見えて、恋する少女の顔をしていると思った。
「別に……ちゃかさない。」
「……そう。」
「……。」
「……。」
なんとなく真面目な重い空気になってお互い黙りこむ。
カチャカチャと調理器具を動かす音だけが聞こえた。
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