8話.すれ違う旅路
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あと少し、あと少しで
アナタの背中にとどいたのに
あとちょっとのところで
すれ違う
すれ違うたびに
アナタが遠く感じるの
本日は晴天。
上を見れば青空が広がっている。
「すっごい、いい天気!」
こんな日はポケモン達も外のがいいよね…ってことで、私の隣りにはサンとウイン。
2匹とも嬉しそうにしている。
サンはあんまり感情をださないから、はしゃいでる姿をみるとほほえましい気持ちになるなあ。
「あっ!」
突然、視界に空とは違う青が広がった。
「海だあ!!」
ウインもサンも海を見るのは初めてみたいで、目を輝かせていた。
「せっかくだから、もっと近くに行ってみようか?」
そう言うと、2匹はよりいっそう目を輝かせて大きくうなずいた。
海の近くまで来た私達。
「わ!おっきい船…。」
海の上に威圧感とともにそびえたつ一隻の船。
船の横に英語で名前が表記されていた。
「サント…アンヌ号…?」
なんだろう?
この船……。
「フ、フー!」
船に気をとられていると、後ろからサンの威嚇する声が聞こえた。
「?」
ふり返ると、黒いスーツに黒い帽子を身につけた、おじいさんがサンにほおづりしている。
「…え、変質者?」
思わずでてしまった本音に、おじいさんは顔をしかめた。
「…少女よ。」
「?はい。」
「年寄りをいたわらんかい!」
変質者と言われたのが気にさわったのか、声を張り上げるおじいさん。
「へ!?あ、はい!すいません…」
しょうがないじゃん、思わず言っちゃったんだもん…!
見ず知らずの人が自分のポケモンに頬ずりしてたらそう思うって!
「大体近頃の若いものときたら…!」
なんか愚痴まじりのお説教始まっちゃったよ。
サンがそのすきにピョンとおじいさんの腕から逃げ出し、私の隣りに並んだ。
ふう…とあからさまなため息をつくサン。
その様子に、私は思わず軽く苦笑いをした。
「笑い事ではなーい!」
「え…」
「人が真面目な話しをしている時に笑うとは、なんたる無礼!」
「別にそっちに笑ったんじゃ…」
「言い訳するんじゃない!」
「……;」
このおじいさん、全く私の話し聞いてくれない…!
どうしようか困っていると、遠くのほうから黄色いものがこっちに向かって走ってきて、
「え!?」
「いたたたた!」
そのままおじいさんに〝でんきショック〟をした。
「ピカ!ピカピ!!」
黄色い物体の正体は、ピカチュウ。
私をかばうように立って、おじいさんを威嚇している。
私をおじいさんから守ってくれてる…?
「(か、かわいい!)」
「これ!わしはなにもしとら…いたたた!!」
反論しようとしたおじいさんに、またもや〝でんきショック〟。
おじいさんの言うことなんて、全く聞く気がないみたい。
「ふぅ…。」
「あの、大丈夫ですか…?;」
「………。」
「(あ、ちょっとひげがこげてる…)」
おじいさんは私をジッと見て、やがてポツリとつぶやいた。
「少女よ、お前さんは優しいのう。」
「へ…!?」
「こんな年寄りを心配してくれるとは…。突然説教して悪かった。」
「いえ、大丈夫です。」
なんかよく分かんないけど、一件落着?
「君、ありがとね。」
ピカチュウにお礼をいうと、照れくさそうにそっぽをむいた。
「あはは!てれやさんなの?サンにそっくりだ。」
ひょいとピカチュウを抱きあげてみる。
特に嫌がる様子もない。
頭をなでれば、気持ちよさそうに目を細めた。
「ムム…!そのピカチュウ、わしが抱くと嫌がるのに、なんで君にはおとなしく抱かれとるんじゃ!?」
「え?さ、さあ…?」
「とぼけても無駄じゃ!きっと君には才能があるんじゃろう!よし、君を我がポケモン大好きクラブに招待しよう!」
「だ、大好きクラブ…?」
「さあ、ついて来たまえ!」
おじいさんは私の返事も聞かずに杖をついて歩き出した。
とりあえず暇だし行ってみようかな。
「あっ……」
ふと、おじいさんの背中からお年寄り独特の、なんとも言えない哀愁がただよっていることに気がついた。
「ここじゃよ。」
おじいさんが立ち止まっのは一軒の家の前。
中心にはピカチュウの絵の看板がある。
「ここが…大好きクラブですか?」
「いかにも!ここはワシが設立したんじゃ。ポケモンをかわいがるクラブじゃよ。」
このおじいさん、そんなにえらい人だったんだ。
「そういえば君、名前は何と言うんじゃ?」
「イミテです。」
会長さんは、そうか、とうなずいて扉をあけた。
「皆、今日から会員になったイミテくんじゃ!」
「へ!?会員になった覚えないんですけど!?」
「さあ、早く手持ちのポケモンをだしなされ!」
また聞いてないし!;
「ほれほれ!」
おじいさんが子供みたいな無邪気な顔でせかしてきたから、まあいいか、と思いモンスターボールをなげた。
ウインディのウイン、ピジョンのピジョ、サンダースのサン、メタモンのメタの全部で4匹。
「わあ!」
「かわいい子達ね!」
「このウインディ毛並みがいいなぁ!」
他の会員達がいっせいに騒ぎだして、ポケモン達の周りをとりかこんだ。
本当にポケモン大好きなんだなあ…。
メタとピジョとウインはまんざらでもない様子だったけど、サンは人見知りが激しいからすっごく嫌そうにしてる。
サンだけボールに戻してあげようと思って近づこうとしたら、
「このウインディ……アナタにとってもなついているわね。」
会員の1人に声をかけられた。
「分かるんですか?」
「ええ。とっても幸せそうな顔してるもの。」
「えへへ。一緒にいた時間が他の手持ちよりも長いから、そのぶん仲良くなれたんだと思います。」
「そう、ベストパートナーなのね!」
「はい!ね、ウイン?」
そう言ってウインの頭をなでれば、ウインは嬉しそうに尻尾をふった。
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