23話.傷痕を戒めに
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心の傷は、一生治らない
深く、深く
刻みこまれている
でも、
それでいいんだと思う
その傷さえも原動力にして
今を精一杯楽しみたいから
傷はもう痛くない
温もりが癒してくれた
次の日の朝、体中の痛みで目が覚めた。
『う、ん…?』
見回して見れば、自分の部屋。
そして膝にはウインが丸まって眠っていた。
『ウイン……』
そっか…昨日、ベッドを背にして寝ちゃったんだ…。
―……お母さんが、別人みたいで怖くて。
まだ信じられないけど、チラリと全身鏡に映った自分の頬は少し腫れていて、昨日のことは嘘じゃないって思い知らされた。
正直、まだ怖い。
でも、このままじゃいけない。
私はウインのトレーナーになるんだから、お母さんにも認めてもらわなきゃ、一緒に暮らせなくなっちゃう。
『ウイン、もどって。』
まだ眠っているウイン。
起こさないように静かにそう言って、モンスターボールに戻した。
そしてごくり、と思わず唾を飲み込んで、ドアノブに手をかける。
部屋を出て階段をトン、トン、とかなり遅く、様子を伺うようにおりた。
リビングのガラス戸の前。
エプロンをつけたお母さんの後ろ姿を見つけ、思わず足を止めた。
『(どうしよう…入って何を言えばいいんだろう…。)』
ガチャッ
『……!』
『あら、イミテ。』
私が立ち尽くしているとドアが開いた。
お母さんが、開けたんだ。
『おはよう。早く、朝ご飯食べちゃいなさい。』
『う、うん…。』
…どうして?
お母さん、いつもと変わらない…。
『今日急な仕事が入っちゃったのよ。いつもより少し早く出るから。』
『あ、あのさ…、』
『ん?』
ギュッと胸の前で拳をつくりながら、なんとか勇気を奮い立たせる。
『ウインのこと、なんだけど『あ、そうそうイミテ。』
言葉を、さえぎられた。
『家、鍵かけとくからね。開けちゃダメよ。』
『え…?なんで…?』
今まではお母さんが仕事に出かけるのと同じ時間に私も家を出て、マサラタウンをいろいろ見て回ってた。
そして、お母さんの仕事が終わる頃家に戻って、お母さんが来たら一緒に家に入る…それが当たり前だった。
なんで今日に限って……?
『お母さん、帰り遅くなるの?』
『いいえ、いつも通りよ。』
『じゃあ私、外で遊んでるよ。』
『ダメよ。だって…、』
お母さんは笑って言った。
普通の笑顔じゃなく、見下すような嫌みな笑顔で。
『イミテにはポケモンがいるじゃない。』
『え……?』
『今までは1人で家にいるのかわいそうだと思って、外に遊びに行くこと許してたけど、もう必要ないでしょ?』
『それとこれとは話しが違うじゃん!』
『違くないわ。同じよ。それが嫌なら、ポケモンを逃がしてらっしゃい。』
『………。』
…今、分かった。
お母さんはウインのこと受け入れるつもりなんて、さらさらない。
『どうするの?どっちもなんて、よくばりは許さないわよ。』
私を、試してる。
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