Short Novel



<1>

王印運んでいるところを、二人の隊士(劇場版では三人でした)と乱菊が見上げていたシーン。

「それにしても、豪華よねぇー」

乱菊の声には、若干、あきれたような響きがあった。
流魂街出身の彼女には、少々やりすぎに映ったのだろう。

「ええ、本当に。・・・・・・しかし、王印というのはいったいなんなんですか?警備を言いつけておきながら、目立つな出るな、なんて・・・・・・」

隊士の一方が、行列を見たまま、言う。
こうして彼らが森の中にいるのは、「くれぐれも目立たぬように」とのお達しがあったためである。

「王印っていうのは、王族以外のには「お前、そんなことも知らないのか?王印っていうのは、王族以外にはその存在を見ることすら禁じられた、人の目にさらされることのない秘宝で、使用方法も能力も俺たちには知る由もないんだ。ただ、数十年ごとに、ああやって保管地を遷移させている、移ろえる力、王印だ」

乱菊の言葉を遮って、もう一方の隊士が言う。

一瞬その場がシラけた・・・

復活したもう一方の隊士が言う。

「なんで、知ってんだよ!!」
「わたしの台詞とらないでよ!!」
「副隊長。そう言う問題ではありません・・・」

なんと!もう一方の隊士は王族だったのだ!!←違う





***


<2>

ヤンを追って、日番谷が煙の中に飛び込みました。

(どういう・・・・・・ことだ・・・・・・?この霊圧は・・・・・・)

これが誰のものなのか、知っている。
・・・・・・いや。
知っていた。遠い昔に。

戸惑う心とは裏腹に、その身は条件反射のように人影を追う。

焚かれた香の薄桃色と、物が燃えるねずみ色が混ざり合った複雑な色の煙に飛び込んだ日番谷の体を、一陣の風が吹き抜けた。

「く・・・・・・・・・っ!」

一瞬の後、腹部に激痛が走る。
日番谷は、腹に深い刺し傷を負っていた。
痛みをこらえて顔を上げると、上空に、人影があった。

瞬歩で一気に距離を詰め、太陽を背にして騒乱を見下ろす人影と対峙した日番谷は、体の前で氷輪丸を構え、

「死ね。草冠」

そう言って仮面の男に斬りかかった。

「うわぁあ!!!」

仮面の男―――草冠は情けなく声を上げてそれをよけると、日番谷に怒鳴る。

「なにしてるんだ、冬獅郎!!台詞違うし!!もう俺だってわかっちゃってるし!!いきなり斬りかかってくるし!!」

そんな草冠に日番谷は冷めた目で見て、

「お前の仮面の下なんか見たかねぇんだよ。どうせ最後で死ぬんだから、今ここでさっさと死ね」
「日番谷・・・・・・俺たち親友だったよね・・・・・・?」

草冠は、日番谷が最後に「草冠・・・・・・俺たち・・・・・・ずっと、友達だ・・・・・・」と言ってもらえるのか、心配になりました。






***




<3>


一護は一高裏の森で、襲撃現場を目の当たりにし、コンを先に帰らせました。
一護は斬月を手にしたまま、辺りを警戒しつつ、結界の中を歩いた。

「ひでぇな・・・・・・」

思わずそうつぶやいた次の瞬間、一護の周囲を、黒装束の集団が取り囲んでいた。
まばたき一つする間に、包囲が完了していた。

「お前らは・・・・・・隠密機動?」

一護の問いに答える者は、いた。

「違う。我々は、隊長の命令で夜一様のストーカーをしている」

と、真顔で言った。

「おい!!!いくら隊長の命令だからって、何ストーカーしてんだよ!!!ていうか、真顔で言うな!!!」

隠密機動―――夜一様のストーカー達は、一護に言われて今更ながらに恥ずかしがっている。

「恥ずかしがるな!!!」
「待て!」

ストーカー達の奥から、聞き覚えのありすぎる声がした。

(この声・・・・・・!(怒))

ストーカー達は即座に左右に分かれ、彼らの長に道を開ける。
その先に立つ、小柄な黒髪の女性死神。

「く、黒崎一護・・・・・・こ、ここで何をしている!」

死神は、ストーカーと同じく、顔が赤くなっていた。
恥ずかしさで。

「あんたは・・・(なにてめぇまで恥ずかしがってんだよ)・・・!!」
「にににに二番隊隊長兼、おおお隠密機動総司令間、そそそ砕蜂だっ!ほほほ本来なら、死神代行に話すいわれはないのだがっ!!わわ我々は、たたた確かに夜一様のストーカー・・・・・・ではなく、よよよ夜一様の写真集を、出版しようと・・・・・・!!」
「動揺しすぎだ。話すこと違ってんじゃねぇか。ていうか確かに俺にはなすいわれねぇし。「確かに」って・・・・・・ストーカー認めてるし」

もう呆れて激しくツッコむのをやめた一護であった。





***



<4>


砕蜂から夜一にストーカーをしている告白を受けて衝撃を受けて「何があったんだよ………砕蜂……」と一護が独白してから二時間後。

午後六時を知らせるメロディーが、雨の町に鳴り渡った。

(やべー、遅くなっちゃった。遊子心配してっかな……)

青い傘をさした黒髪の少女が、家路を急いでいる。一護の妹・黒崎夏梨だ。

明るいうちに帰ろうと思っていたのだが、友達の家でゲームをしているうちに、すっかり暗くなってしまった。

「……ん?」

空座第一高校裏の道にさしかかった時、かすかに、覚えのある気配を感じた。
頭に浮かんだのは、以前、サッカーの助っ人を引き受けてくれた、銀髪の少年。

「冬獅郎ォー!いるのかー?」

夏梨はそう呼びながら、道を逸れて、濡れた森に分け入った。お気に入りのスニーカーが汚れるのもかまわず、ズンズン億へ進んでいく。
かすかだった気配が、強くなる。

「熱……っ」

気配が強まると共に、気温が何故か上がっていった。

「………いた!」

日番谷は、仮面の男がまとっていたボロボロのマントを握り締め、草に埋もれるように蹲っていた。
周囲には、大量の血が日番谷中心に飛び散っている。
夏梨はその場に傘を投げ出し、駆け寄って日番谷の肩を揺すった。

「冬獅郎!どうしたんだ……よ?」

夏梨は絶句した。
日番谷は地面に大穴を掘って、そこに黒髪の男を埋めていたから。

「あ?黒崎の妹か。どうした?」
「いや……どうしたって、コレ……」

そう言って、埋まっているものを指す。
日番谷は「ああ、コレか」と行って立ち上がると、その衣服には大量の返り血がついていた。

「と、冬獅郎!?なにやったんだよ!?」
「ああ、こいつがあまりにも仮面を取りたがるから「うるせぇ!!」ってめった刺しにしたら、あまりにも無様に死んだんだ。それが見たくなくてこうやってわざわざ埋めてやってんだ」

「コレで最後だな」といって持っていたマントを、その埋まっている男の顔にべたっと貼り付けると、一度踏みつけてから土をかぶせた。

一瞬、マントについた土が手形になっていたのが見え、軍手代わりに使ってたんだなと確信した夏梨だった。


王印強奪犯・草冠宗次郎
日番谷にめった刺しにされ   死亡。





***





<5>


尸魂界。
一番隊隊舎・隊首会議場。

一番隊隊長ならびに護廷十三隊総隊長である山本元柳斎重國の前に、各隊の隊長が居並ぶ。偶数、奇数の隊に分かれて立つ列の中に、不自然に空いている空間が、四つ。三つは、反乱と共に姿を消した、三・五・九番隊隊長の場所。あとの一つは、本来なら、六番隊隊長・朽木白哉が立つべき場所・・・

「なにをやってるんだ?白哉?」

十三番隊長・浮竹十四郎が問う。
何故か白哉は、本来なら日番谷が立つべき十番隊隊長の場所に立っていた。

「たまには場所を変えてみたかったものでな」

と、真面目に答えた。
そんなことも気にせず、砕蜂は現状の報告をし始めた。

「周辺はくまなく捜索いたしましたが、夜一様の居た痕跡は発見できず、やはり王印しか見つかりませんでした」

相変わらずストーカーをやっていたうえに、王印を見つけてしまった。
実は、草冠を殺した日番谷が夜一の隠し撮り写真の上に王印を置いておいたのだった。草冠の死体が埋まっている土の上に。

「なお、対象を追跡した後殺したとの報告を受けている護衛隊責任者・日番谷十番隊隊長ですが、「たまにはサボり魔の居ない仕事の無い世界に行きたい」という思いを込めて、みずから霊圧を封じた形跡が残されておりました」

白哉に「勝手にうちの隊長の場所に立ってんじゃないわよ」と殺気を送っていた乱菊だが、砕蜂のその言葉にハッと振り返る。

「お待ちください!!日番谷隊長が職務を放棄したかのような発言は・・・・・・!!
「では、なぜこのようなことをする?」

そう言って砕蜂は懐から、紙を取り出した。
そこには、「執務室の隊首机の上に大量の書類があるので、全部松本にやらせてください。俺は一ヶ月ほど旅に出るので」と書いてあった。

「これは、明確な放棄違反だ」
「しかしわたしは・・・・・・!」
「やめい!」

元柳斎の制止を無視して、乱菊は続ける。

「あんな、50階建ての高層ビルのような書類、全部できません(涙)」

十番隊執務室。
戸を開けるとそこは白い塊があって中には入れないヨ☆








<END>
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イイネ!