Desperate Future 孤独の中で生きる二人





双殛の丘。
ここでは、随分いろんなことがあった。

朽木ルキアの処刑。
藍染惣右介、市丸ギン、東仙要の反逆。
そして―――草冠宗次郎の王印強奪。

そんなこと端からなかったかのような快晴の下は、平和だった。

空座町で藍染達を倒し、虚圏では黒崎一護がNo.4の十刃を倒して、この戦いは終わった。
それから五年。
何も起こらない平和な毎日が続いている。

「こんな日々が永遠に続いて欲しい」

そう思わずには、居られなかったが。

「冬獅郎!」

急に呼ばれて振り返ってみると、そこには鮮やかな橙。

「黒崎・・・」

一護はニッと笑うと、日番谷の隣に腰掛けた。

「ようやく見つけたぜ。ずっとお前のこと探してたんだぜ?」
「何か用でもあるのか?」
「いや、別に!」
「・・・用もねぇのに何しに来やがった?」

眉根を寄せて不機嫌そうに言うと、一護は「怒んなよ~」と言ってから、寝転がる。

「なんとなく、っつうことで!」
「適当だな・・・」

相変わらずの一護の調子に、日番谷は呆れる。
そんな日番谷に「お前もやれよ」と言って寝転がれと指示をする。

「はぁ?なんで俺がそんなもの・・・!」
「いいから!」
「うわっ!」

一護は日番谷の両肩を持って、地面に倒れるように後ろに引っ張った。
体の軽い日番谷は、一護の軽い力でも簡単に倒れてしまう。

「お前やるやならやると言ってからにしろ」
「へ~い」

ため息を吐きながら言う日番谷に、微笑しながら返事をした。

しばらくそうやって空を眺めていると、不意に日番谷が一護に問う。

「その傷・・・もう治らないのか?」
「え?」

突然のことに、一護は何のことかわからなかったが、「ああ、これか」と胸にある大きな傷に手を当てる。

「井上に、これ以上は無理だって言われたし、卯ノ花さんにも傷跡は永遠に残るって言われたし・・・無理、かもな」
「・・・そうか」

なんとなく悲しげな感じの日番谷の声に、一護は「冬獅郎?」と呼びかける。
それに日番谷は「いや・・・」口ごもらせる。
再び「なんだよ?」と訊くと、日番谷は起き上がって一護の方を振り返ると、ニヤリと笑って、

「なんとなく、だ」

と言った。

一護は一瞬キョトンとなったが、ケッと拗ね始めた。

「可愛気のねぇ奴」
「悪かったな」

そう言う日番谷の顔は涼しげだった。

サアァ―――――・・・・・・

心地よい風が吹く。
もともと静かなこの場所は、二人の心を穏やかにさせた。

もうすぐ春。
鮮やかな緑色の葉が木を覆いつくし、色とりどりの花が地面に色をつける季節。
尸魂界でも、現世と同じように自然があった。

すると一護が「あ、そういえば」と思い出したかのように言い、起き上がって日番谷を振り返る。

「なんだよ?」
「冬獅郎。アレ、ちゃんと持ってるよな?」
「アレって何だ?」
「いやほら!アレだよ!」
「アレじゃわかんねぇよ」
「いや、だから!五年くらい前にお前にやった、あの・・・」

ドォオオオオン!!!

突如、瀞霊廷の一部が爆発した。
今まで快晴だった空は、灰色の雲に覆われていた。

「なんだ!?」

日番谷は立ち上がって様子を見に行こうとするが、再び大きな爆発があり地面が揺れてバランスを崩した。

「冬獅郎!」

一護が慌ててそれを支えた。
地面はまだ揺れている。

「一体どうなってんだ!?」
「何者かが侵入したのか?」

日番谷がそう言うのと同時に、ヒラヒラと一羽の地獄蝶がやってきた。
日番谷はそれを人差し指に止まらせた。

「―――!わかった」

一瞬、驚きで目を見開いた日番谷はそう言うと、地獄蝶を飛ばして一護に振り返る。

「七番隊の隊士数名が、他死神に襲い掛かっているらしい」
「なんだと!?」

先程の日番谷の様に、目を見開いた一護に日番谷は続ける。

「問いかけても何も答えないそうだ。まるで操り人形のように」
「どういうことだよ」
「裏切りでは、ないかもしれない」

そう言う日番谷の表情はとても辛そうで、一護は見ていられず声をかけようとするが、

ドォオオオオン!!!

再び爆発が起き、地面が大きく揺れ、それは叶わなくなる。

「またか!!」
「とにかく、行くぞ!黒崎!」

そう言って日番谷が足に力を込めたと同時に、目の前に人影が現れる。

「っ―――!?」

驚いた日番谷は、込めていた足の力を抜く。
目の前の人物は、日番谷より背の低い―――子供だった。

その子供は、灰色の髪を揺らしながら、一歩一歩二人に近づいてくる。
子供が近づくにつれて、一護達は警戒を強くする。

ザッと足音を立てて立ち止まった子供は、無表情のまま、真紅の瞳で一護達を見据える。
その殺気の篭った視線に、一護と日番谷はゾクッと寒気を覚える。

子供は無表情のまま、腰に携えていた刀をスゥ…と抜くと、その切っ先を―――一護に向けた。

「!?」

一護は背負っている斬月の柄を握る。布が解けると同時にそれを構える。
日番谷も氷輪丸の柄を握った。
子供はチラッと氷輪丸(それ)を見た後、再び一護に視線を戻して、ゆっくりと口を開く。

「望みを叶えるために、僕はなんだってする。それが、この世界を滅ぼすことになっても。それが―――君を殺すことになっても」
「っ!!!」
「なんだと!!?」

子供の言葉に、二人は驚愕する。
言われた一護は特に。

「君は僕の中で一番の危険人物なんだよ。一番の障害物なんだよ。邪魔だ。―――死ね」

そう言うと同時に、子供の霊圧が急激に上がる。

「くっ・・・!」

一瞬の隙を逃がさず、子供は一護に襲い掛かった。
一護は慌てて斬月でそれを受け止める。
しかし、子供はニヤッと笑うと片手を離して、その空いた手を自身の斬魄刀に添える。
すると、斬月と交じり合っている部分から煙が立ち昇る。

「!?」

それに驚いた一護は慌てて飛び下がった。
斬月を見てみると、子供の刀に触れていた部分は、熱で溶かされたようになくなっていた。

「君に勝ち目はないよ」

そう背後から聞こえたときには、背中から赤い液体が飛び散っていた。

「黒崎!!」

日番谷は一護に駆け寄ろうとしたが、目の前に現れた子供によって阻まれてしまう。
子供は首だけ日番谷に振り返ると、

「黙って見てて」

そういうと同時に、再び一護に向かっていった。
日番谷は金縛りにあったかのように動けなくなっていた。
体に何か、鎖のようなものが巻きついているような。

「っ・・・!」

倒れそうになった体をなんとか持ち直して、一護は刀を構えるが、そこに子供の姿はなかった。
変わりにあったものは、

「花・・・?」

辺り一面に咲いた黄金の花が、その花弁一枚一枚を一護の方に向けていた。

その黄金の花は、一瞬だけ光ったと思うと、花弁を刃に変えて一護に向けて飛ばしてきた。

「なっ・・・!」

驚いた一護は、斬月でそれらを防ぐものの、四方八方全ての方角から飛んできたその刃を、全て防ぐことは出来ず、所々に刺さってしまう。

その刃は、一護の体に刺さって止まったと思いきや、ズズッ・・・と一護の体内に入り始めた。
刺さった全ての刃が一護の体の中に入った瞬間、弾けるようにそれらは中から飛び出してきた。
つまり、一護の体を貫通したのだ。

大量の血が地面に流れ落ちる。
その量は、大量出血で死んでしまうほどだった。

「くっ・・・!」

眩暈がする。
いつの間にかいた目の前の子供が、霞んで見える。
遠くの方で、自分を呼ぶ日番谷の声が聞こえる。
意識が朦朧とし始める。

それでもなんとか、斬月を地面に突き立てて、倒れないように必死に足に力を込めた。
だが、力を入れればその震えは大きくなっていく一方だった。
その様子を見て、子供はニヤッと笑う。

「な~んだ。大したことないじゃん」
「―――!!」

その声が、やけに近くで聞こえた。

ザシュッ!

その音が、自分の肉が裂ける音だと気づくには、少しかかった。

体が―――重い。

大量の出血で、体の中にはほとんど臓器しかない状態なのに、まるで地面に吸い取られているかのように体が重い。
もう、立ち上がることすら出来ない。

ドサッ

一護の眼に、既に光はなかった。



「くろ・・・さき・・・?」

嘘だ。

日番谷は驚愕で目を見開く。
いつの間にか日番谷に巻きついていた金縛りのような弦は、既になくなっている。
日番谷はゆっくりと首を横に振り続けながら、ふらふらとピクリとも動かない一護に近づいていく。
まるで、現実逃避をするかのように。

「黒崎・・・?」

一護の元までたどり着くと、力が抜けたかのように日番谷はドサッと膝をつく。
一護は、視界に日番谷が入っているはずだが、その眼に光が戻ることはない。

嘘だ。

「おい・・・起きろよ・・・」

と、軽くその体を揺すってみるが、一護はピクリとも動かない。
日番谷は激しく揺すり始めた。

「おい!いつまで寝てるんだ!!早く起きろ!!」

それでも、動かない。

嘘だ。

「何やってんだよ・・・!この程度で死ぬお前じゃないだろ・・・!」

嘘。

「なぁ・・・!!返事をしてくれ・・・!!」

嘘―――じゃない。






















「くろさきぃいいーーー!!!!!!!!!!!」






















「―――っ!!?」

突如消えた一護の霊圧。
それに逸早く気づいたルキアは、驚愕で目を見開く。

「一護!?」

その言葉に恋次も反応した。

「今、あいつの霊圧が・・・!!」
「う、嘘でしょ・・・!」

そう呆然と呟いた乱菊は、傍に激しく乱れた日番谷の霊圧があることに気づく。
その揺れは、今までに無いくらい激しく、まるで日番谷のものではないのではないか、と疑うようだった。


「嘘じゃないよ」


突然聞こえた見知らぬ声に、その場に居た三人は声の聞こえたほうをバッと振り返る。
そこには、先ほどの子供が宙に浮いていた。

「何者だ!?」
「僕?僕はただ自分の夢を追い求めている子供だよ」

そう言ってにっこりと笑う。
その少年に乱菊は一歩前へ出て、子供に問う。

「『嘘じゃない』ってどういうこと?」

いつもの彼女より格段に低いその声に、ルキアと恋次は多少驚いた。
しかし子供は怖がることも驚くこともせず、ただニコニコと笑っている。

「答えなさい!!」

乱菊はそう言って自身の斬魄刀・灰猫に手をかけた。
子供はゆっくりと地面に足をつけると、「まいったな~」と頭をかく。

「君達を殺すつもりは全くないんだけどね」
「―――っ!!」
「てめぇか・・・一護を殺したのは・・・!」

恋次のその言葉に、子供はにっこりと笑って、

「そうだよ」

と頷いた。

「貴様・・・!許さぬ!!!」

そう言ってルキアは抜刀して子供に斬りかかる。しかし、子供は避けるどころか自身の腰に携えてある刀を抜こうともしない。

ルキアが刀を振り下ろしたときには、そこに子供の姿はなかった。

「何!?」

慌ててあたりを見渡してみるが、子供の姿・霊圧、全てがその場から消えていた。

「どういうことだ・・・!?」
「居ねぇ・・・」
「どこへ行ったの・・・?」

すると、先程の子供の声が、三人の頭の中に響いた。

『鬼ごっこをしよう』
「鬼ごっこだと?」
『そう。ルールは、捕まれば君たちが鬼になる。たったそれだけ』

『な?簡単だろ?』と問いかける子供に、恋次は怒鳴る。

「ふざけんじゃねぇ!何で俺たちがんなことしなきゃなんねえんだよ!!」
『これは強制だ。君たちに拒否権はない。さぁ、どれだけ逃げきれるかな?鬼達は・・・』

すると、三人の背後に数名の隊士が現れる。

『――-そこにいる、僕の操り人形たちだ!』







サァ―――・・・

先程まで心地よかった暖かい風が、今では体の中を通っていくように冷たい。

目の前に居る一護の髪が、俯いて握り拳を震わせている日番谷の髪が、静かに靡いている。

「っ―――」

一護の霊圧は、完全に感じられない。それは、『死』を意味する。

信じられない。

信じない。

これは夢だ。

俺は今、現実の世界で魘されているに違いない。

そう、思わざるをえない。

今、日番谷の視界に入る色は、一護の体から流れ出た血の色のみ。
まるで世界がモノクロになってしまったかのように―――この世界に、色はない。

色のない世界など、有り得ない。

だから、これは夢だ。

自分が勝手に考え出した、夢なんだ。

最近疲れてたからな。

その疲れが、黒崎の死を見せ付けたんだろう。

コイツがこんな簡単に死ぬわけがない。





なぁ?黒崎―――






「っ!?」

突如、一護の体が霊子の粒となって消え始めた。
それは、あのときの草冠のような・・・

「嘘だ!!」

日番谷はそう叫んで一護の両肩を掴むと、激しく揺する。

「死ぬな!!死ぬな、黒崎!!!」

掴んでいる肩部分ですら、透けてきている。

「死ぬなぁああ!!!!」

スゥ・・・

「っ・・・!!」

弾けるように、一護の霊子が辺りに飛び散った。肩も掴めなくなってしまい、日番谷は地面に手を付いてしまう。
飛び散った霊子は、曇天のこの空にフワフワと上っていく。

目の前に、一護の顔も、体もない。

灰色の地面が、広がるだけ。


 『そういえば、冬獅郎。アレちゃんと持ってるか?』


一護の声が、蘇る。
あの時、一護の言っていた「アレ」とは何だったのか。


 『五年くらい前にお前にやった、あの・・・』


五年前・・・藍染との決着の前、あいつはいきなり変なことを言い出して―――

「アレって、まさか・・・」

日番谷はそう呟くと、懐からある物を取り出す。

「そうか。コレの事だったんだな」

バカヤロ・・・ちゃんと持ってるに決まってんだろ。




***



「―――どうやら」
「ようやく片付いたようだな」

そう言った二人の足元には、気絶している隊士達が居る。
子供が「操り人形」と言った時点で、この隊士達が自らの意思で裏切ったわけではないとわかり、殺すわけにもいかず気絶させたのだった。

「二人共、怪我はない?」

そう言って駆け寄ってきた乱菊に、ルキアと恋次は「はい」と頷いた。

「松本副隊長。この者達は・・・」
「ええ。何かおかしいわ」

そう言うと乱菊は二人の足元で気絶している隊士達に視線を移す。

「まるで、感情が無いかのように表情を変えなかった」

傷を負ったときも、痛みを感じた風ではなかった。そのことに疑問を持っていたのだ。
いくら操り人形でも、痛みを感じれば苦痛に顔をゆがめる。もしそうでなくても、怪我をすれば動きも鈍くなるはずだ。しかし、この隊士達にはそれが見られなかった。

「乱菊さん。とにかく、日番谷隊長のもとへ行きましょう」

恋次は一護の死を思い出したのか、顔を伏せながら言う。
ルキアも乱菊も、その気持ちがよくわかった。

―――もう、自分達を知っている一護には、会えないのだから。

「そうね。行きましょう」

目の前で一護の死を目の当たりにした、一番傷ついている人のもとへ。




***



双殛の丘。

何故ここは、こんなにも人を苦しめる出来事が起こるのだろう。特に日番谷隊長は―――

「たいちょう・・・?」

乱菊の呟きにハッと前方に視線を移したルキアは、思わず動きを止めてしまう。
両手両膝を付いた日番谷が、あまりにも苦しそうだったから。

俯いていて表情は見えないが、握り締めている拳から血が出ているところを見ると、余程の強さなのだろう。手が、震えている。

日番谷はゆっくりと歩み寄って来る乱菊達に気付かず、ただ震えている。霊圧までも―――

「隊長・・・」
「っ・・・!」

乱菊が呼びかけてようやく三人の存在に気付いた日番谷は、ゆっくりと立ち上がった。三人に背を向けて。

沈黙が流れる。

それを破ったのは日番谷だった。

「黒崎は・・・死んだ」
「「「・・・」」」

その言葉に、三人は何も言えない。

「馬鹿だな。何でこんなところで、あの姿のまま死んでいったんだよ」
「たいちょう・・・」
「どうせ死ぬなら、現世で、そして肉体に入ったまま死ねばよかったのにな」
「日番谷隊長・・・」

三人は日番谷の言いたいことがよくわかった。

一護は死神代行であって死神ではない。生きた人間だったのだ。だが、その肉体から離れた魂魄の状態で死んだのと、肉体に入ったまま死んだのとでは話が違う。
肉体に入ったまま死んだのであれば、尸魂界と現世を繋ぐ輪廻の道から魂魄として、尸魂界で生きることができる。もちろん記憶はそのままで。
しかし、魂魄のまま死んだのであればその魂魄は現世に向かう輪廻の道に行ってしまう。現世で再び人間として生き返る場合、その前の記憶は一切なくなってしまう。
つまり、生まれ変わる一護は、自分達の知っている一護ではなくなる―――一護には二度と逢えないのだ。

「隊長・・・」

乱菊が日番谷に近づこうと一歩踏み出したと同時に―――

ドォオオオン!!!

再び大きな爆発が起きた。

「松本!瀞霊廷へ向かうぞ!」
「え!?ですが隊長!」

乱菊の言いたいことがわかり、日番谷は瀞霊廷へ向かおうとしていた足を止めて、三人に振り返る。

「黒崎のことはとりあえず後だ。総隊長にこのことを報告しに行く」
「隊長・・・」
「必ず、ここに戻ってくるぞ・・・朽木」
「日番谷隊長・・・!」

日番谷の気持ちがわかった。

一護を殺してしまうほどの敵の出現。もしかしたら自分達も殺されるかもしれない。しかし、必ずここに戻ってくる。一護の墓をたてるために。

「はい!」

ルキアの返事に頷いた日番谷は瞬歩で瀞霊廷へと向かった。三人もそれに続く。

一護の死んだ場所が、微かに光ったことには―――誰も気付かなかった。





***





瀞霊廷・九番隊隊舎前。

九番隊副隊長の檜佐木修兵は、瀞霊廷を破壊し続ける七番隊の隊士を止めるため、同隊の隊士達を集めて現地に向かおうとしていた。

「報告によると、隊士達はまるで感情がないかのように破壊し続けているようだ。何者かに操られている可能性が高い。決して殺さないようにしろ」
「「はい!」」

隊士達の返事を聞くと、檜佐木は隊士達に背を向けて走り出す。しかし、それは瞬歩で現れた目の前の人物によって阻まれてしまう。

「何者だ!?」

そう言って自身の斬魄刀・風死に手をかけたその時には、既に誰も居なかった。

「副隊長?」

隊士達はそれに気づかなかったのか、不思議そうに檜佐木を見ている。
檜佐木は確実に見た子供の影に、警戒心を解かない。

―――アレは、危険だ。

相手がいくら子供であろうとも、自分の感がそう言っている。おそらくアレが首謀者なのだろと。

いつまでも警戒してその場を動かない檜佐木に、隊士達はどうしていいのかわからない。しかし、檜佐木の背後に一瞬にして現れた人物を見て抜刀し、

「逃げてください!!副隊長!!」

と叫んだ頃には、その場に人は一人もいなくなっていた。






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イイネ!