これ以上彼を苦しめないで・・・ 



あれから数日。
俺たちは尸魂界に無事戻ってきた。始めはほっとこうと思っていた剣八も一緒に。
あのあと、无双旱がどうなったのかは知らない。
たぶん、全て無くなっているだろう。
少しは安心だ。これで犠牲者を出さずに澄むからな。
でも・・・
「日番谷隊長・・・」
ルキアがいまだ目覚めない冬獅郎を見て言った。
そう。あれから冬獅郎は目覚めていない。
ただ静かに目を閉じて眠っているだけ。
俺やルキア、恋次、乱菊さんは必ず毎日見舞いに来る。
他にも、十番隊隊員や隊長格、席官もほぼ毎日来る。毎日来たいのは山々だが、皆忙しいらしい。今でもそうだが、ここに来ると涙ぐむ隊士も多くは無い。それを見ると、俺は後悔が高まってくる。何で護れなかったんだと。自分を責めても責め切れねぇ。皆そんな俺を見ると「一護のせいじゃない」「一護はちゃんと日番谷隊長を護った」って言ってくれるけど、俺は護っちゃいねぇ。もう一週間も目覚めない奴を目の前にして、「俺は護った」なんて言えるわけねえだろ。



「一護・・・?」
俺はまた護れなかった・・・
「一護」
何が「一つのものを護れるように」だ。俺はまったく護れてな・・・
「一護!!!」
「うわぁああ!!!!」
突然ルキアが俺の耳元で思いっきり叫びやがった。
「何すんだよ!!鼓膜が破れるとこだったじゃねぇか!!」
「たわけ!!何度呼んでも返事をしなかった貴様が悪い!!」
そうか・・・呼ばれる声に気づかないくらい俺は・・・
「・・・貴様。また自分を責めていたろう?」
「・・・」
そうだ。
「何故自分を責める?」
何故だと・・・!?
「当たり前だろ!!俺が冬獅郎を護れなかったせいで冬獅郎が・・・!!」
「それがたわけだと言うのだ!!!」
「なっ・・・!」
ルキアはそう言ったあと、冬獅郎の寝ているベッドの近くの椅子に腰掛け、冬獅郎を見る。
その表情はとても穏やかだった。


「日番谷隊長に同じことを言ってみろ。日番谷隊長はなんて言うと思う?」
「それは・・・」
「日番谷隊長は、貴様を責めるようなことは決して言わないはずだ。違うか?」
「・・・」
そうだ。あのときも・・・

『悪い冬獅郎。俺がもっと強かったら・・・』
護れなくて、強くなくて、冬獅郎をこんなに傷つけてしまった。
でも・・・
『何言ってんだ・・・だったら助けてなんて・・・死んでも言わねぇょ・・・』
冬獅郎は俺のことを「強い」と思っているから、俺に「助けて」と言った・・・?

あのときの言葉はとてもうれしかった。でも、
「でも、結局は護れてねぇじゃねぇか!それを・・・!」
「それでも「それでも俺は、お前を責めない」
ルキアの声を遮って聞こえた声は、俺が護ると決めた・・・
「日番谷隊長!!」
「冬獅郎!!」
日番谷冬獅郎だった。


「まったく・・・人の寝ている傍で大声出すな」
「悪ぃ・・・」
「すいませんでした」
俺たちは、ベッドに起き上がっている冬獅郎を見て謝った。
ルキアなんて頭下げてるし・・・
「いや、そんなことはどうでも良いんだ。・・・それより黒崎」
「んあ?」
俺はいきなりのことで間抜けな声を出してしまった。うぅ・・・
「さっきお前・・・「俺を護れなかった」とかぬかしやがったか?」
「ああ・・・」
ぬかすって・・・
「そんなこと当たり前だろ」
「はっ?」
当たり前って・・・何が?
「お前が俺を護るだと?そんなことお前に出来るわけねぇだろ」
「なっ・・・!」
あの時俺に「助けて」って言ったやつと同一人物か!?こいつ。
「本っ当に、可愛気のねぇ奴だなお前は!!」
「事実を言ったまでだ」
「この「今のお前に、俺が護れるわけねぇだろ」
え・・・?



「そんな情けねえ顔した奴に、俺は絶対助けは求めねぇ」
冬獅郎・・・。
そっか・・・励ましてくれてんのか。冬獅郎なりに・・・
「じゃあ、お前より強くなったら、頼ってくれんだよな?」
これでいいんだろ?
「・・・よ」
「あ?なんか言ったか?」
「何も言ってねぇ」
なんか言ったよな?ま、いいか!
「ルキア!いつまで頭下げてんだよ!」
「わたしのせいで日番谷隊長を無理やり起こしてしまった・・・!何をしても、償いきれぬ」
「お前何気に昔言った事また言ってるよな?」
「頭上げろ朽木。何も怒ってねえよ」
「しかし・・・!」
「だぁああ!!冬獅郎が良いって言ってんだから良いんだよ!」
「「お前が言うな!」」
俺はこれからも、こいつを護り続ける。許可とか、そんなもんいらねぇ。
これ以上彼が苦しまないように・・・

『今でも十分、頼ってるよ。黒崎』




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イイネ!