Desperate Future 孤独の中で生きる二人



日番谷に付いて行き着いた場所は、かつて十番隊のあった場所の地下だった。ある程度地下へと続く階段を下りていくと、隊主室と同じくらいの大きさの部屋にたどり着いた。
日番谷は着ていた布を脱いで、氷輪丸を立てかけ、元からあった薪に火をつける。ここでずっと生活していたらしい。生活が出来るよう、ある程度整理されていた。

「いつまで立ってんだ。そこ座れよ」
「え?お、おう」

 言われて初めて日番谷がずっと、一護が座るのを待っていたことに気づいて慌てて座る。

「冬獅郎。ここは・・・?」
「見ての通り十番隊舎の地下だ。まぁ、隊舎自体はもう無いがな」

そう言って、日番谷は火に薪を入れる。

「一体、何があったんだ?」

一護はずっと気になっていたことを聞く。

「・・・こっちのお前も、あっちのお前も知らないんだったよな」

日番谷は燃えている炎を見ながら言った。

「こっち?まるで俺が二人いるような言い方だな」

冗談のつもりで言った一護だったが、

「まぁ、そうなるな」

と、あっさり肯定されてしまい、冗談が冗談でなくなってしまった。
ちょっと不機嫌になりながらもその続きが気になったので、あえて言わないことにした。

「・・・どういうことだよ」
「・・・お前。こっちに来て思ったことを言ってみろ」
「そんなこと言われても・・・」

こっちに来て思ったことなど、星の数ほどある。それのどれを言えばいいというのか。

「・・・じゃあ質問を変えよう。お前の思っている尸魂界と、今の尸魂界。違うところは?」
「それは、質問も交えて言っていいのか?」
「ああ」

此処と、いつもの尸魂界との違い・・・それは、

「やっぱり、見た目?」
「それではわからん。お前らは何をしていた?」

反逆した、藍染惣右介。

「破面や、十刃との戦い・・・」
「・・・つまり。その時代からお前は来たわけだ」
「時代?」
「これは確信といっていいだろう。お前はこの時代より、10年前から来たんだ」
「なっ・・・!!」

その言葉に一護は身を乗り出す。

「どういうことだよ!!10年前って!!つまりこの世界は俺の居た時代から、10年後ってことかよ!!」

一護の「つまり」がただ逆にしただけなことに、日番谷は呆れる。

「つまりもなにもねぇだろ・・・まぁいい。とにかく、そういうことだ。・・・どおりでおかしいと思っていた。俺の知っている最近のお前より、ずっと若かったからな」
「そんな・・・」

一護は失望したように座り込む。未来の世界など、帰り方がわからないし、何より未来がこんなことになっているなんて・・・

「・・・どうやってこの時代に来た?」

しばらくして、日番谷が訊いてきた。

「浦原さんの穿界門から・・・」

一護は顔を上げずに、言った。

「では、その穿開門に誰かが何かを仕掛けたんだろう。浦原がそんなことをするとは思えんし・・・」

そこで一護は、ハッとする。

「そうだ!浦原さん!この時代に居るか!?」
「居ることには居るが・・・」

一護のあまりの剣幕に、少し身を引きながら答える。

「だが、今現世には行けないぞ」
「なんでだよ!?」

日番谷にさらに詰め寄る一護。その頭を片手で押し戻しながら日番谷は言う。

「穿界門が破壊されている。あれを直せるのは涅か総隊長だけだ」
「そんな・・・!」

見えかけた希望が失われてしまい、さらに落ち込んだ一護を、日番谷は呆れて見つめる。

(しかし・・・こいつはあのときと何も変わってねぇな)

そう思う日番谷だったが、変わらないその姿に、疲れていた心が少し軽くなった。

「そういえば、一体この10年間で何があったんだ?」

ようやく復活した一護が話を元に戻す。

「ああ、そうだったな」

日番谷は記憶の中に閉じ込めていた、辛い記憶を話し始めた。

「あれは・・・藍染を倒した後のことだった・・・お前のいるときから、藍染を倒すまでそんなにかからなかった。それからの平和な時間は5年しかなかった」
「藍染を倒したのはそんなに早かったのか!!?」

その言葉に一護がすばやく反応する。

「ああ。全隊長が戦いに出たんだ。勝てないわけがない」
「・・・すごい自身だな」

日番谷はこんな性格だったっけ、と少し引く一護。

「お前も居たしな」

そんな一護を気にもせず、ボソッと言う。日番谷に少し引いていた一護は聞き取れなかった。

「えっ!?冬獅郎今なんて言ったんだ?」
「それからある事件が起きたんだ」

普通にスルーされる。

「冬獅郎~(涙)」

そんな一護を見事に無視して、話を進める。

「隊士が一人、行方不明になってな」
「酔っ払ってどっか行っちまったんじゃねえのか?」
「馬鹿かてめぇ。もしそうだったら、この俺が直々にそいつを殺してやる。それはどうでもいい事なんだが・・・。とにかく目撃者が居るんだ。『突然ふっと消えてしまった』とな」
「・・・どういうことなんだ?」

日番谷の冗談に聞こえないその発言に怯えながら、一護は訊く。

「・・・奴だ」

そう言う日番谷の顔は、怒りと悲しみに満ち溢れていた。

「奴が現れたんだ・・・」
「『奴』って・・・?」

日番谷は下げていた顔を上げる。

「この事件の首謀者だ。あいつのせいで・・・お前も・・・」
「俺が、なんだよ?」
「・・・・・・こんなこと言うべきではないと思うが・・・お前は、今から3年前に―――死んだ」
「えっ・・・!?」

日番谷は今、なんと言った?自分が、死んだ・・・?

「冬獅郎・・・何言って・・・!?」
「奴に殺された。お前が一番危険人物だと」
「そんな・・・!」

一護は地面に手をついた。
もしかしたら、後数年で自分は死ぬかもしれないという不安に。

そんな一護を見据えて、言いづらそうにしながら日番谷は続ける。

「・・・魂魄の状態で殺された。人間の身体に入ったままなら、尸魂界にいくことが出来る。だが魂魄の状態では・・・」
「・・・」
「お前が殺られるほどの強さだ。隊長格以下の死神たちは当然のように姿を消した。そして日に日に数は減っていき、ついに俺一人になった」
「・・・ルキアは?」

重々しく口を開き、訊ねる。まさか、ルキアまで・・・

「朽木ルキアは、隊長格以下の中で、一番最後まで残った。朽木隊長や阿散井が必死で護っていたからな」
「・・・そうか」

やはり・・・ルキアも・・・

「それから、俺とお前と始めて会ったときのことだが、俺がお前が過去から来たことを知ったのは、傷だ」
「傷?」
「ああ」

そう言うと、日番谷は懐から写真を取り出し、一護に見せる。

「藍染との戦いで、お前は胸に大きな傷を負ったんだ」

その写真には、真ん中に日番谷の言ったとおり、胸に大傷がある未来の一護。その右隣にルキア、左隣には恋次がいる。その他にも、日番谷、白哉、夜一、乱菊、やちる、一角、弓親、更木、浮竹、京楽、七緒、檜佐木、吉良、砕蜂、卯ノ花、元柳斎など、隊長格や上位席官が映っている。

「草鹿の案でな。誰も断れなかったんだ」

日番谷は苦笑いしながら言った。
それでも、写真の中の死神たちは現実とは裏腹に、幸せそうに映っている。

「また、こんな日が来るといいがな・・・」

「お前は死んでるから無理だけどな」と、苦笑いしながら、寂しそうに日番谷はつぶやいた。
手に持っている、翡翠色の玉を見ながら。

「冬獅郎、それ、なんだ?」

一護は日番谷の寂しそうな顔が見たくなくて、話題を変えようと、翡翠色の玉を指して言った。

「ん?これか?」

「ほらよ」と渡してくれたその玉を受け取ると、現世では普通にどこでも売っている、ただのビー球だった。

「俺の大切な奴が無理やり渡してきてよ」

そういう日番谷の顔は、とても穏やかだった。

「へ~え」

日番谷の大切な奴とは誰だろうと考える一護。

日番谷が大切に思って居る人・・・
五番隊の副隊長。確か日番谷と幼馴染だと聞いた。可能性は高い。
副隊長の乱菊。日番谷の話を聞くと、いつも日番谷は怒っている。可能性は・・・たぶん低い。
あとは、浮竹や京楽・・・って、何を考えているのかと一護は頭を抱えた。

「お・・・お前、大丈夫か?」

さっきから唸りまくっている一護を見て、日番谷は少し引いていた。

「え!?あ、ああ!」
「本当に大丈夫か・・・?」
「大丈夫だって!!」
「そうか・・・」

未だに日番谷は引いている。そのことが恥ずかしくて一護は必死で話題を変える。

「そ、そういえば!恋次は!?恋次はなんで襲ってきたんだ!?」
「ああ、そのことか・・・」

引いていた日番谷も真剣な顔になる。

「あの阿散井は偽者だ」
「偽者!?」
「ああ。『クローン』というものを知っているか?」

クローン。
一つの細胞または個体から、受精の過程を経ず、細胞分裂を繰り返すことによって生ずる細胞群または個体。全く同一の遺伝子構成をもつ。(YAHOO!辞書)

「ああ、知ってるぜ」
「あの阿散井はその『クローン』なんだ」
「なんだって!?」

通りでおかしいと思った。いつもの恋次とは違うし、日番谷に襲い掛かるし。
しかし、まだ一護には疑問がある。

「どうやったら、それはわかるんだよ?」

一護の疑問に日番谷は間を置かずに答える。

「本物と「クローン」の見分け方は、そいつが口を開くか開かないかだ」
「声を上げないのか?」
「ああ。「クローン」は言葉を発することはできない」

それなら話がつながる。
日番谷が一護を苦しげに見つめた後襲ってきた理由と、恋次と日番谷が戦っていた理由が。

一護は「そうだったのか・・・」とつぶやきながら俯く。まさかこんなことになっているなんて・・・。
日番谷はそんな一護を見て「そんなに思いつめるな」と励ます。

一護は頷きながらも、内心は複雑だった。日番谷をこのまま一人にしておくわけにはいかない。しかし自分が手伝うとしても、偽者とはいえ同じ顔の仲間たちと戦えるかという不安。

一護がどうするか悩んでいると、日番谷がいつの間にか用意したのか、布団が二枚敷かれていた。
日番谷はそこに胡坐をかいて座ると一護に尋ねる。

「お前、これからどうるんだ?」
「どうって・・・お前と一緒に皆を助けに行くに決まってんだろ」
「・・・はぁ?」

一護が断言して答えると、日番谷から不満な声が返ってきた。

「お前何言ってんだ?」
「だから、お前と一緒に行くって」
「・・・」

さも当然のように言うと日番谷は黙ってしまった。やはり迷惑だったか?と一護は思い、焦っていると日番谷は突然声を抑えながら笑い出した。

「お前っ・・・本っ当に変わってねぇな!」
「何がだよ!!」

いきなり笑われて不機嫌になる一護。それでも日番谷は笑うのをやめない。
しかし、日番谷がここまで笑っているのを初めて見た一護であった。

「あ~、久々にこんなに笑ったな」

日番谷はようやく笑うのを止めると、一護に向き直る。その表情は真剣だ。

「お前・・・帰らなくていいのか?」

いきなり真剣な表情を向けられて、たじろいだ一護だったが、気を取り直して言う。

「確かに帰る方法も探さなきゃいけない。けど、お前たちのことも放っておけないしな!それに、このまま皆を放っておく訳にはいかねぇしな!」

変える方法を知っているかもしれない浦原に会うにも、現世に向かう穿界門が開かないと意味がない。その穿界門を直すすべを知っているのは、十二番隊の涅マユリか総隊長しか知らないと日番谷は言った。つまり、この事件が解決しないと一護はもとの世界には帰れないのだ。

「確かにそうだな・・・。だが、お前にあいつらを殺れる自身はあるのか?」
「そ、それは・・・」

昔、ルキアの記憶が消えて、自身の記憶もなくなった死神たちと戦り合うことはあった。だがそれは、「殺す」ではなく、「記憶を取り戻す」だけだったのだ。今回は、中身は違うが見た目は同じ死神たち、仲間を「殺さなくては」ならない。日番谷はこれをずっとしていたのだ。

一護はそのことを思うと、日番谷の今までの苦労は、かつて孤独に戦っていた一護には比べ物にならないと思った。一護は意を決して顔を上げる。これ以上日番谷を独りにしてはいけない。

「確かに、いくらクローンでも見かけは同じあいつらを殺すというのは躊躇う。けど、それでも、戦らなくちゃいけない。本物のあいつらはまだ生きているんだろ?だったら、俺たちが助けるほかに方法は無ぇからな!」

日番谷はその言葉を聞いて、驚きに目を見開く。それと同時に殺意が芽生えた。

自分でさえ、この壁を乗り切るのに2年はかかったというのに、この男は明日からこれを乗り切るというのか。それとも、簡単なことだと言っているのか。

「どうした?冬獅郎」
「・・・口先だけだったら、殺す」

「そんな簡単にいくものじゃない」という意味の殺気を込めて、日番谷は一護を睨む。一護は一瞬ひるんだが、真剣な表情になり、日番谷を見つめる。

「そんな訳ねぇだろ。お前、一人で長く居るうちに俺の性格忘れちまったのか?」
「・・・」

そうだ。この男、黒崎一護とはそういう人間だ。仲間が傷つくものなら、誰にだろうと容赦しない。傷ついた人物を護り通すまで、この男は前進をやめない。

日番谷は深くため息をすると、呆れた表情で一護を見る。

「はぁ~・・・わかったよ。相変わらずだな、お前は」
「さっきも聞いたよ」

一護はニッと笑う。そして日番谷同様、敷かれたもう一つの布団に胡坐をかく。

それから日番谷にクローンの弱点について聞かされた。

———先ほども言ったとおり、特徴は言葉を発しないこと。
———弱点は頭を切り落とすこと。
———脳が核なので、脳と胴体を切り離すか、頭を完全に潰すこと。

それが奴らの弱点だった。

そこまで聞いた一護は、げんなりと頭を垂れる。

「なにも、そこまでグロテスクな殺し方しなくても・・・」
「文句を言うな。お前が言ったことはこういうことなんだ」

恋次のクローンのときもそうだが、日番谷は今までどれくらいこの殺し方をしてきたんだと一護は思った。

「それとも、皆を助けることはやめるか?いいんだぞ、そこらへんで指を銜えて見ていても」
「なっ!!!」

こいつこんな性格だったか!?と改めて思う一護だった。

「んな訳ねぇだろ!!やるっつったら、やるんだよ!!」

必死に言う一護に日番谷は鼻で笑う。

「フッ。どうだか」
「てめぇ・・・!!」

一護は怒りで拳を振るわせる。日番谷はそんな一護を気にもせず、さっさと布団の中に潜ってしまった。

「あっ!コラッ!!」
「ゴチャゴチャうるせぇぞ黒崎。夜はあいつらは動かない。明日のためにちゃんと寝とけ。朝は早いぞ」

一護は明日のことを許してくれた日番谷に驚きながらも、しぶしぶ布団に入る。だが、そこでハッと気づき疑問を口にする。

「『夜は動かない』ってどういうことだよ?」
「・・・子供は寝る時間だ」
「お前・・・!!」

見た目はお前のほうが子供だろう、と言いかけた一護に体を向けて日番谷は言う。

「お前のことじゃない。首謀者のことだ」
「へっ!?それってどういう・・・」
「それは明日説明する。いいから寝ろ」

そう言うと目を閉じる。それっきり、日番谷は口を開かなかった。
どういうことか気になった一護だったが、これ以上聞いても無駄だと思い、ゆっくりと瞼を下ろした。




***





双殛の丘の地下。

あちこちでジャラリと鎖の音がする。そこには、瀞霊廷に居た死神たちが、頑丈な鎖に繋がれていた。もちろんその中には、隊長格の姿もある。
「クローン」の元になっていた恋次も。

「くそっ!やっぱりとれそうにねぇな・・・」

恋次が何度も鎖を解こうと、引っ張っていたが取れる気配は一向にない。繋がれている手首からは、血がポタポタと鎖を伝って地面に落ちていた。

「恋次。そんなに暴れると体力が持たないわよ。少し休みなさい」

そう呆れながら言ったのは乱菊だ。
普段、女性の魅力を放っている乱菊だが、鎖に繋がれているその姿は、ひどく痛々しい。

「しかし、早くここを出ないと日番谷隊長が・・・」

遠慮がちに言ったのはルキアだった。彼女もそう言っている分、ずいぶんがんばったのだろう。手首の赤い跡が、彼女の白い肌を遠慮なく傷つけていた。

「日番谷隊長は大丈夫だろうか・・・」

そう言ったのは、いつも吐血している浮竹。鎖に繋がれている間も具合が悪くなったのか、その足元には血がべっとりとついていた。

「ここにきていないところを見ると、まだ捕まっていないようだね」

そう言ったのは、いつも暢気な京楽だった。普段着ている女物の着物は着ていないところを見ると、「クローン」から逃げている間に脱いだのだろう。

「なんか、日番谷隊長は「捕まえる」じゃなくて、「追い詰める」って感じがするんっスけど・・・」

乱菊に言われ、鎖を解くことを諦めた恋次が言う。ルキアが「それはどういうことだ?」と聞こうと口を開いたとき、光が一切なかったその部屋に、一筋の光が差し込む。
その部屋の無駄に広い扉が開いたのだった。

皆が「日番谷が捕まったのか!?」と息を呑んでじっと扉を見ていると、その部屋にずいぶんと暢気な声が響いた。

「ずいぶん余裕だねぇ!また、新しい「人形」をつくっちゃおうかなぁ?」

それはずいぶんと幼い声だった。
それでも、捕まった死神達は警戒を緩めない。

逆光で顔は見えないが、幼い声やシルエットから、幼いということはわかる。
そう。この幼い少年こそが、今回の首謀者だった。

「も~う。みんなテンション低いな~。前にも言ったでしょ。貴方たちは彼を追い詰めるただの道具。痛いことはしないよ。ただちょ~っと霊力をもらうだけで」

少年は捕まっている死神たちの周りをゆっくりと回りながら話す。

「・・・日番谷隊長に何をしている?」

浮竹は見えないその顔を睨みながら問う。
すると少年は、浮竹の後ろまで歩み寄り、その耳元まで顔を近づける。

「ヒ・ミ・ツ♪」

そう言うと、少年はスキップで、また死神たちの周りを楽しそうに回りはじめる。

「ふざけるな!」

浮竹にしては珍しく、その少年を怒鳴る。少年はその声に臆することもなく、ただ捕まった死神たちの周りをうろちょろするだけだった。

「そんな大声出さないでよ。みんな疲れきってるんだから」

その言葉とは裏腹に、心配している素振りも見せず、呆れて立ち止まる。

囚われた死神たちは、そんな彼を、ただ睨むことしか出来なかった。少年は、その視線を無視して決して見えぬ空を仰ぐ。

「もう少しで・・・僕の望みが叶うんだ・・・もう少しで・・・」

そういう少年の顔は、真剣だった。






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イイネ!