これ以上彼を苦しめないで・・・
「貴様・・・!」
「なにか・・・冬獅郎の居そうな所ねぇかな?」
「僕の言ったこと、わからなかった?」
.
「うわ!なんだよこれ!?」
無事、无双旱に着いた一護達だったが、その光景に思わず声が出た。
そこは地獄のような世界。ただ赤い火が細かくあるだけ。こちらに来いと導かれるように。
「ここは・・・気が狂いそうだ・・・!」
ルキアが苦々しくつぶやく。
「まさかここまでとはな・・・」
恋次も予想外、とつぶやく。
「ここのどこかに冬獅郎が・・・」
一護が一歩踏み出そうと足を進めたそのとき。
ズドーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
突然地響きが起きた。
「うわぁ!!」
一護はバランスを崩しそうになる。
「うわはははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そして物凄い声量な笑い声。これの正体は・・・
「剣八!!!」
更木だった。
だが一護の声は聞こえていなかったのかそのまま通り越してどこかへ行ってしまった。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・行こう」
「「ああ」」
もう行くしかなかった。だが、
「そうはいかないぜ!!!」
そう声が聞こえると、火の玉が四人のほうへ飛んでくる。
それを一護たちは瞬歩で避ける。
飛んできたほうを見ると、そこには怤璽火が浮いていた。
「貴様・・・!」
「お嬢さん。あんた俺に会うたびに「貴様」って言うのやめてくれる?言われるこっちの身にもなってくれよ」
怤璽火が呆れて言う。
「あ!でも、俺の名前知らないからしょうがないんだよな!」
そういうと怤璽火は地面に降り立った。
「俺の名は怤璽火。灼熱の怤璽火。よろしくな!」
そう言うのと同時に怤璽火はルキア目掛けて火球を投げる。
ルキアはそれを間一髪でかわす。日番谷の病室に居たときよりも、現世で会ったときよりも、遥かに強い。
「ルキア!!」
一護が慌てて駆け寄ろうとする。
「てめぇはすっこんでろ!!!!」
怤璽火は自分とルキアの半径10mほどした所に火の壁を張る。
「てめ「一護!!」
一護の言葉を遮り、ルキアが叫ぶ。
「作戦の内容を忘れたのか!?こやつの相手は私がする!!貴様は日番谷隊長を助けに行け!!」
「っ!!」
一護は我に返りルキアを見つめる。
「案ずるな。こやつの炎より、わたしの袖白雪のほうが強い!」
ルキアは一護を少しだけ振り向き言う。
一護はそんなルキアを少し見つめた後、
「わかった」
と言い、一気に走り出した。恋次と白哉もそれに続く。
怤璽火は逃げた一護たちを気にもせず、ルキアに問う。
「お嬢さん。名前は?」
ルキアは一泊おいて言う。
「・・・朽木ルキアだ」
「そうか、ルキアぁ。仲良くしようぜぇ!」
そう言うと、怤璽火は霊圧を上げる。
「悪いがそれは断らせてもらう!」
同じくルキアも霊圧を上げる。
.
一方、怤璽火をルキアに任せた一護たちはとにかく走っていた。
「なにか・・・冬獅郎が居そうなところねぇかな?」
一護は辺りを見回す。
「敵は大体目立つところに居るのがお決まりだよな」
恋次が自信を持って言う。
「けど、冬獅郎がそこに居るかはわかんねぇぞ?」
「いや。日番谷隊長は絶対あの偽理吉のところに居る!」
一護は聞き覚えのない名前に眉を顰める。
「『偽理吉』って誰だ?」
「偽理吉ってのは俺を斬った奴で「ちょっと待て!!」
そう言って一護は立ち止まる。
恋次もそれにつられて立ち止まる。
「なんだ「偽ってどういうことだよ!!」
またもや恋次の言葉を遮って問う。
「どういうことって、どうもこうも偽は偽だよ。あいつは相手の記憶にある人物を真似することが出来るらしい」
恋次が一護の剣幕に押されて言う。
「なんでそれを早く言わなかった!?」
一護はまだ怒っている。
「はぁ!?何で俺がそんなこ「そろそろいい?」
突然聞こえてきたその声に二人とも振り向く。白哉は気づいていたようだ。
振り向いた先に居たのは、瓦礫の上に座っている、傍から見れば無邪気な子供のように足をぶらぶらさせている草水の姿だった。
「こんにちは!!」
草水は元気よくそう挨拶をすると、スタッと瓦礫の上から降りた。
「まさかここまで追いかけてくるとは・・・感心だよ」
そのまま一護達のほうへにこりと笑いながら、一歩一歩近づいてくる。
「助けにきたら、死ぬって言ってあげたのに・・・」
そう言って立ち止まる。
「・・・僕の言ったこと、わからなかった!?」
ルキアのときと同じように、一気に霊圧が上がる。
そのとき一護たちから、一人の死神が消えた。
「何?」
キンッ!!
白哉だった。
白哉の斬魄刀を、草水の足元から出た茎が受け止める。
「・・・あのさぁ、礼儀ってもんを知らないの?おじさん」
草水は不意打ち的な行為に相当怒っているようだった。
「白哉!!」
「隊長!!」
一護と恋次が白哉を呼ぶ。
「貴様らは先に行け」
白哉は静かに言う。
「それは困ります」
今度は一護たちの後ろから声が聞こえた。
「貴方たちに丯闇のお相手など、百万年早いですよ」
静かに音も立てずに近づいてきたのは風浪仝だった。
「それに、日番谷様を助けに行ったところでもう手遅れ。今のうちに帰れば見逃しますよ」
「どういうことだ!?」
一護が風浪仝に怒鳴る。
「聞こえませんでしたか?耳が悪いのですね」
風浪仝はそう言うと姿を消した。
「っ!!」
一護は風浪仝の拳を斬月で受け止める。
その強度はあまりにも強かった。
「弱いですね。こんなので本当に日番谷隊長を助けに行くつもりですか?」
「てめぇ「弱いかどうかは、戦ってから決めるもんだぜ!!」
その声が聞こえた瞬間一護は狒狒王蛇尾丸に乗っていた。
風浪仝はその様子を黙って見ている。
「恋次!!」
一護は蛇尾丸から降りながら恋次を見る。
「行け!!一護!!ここは俺が相手をする。もともとそういう作戦だろ!!日番谷隊長を助けて来い!!」
「恋次・・・。おう!!!」
一護はそう言うと一気に走り出す。
それを見送った恋次は卍解を解いて、風浪仝を見る。
「さて、じゃあ始めましょうか?」
風浪仝は淡々と言う。
「っへ!そうやって余裕かましてんのも今のうちだぜ!」
そう言って恋次は蛇尾丸を構える。
怤璽火をルキアに、草水を白哉に、風浪仝を恋次に任せた一護は、日番谷を助けるため、丯闇を倒すためにひたすら走っていた。先へ進んでも景色は一向に変わらない。
だがしばらく走っていると、光の数が少なくなっていった。
一護は少しずつ回りが暗くなりつつも、日番谷を助けるために走り続けた。
だがそのとき辺りに少し変化が訪れた。
「・・・?」
何か聞こえたような気がする。
『・・・』
また。
『・・・ろ』
何か言っている。
『・・・ろ・・・き』
誰が、何を言っているんだ?
『に・・・ろ!・・・さき!』
もう少しで完全に聞こえそうなのに。
『逃げろ!黒崎!』
「冬獅郎!?」
聞こえた!冬獅郎の声だ!!
「冬獅郎!どこに居るんだ!?」
『黒崎!こっちに来るな!!』
日番谷はただそれだけを言うだけ。
「冬獅郎!?どういうことだよ!!」
「黒崎!!逃げろ!!」
今まではスピーカーのような声の日番谷だったが、いきなりはっきり聞こえた。それはもうすぐ近くに居るような・・・
ガンッ!!!
日番谷が一護に攻撃してきたのだ。
すぐ近くに居るようなではなく、本当に近くに来ていたのだ。
「冬獅郎!?何を!?」
一護は驚きで声が震える。
「黒崎!俺のことはどうしても良い!早くこの世界から逃げろ!!」
日番谷は言ってることとやってることがめちゃくちゃだ。
わけがわからない一護は、ただその攻撃を受け流すことしか出来なかった。