これ以上彼を苦しめないで・・・ 






「頼むぜ!恋次!!」

「既に異世界へ進入している」

「感情を破壊?」



.


尸魂界・六番隊執務室。
そこには一護、ルキア、恋次、白哉が居る。更木は「面倒だ」と言って今は居ない。
「日番谷隊長が居るのは異世界无双旱。一瞬でも現れた霊圧を技術開発局が徹底的に調べたらしい。浮竹隊長がお前ら二人が消えたとき、すぐに連絡してくれたから発見できたそうだ」
恋次が今まであったことを説明する。
「その異世界ってのはどうやって入るんだ?」
「お前は少し待てねぇのかよ」
一護が話を急かすので、恋次が呆れて言う。
「待てねぇさ!!冬獅郎が危ない目にあってるかもしれないってのに、待てるわけねぇだろ!!」
そんな恋次に一護が怒鳴る。
「俺は少し落ち着けって言ってんだ!感情だけでぶつかっても、今回の敵は普通には勝てねぇんだ!」
「っ・・・どういうことだよ?」
いつになく真剣な恋次に一護がたじろぐ。
「あいつらはただの魂魄じゃないんだ。もちろん人間でもない。虚でもない・・・」
「じゃあどうやって倒すんだよ?」


「・・・无双旱は感情の中で一番高い感情が強く現れる場所なんだ。怒りの感情が高いなら、それは怒りの感情しか持たない「物」。悲しみの感情が一番高い感情なら悲しみの感情しか持たない「物」にしかならないんだ。「物」は斬っても死なない。もともと生きてはいない。だから困るんだ」
どうしようもない事にその場に沈黙が流れる。
沈黙を破ったのはルキアだった。
「・・・しかし、元はちゃんとした感情を待っているのだろう?」
「あ、ああ」
「ならば、元の感情に戻すことはできんのか?」
「・・・」
また沈黙が流れる。今度は倒す方法が見つかったかもしれないから。
「よし!!その方法を調べてみよう!!」
「頼むぜ!恋次!!」
「おう!!」
そう言って恋次は執務室を出て行った。
ルキアはいきなりのことでついていけていない。




「な、何が起きたのだ?」
隣居る一護に訊く。
「お前、自分で案を出しておきながらわかないのか?」
「いや、しかしそれはあくまでも推測「それでもだ」
一護がルキアの言葉を遮って言う。
「それでも、可能性があるなら調べる。そうでもしねぇと冬獅郎を助けらんねぇ。だろ?」
「一護・・・」
「だから、この件については恋次が調べてくれるから、俺たちは俺たちのできることをしよう」
「ああ!」
いきなり立派になった一護に驚きながらも強くうなずくルキア。
「よし!で、なにするんだ?」
「・・・」
一護の言葉にその場に沈黙が流れる。
「おい?」
「一護・・・貴様・・・!」
ルキアが俯きながら、体を怒りで震わせながら言う。
そのオーラを感じ取ったのか、一護が一歩下がる。





「な、なんだよ?」
「たわけ!!なぜ貴様はそんなに馬鹿なのだ!!」
ルキアはすごい形相で怒り出す。
「貴様が自分たちのできることをしようというのだから私たちは貴様の意見を待っていたのだぞ!!それが「何をするんだ?」とは!!貴様ふざけているのか!!」
「私たち」というのは、さっきから一言も喋っていない白哉も入っているから。
「ふ、ふざけてねえよ!俺はお前らの意見を訊こうと・・・」
「自分で考えてから訊け!!」
一向に終わらない二人の言い合い。そこに今まで喋らなかった白哉が言う。
「そろそろいいか?」
たったそれだけ。それでも、二人に言葉では言い表せないオーラを感じさせるには十分だった。
「「ハイ・・・」」
そのあと数分間は沈黙が続いたという。



.

「で、結局どうするよ」
あのあと、なんとか話を切り出し話を進めていた。実際は進めていないのだけど。
「そうだな・・・兄様はどう思いますか?」
ルキアはなるべく白哉に話を振るようにした。
「・・・敵の能力はわかっているのか?」
「いえ、ただわたしたちの前に現れた四人が主に動いていると思います」
「そうか・・・」
白哉はそのまま指を顎に当てて考える。
話はまだまだ長くなりそうだ。

一方、十二番隊技術開発局に来ていた恋次はここに来てしまったことを後悔していた。
(くそ~、何でノリで来ちまったんだ!?よりによって此処に!!)
変わり者が集まる十二番隊。否、技術開発局。
しかし此処に来るしか方法がわからないのだ。仕方ない。
(くそ~)
やはり入るのは心の準備が要る。よし!入ろう!とした恋次の後ろに、
「どうしましたか?」
十二番隊副隊長涅ネムが立っていた。


「うわぁああああああ!!!!!!」
恋次はいきなり声をかけられたことにびっくりして大げさなほどに飛び上がる。
しかしすぐに我に返り、
「あ、すいません」
と誤る。
「いえ」
ネムもまったく気にしていないようだ。
「・・・」
「・・・」
(気まずい!!)
恋次は何て言ったら良いのか分からず黙っているのだが、ネムも何を考えているのか、ずっと黙っている。
「・・・あの!」
ついに我慢できず話しかける。
「はい」
いつもの無表情でネムが返す。
「涅隊長か阿近さん・・・いや!できれば阿近さんいますか?」
「どちらもいらっしゃいますが」
「阿近さんに合わせてください!」
恋次は必死に言う。
「わかりました」
そう言うとネムは隊舎に入っていく。
(ふぅ・・・怖えぇ)
恋次はとても苦労していた。







「ではこんなもので良いか」
恋次が苦労している間にルキアたちの作戦は終わってしまった。
「ああ、じゃあ確認しよう」
一護がメモっていた(ルキアにメモらされていた)紙を取り出す。
「異世界に進入したら、とにかく冬獅郎の居そうな場所を探し、突撃する。そしたら俺たちが会った、赤い髪と、緑と青の髪と、紫の髪の奴を、ルキア、恋次、白哉が分担して倒す。あの白い奴はボスっぽいから俺が倒す。能力がわからないから、それまでは共に行動する。これでいいか。剣八は勝手に行動するだろ」
一護は更木のことは諦めているようだ。しかし問題が。
「しかし、更木隊長が勝手に行動すると、私たちの作戦にも影響が・・・」
「そのことなら問題ない」
白哉が落ち着いた口調で言う。
「すでに異世界へ進入している」
「なに!?」
一護が声を上げる。

「うわはははははは!!!!!!」
雑魚を斬りながら笑う更木。
本当に更木は无双旱にいた。

「あいつ・・・!」
一護は額を押さえてうな垂れる。
「仕方ない。では恋次に報告を・・・「もどったぜ~・・・」


ルキアの声を遮って執務室に入ってきたのは、恋次だった。
「恋次、どうだった?」
ルキアが頼んでいた件を訊く。
「ああ、あいつらは元々は魂魄らしい。反応しなかったのはその感情の強さに機械が負けていたそうなんだ。だから人間なのか、虚なのか、魂魄なのかがわからなかった・・・。无双旱はその魂魄の一番感情が高いものが強く現れる場所。その効き目はほぼ100%。あの場所にしばらく居ると、自分の一番強い感情に自分が負けて、新たな「物」が完成する。そして奴らはもう魂魄ではなくなる。しかし、感情を破壊してやるんだ。そうすれば奴らは消える」
「感情を破壊?」
一護が訊く。
「ああ、あいつらが日番谷隊長にしたようにな」
「・・・」
一護はそこで黙る。
まだあのときのことを引きずっているらしい。
「・・・時間だ」
今まで喋らなかった白哉が言う。
「行くぞ」
その声と共に皆の顔が引き締まる。






浦原商店。
无双旱に入るにはここしか入り口がなかった。
「頼むよ、浦原さん」
一護が浦原に言う。
「おっまかせください!いきますよ!」
そう言うと浦原は地面に手をつき何かぼそぼそと言う。すると空間に四角く亀裂が入る。
「これが異世界への入り口っス。皆さん、くれぐれも、「日番谷隊長を助け出す」ことだけを考えてください」
「わかってるよ!」
一護が真剣な眼で言う。
「覚悟は出来てますね?」
「「「おう!!!」」」
恋次、ルキア、一護がそろえて言った瞬間、四人の体は光に包まれ、消えていった。
いよいよ、丯闇達との最後の戦いが始まる。



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イイネ!