これ以上彼を苦しめないで・・・ 







「死ね。黒崎一護」

「貴様ら、日番谷隊長に何をした!?」

「必ずお前を護るってな!!!」



.


一護の声に怤璽火が反応する。
「ん?・・・なんだ、あんときの馬鹿か」
興味無しと言った風に、フイッと視線を外す。
「誰が馬鹿だ!!」
「そろそろいい?もう飽きてきたんだけど・・・」
剥きになって言い返す一護に、草水が呆れて言う。
「ああ、いいぜ」
日番谷が乱れた死魄装を直しながら言う。
先ほどからの日番谷の言葉を聞いていると、彼らの仲間のようで一護とルキアは不安になる。だが、その不安を確信付けるように、草水がにこやかな笑顔で二人に言う。
「君たちはもう違和感を感じているはずだけど、彼、冬獅郎君は、僕らの仲間になりました!!」
草水が日番谷を指しながら言う。
「な・・・んだと・・・?」
「まさか・・・!」
一護とルキアが呆然とつぶやく。




「何度言わせりゃわかるんだよ!!お前ら本当に馬鹿だな・・・日番谷は俺らの仲間なんだよ!!つまりお前らの敵!!そんでもって今日はお前らを殺しに来たってわけだ!!でも日番谷の希望あって、そっちの譲ちゃんは殺さないってことになった!譲ちゃん、日番谷に感謝しな!!」
一護とルキアに指を指しながら璽火が言う。
「そして、現世に来た理由は、尸魂界だといろいろ面倒だから」
その次に、付け足すようにして草水が言う。
「というわけだ。死ね、黒埼一護」
日番谷が背中に背負ってる氷輪丸を鞘から抜きながら言う。そしてそのまま切っ先を一護へ向ける。
「と・・・冬獅郎・・・何言って・・・っ!」
一護は絶望した瞳で日番谷を見る。
日番谷の瞳はすでに一護を殺すという眼になっていた。
「いくぞ」
そう言った瞬間、日番谷の姿が消えた。瞬歩だ。


キンッ!!
一護は間一髪でその一撃を防ぐ。
「お前も俺を殺すつもりで来い」
そう言うと日番谷は一護から距離をとる。
一護は必死で日番谷を止める。
「冬獅郎!!何考えてんだ!!お前は草冠の件で万全じゃねぇんだぞ!!」
「草冠か・・・確かに面倒な件だったな・・・だが」
氷輪丸を構えなおす。
「俺にはもう、関係ない。怤璽火達の仲間になった俺にはな!」
そう言うと日番谷は一護に斬りかかる。
「くっ・・・!」
一護は日番谷に攻撃を加えることができず、受け流すだけだった。

そのころルキアは草水と怤璽火に詰め寄っていた。
「貴様ら、日番谷隊長に何をした!?」
「ひゅ~、やってんなぁ日番谷のやつ」
怤璽火はルキアを無視して日番谷と一護の戦いを見ている。
「何とか言「したと言えばしたけど、してないと言えばしてないよ」
怒り出したルキアの言葉を遮って、草水がにこやかに言う。




「彼の精神は限界に達していた。だから僕たちがそれを助けたんだ。ただそれだけだよ」
「では何故日番谷隊長は一護を殺そうとするのだ!?」
ルキアは体を怤璽火から草水に向ける。
「・・・それは言えないな」
「何故だ!?」
「・・・言えないって、言ってるでしょ?わからない人だなぁ・・・!!」
草水は無表情で言うと同時に、ものすごい霊圧が流れ出す。
「くっ・・・!」
ものすごい霊圧に、ルキアは吹き飛ばされそうになる。
「怒るなよ、草水。そいつが馬鹿なだけだ」
今も日番谷と一護の戦いを傍観している怤璽火が言う。
「・・・そうだね」
そう言うと、草水の霊圧が瞬時に消えた。
(なんという霊圧だ・・・!こやつらは、一体・・・!?)
ルキアは隊長格ほどある草水の霊圧に驚愕していた。


そのころ一護と日番谷は、長期戦が続いていた。
「冬獅郎!!いいかげん眼ぇ覚ませ!!」
「何の話だ!!」
一護は日番谷の眼を覚まそうとしながら、攻撃を与えずに戦っている。そろそろ限界が来ていそうだ。
「そうか・・・これだけ言っても俺の殺意がわからないか・・・ならばっ!」
そう言うと日番谷は高く飛ぶ。
「霜天に坐せ、氷輪丸!!」
「―――っ!!」
氷の竜が一護目掛けて襲ってくる。
「月牙天衝!!」
一護はそれを斬撃で迎え撃つ。
氷の竜と斬撃はぶつかった途端、大きな爆発を起こした。
日番谷は爆発が少々収まってから、剣を構える体制を崩さずに地面に足をつく。
「さすがだな。やればできるじゃねぇか」
日番谷はニヤリと口角を上げて言う。
一護は何も言わない。
「ようやくできたか?俺を殺す覚悟が」
「・・・冬獅郎」
一護はしばらく間をおいて言う。
「お前に何があったのかはわからねぇ。でも、それでも俺は、お前を傷つけたくない。俺はあの時・・・」





 日番谷は一護にぶつかって行く。
 『冬獅郎!』
 一護が呼ぶと日番谷の瞳が、ふっと、泣きそうにゆがむ。
 『頼む・・・!』
 祈りのように、
 懺悔のように、
 やっと聞き取れるくらいのかすかな声で、言った。


「あの時、お前が『頼む』って言ったとき、俺は俺の魂に誓ったんだ・・・必ず、必ず・・・お前を護るってな!!!!!!」
その言葉に日番谷がたじろく。
「っ!何言ってんだっ!俺とお前は敵同「違う!仲間だ!」
日番谷の言葉を遮って言う。
「俺たちは、俺は・・・お前の仲間だ!!!眼を覚ませ!冬獅郎!!!」
日番谷の閉ざした心に、一護の声が響いた。




(なか・・・ま・・・?)
一護の言葉で日番谷は混乱していた。
(何故?こいつは、敵だろ・・・?何で『仲間』なんて・・・)
「冬獅郎・・・?」
いきなり黙った日番谷を心配し一護が声をかける。



 『一人で苦しんでんじゃねえよ!!』

 声が聞こえる。

 『一人で何もかも背負おうとすんじゃねえ!!』

 誰の・・・?

 『てめぇの苦しみも、その覚悟も、仲間に受け止めさせろよ!!』

 仲間・・・
 『てめぇひとりで背負い込むことで、回りの奴がどんな思いをすんのか考えたことあんのかよ!!』

 この声は・・・?



.







「黒崎・・・?」
日番谷が正気を取り戻した瞳で言う。
「冬獅郎・・・?」
一護は日番谷が元に戻ったか確認するように訊く。
「俺は・・・一体・・・?」

「やべぇ!!草水!!」
日番谷の異変に気づいた怤璽火が草水を呼ぶ。
「ッチ!まだ時間が足りなかったか・・・!」
草水とは思えない口調で言う。
「行くよ!怤璽火!」
「おう!」
そう言うと二人の姿は消えた。
「待て!!」
二人を追うようにルキアが瞬歩で消える。

「冬獅郎!良か「それは困るな!」
一護が安堵した言葉を遮って、突然現れた怤璽火が言う。




「日番谷、お前は俺たちと来るんだろ?」
怤璽火が日番谷を見て言う。
「俺は「冬獅郎は俺たちの仲間だ」
一護が日番谷の言葉を遮って、日番谷の前に立ち庇う様にしながら言う。
「・・・そう」
怤璽火の後ろの草水から聞こえたと思っていたら、草水と後ろの日番谷の気配が消えた。
「冬獅郎!!」
空を見ると、草水が日番谷を抱き上げて宙に浮いていた。
「少しだけ会わせてあげようと思ったから会わせてあげたのに、これじゃぁ意味無いじゃん」
草水が一護を見下ろしながら、無表情で言う。
「何だと!?」
「黒崎!気をつけろ!!」
横抱きにされてる日番谷から声が聞こえた。
「こいつはお前を殺そうと「少し・・・喋れなくしてあげるよ」
そう草水の声が聞こえたと思った瞬間、日番谷は喋れなくなっていた。
「(声が・・・出ない)・・・!」
「冬獅郎!?」




いきなり黙った日番谷を心配して一護が訊いた。答えたのは草水だった。
「気にしなくていいよ」
「どういうことだ!!」
一護は日番谷が心配で草水に怒鳴る。
「・・・僕さ・・・二度説明すんの―――嫌なんだよね!!!!!」
そう言うと先ほどのように、草水の霊圧が急激に上がる。
「うわぁ!!」
急激な霊圧の上昇に、一護の体が飛ばされる。
「(黒崎!!)」
日番谷は必死に一護に向かって手を伸ばす。
「・・・あの男が消えれば、君は僕たちの仲間になるんだね」
草水は無表情で日番谷の様子を見、言った。
日番谷は驚いて草水を見る。そして一護を見た瞬間、一護に向かって大量の水が押し寄せた。その後出てきた一護はピクリとも動かない。
「(黒崎・・・?黒崎・・・!黒崎!!!!)」
日番谷の心の悲鳴は、一護には届かなかった。



7/17ページ
イイネ!