これ以上彼を苦しめないで・・・ 




「待て!冬獅郎をどうする気だ!!」

「それで御主らは何も出来なかったと」

「何故現世に?」



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「冬獅郎になにをした!?」
一護は丯闇を睨みながら言う。
「少し・・・中を弄らせて貰った」
丯闇がニヤリと笑いながら言う。
「そういえば、なぜわたし達はいきなり貴様の声が聞こえるようになったのだ?」
ルキアが訊く。
「・・・用事が済んだからだ」
そう言うと丯闇が姿を消す。
「ではこいつはもらって行くぞ」
後ろから丯闇の声がする。振り向くと日番谷を肩に担いだ丯闇と、怤璽火、草水、風浪仝が窓の外に居る。
「安心して?冬獅郎君を不幸にさせない!逆に幸せになってもらうから!」
草水がにこやかに笑って言う。
「お前ら、おもしろいからまた会いに来てやるよ!そんときは最高の馬鹿をかましてくれよな!ハハハッ!」
怤璽火がゲラゲラ笑いながら言う。
「一つ忠告しておきましょう。彼はもう我々の仲間です。それを忘れずに」
風浪仝が淡々という。




「追ってくるなよ。追ってきたら最後、貴様らは後悔することになる。そして貴様らはこいつに・・・いや、やめておこう。貴様らは俺が忠告したところで、こいつを追ってくるだろうからな」
丯闇が無表情で言う。
「待て!冬獅郎をどうする気だ!?」
一護が窓に駆け寄りながら訊く。
「それをわざわざ言う馬鹿がどこに居るってんだよ!ハハハッ!お前ら本当に馬鹿だな!」
怤璽火が笑いながら、呆れながら言う。
「そういうわけだ。ではまた会うこともあろう」
丯闇、草水、怤璽火、風浪仝の姿が消え始める。
「待て!!冬獅郎を返せ!!」
「日番谷隊長!!」
二人の声を無視して四人と日番谷は消えていった。



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「くそっ!!冬獅郎・・・っ!!」
「一護・・・」
日番谷を護れなかった思いでいっぱいになっている一護を、ルキアがもどかしい思いで見つめる。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ものすごい大勢の足音と共にやってきたのは、
「なにがありましたか!?」
「日番谷隊長は!?」
「なにがあったんだい?」
「隊長は!?」
「日番谷隊長に何があった!?」
「日番谷隊長は何処に!?」
「敵はどこだぁ!!」
「あれぇ?ひっつーは?」
「隊長、待ってくださいよ!」
「あれ?ここは日番谷隊長の病室じゃ・・・」
上から順に卯ノ花、浮竹、京楽、乱菊、檜佐木、喜良、更木、やちる、一角、弓親。
「お前ら・・・!」
一護が呆然とつぶやく。
「黒崎さん、なにがありましたか?」
卯ノ花が訊く。一護はこれまでにあったことを説明した。





「そうでしたか・・・」
卯ノ花が言う。
「敵の狙いは日番谷隊長だったか・・・」
浮竹が一護同様、間に合わなかったことを後悔している。
「しかし、彼をどうする気なんだろうねぇ?」
京楽がさっぱりわからないといった感じで言う。
「隊長・・・」
乱菊はとても苦しそうだ。
「とにかく、このことを総隊長に報告しましょう。話はそれからです」
卯ノ花が静かに言う。皆はそれに頷いた。



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一番隊・隊首会室。
各隊隊長達と一護、ルキアがそこに居た。
「・・・というわけで、敵の狙いは日番谷隊長だったというわけです」
ルキアがこれまでにあったことを説明する。
「・・・そうか、それでおぬしらは何もできなかったと」
元柳斎が納得したように言う。
「それは・・・っ!」
講義しようにも事実なのだから仕方が無い。
「元柳斎先生、彼らが何もできなかったのは、話を聞いた通り仕方がありません!」
浮竹が一護とルキアをフォローする。
「しかし、何もできなかったのは事実」
「しかし・・・っ!」
「意義は認めぬ!」
ピシャリと言い放つ。
「隊長が三人も抜け、更に一人抜けるとなると、その間に襲撃があれば被害が大きい。各隊、十番隊隊長日番谷冬獅郎を奪還せよ!」
皆の顔が引き締まる。



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次の日。
「それにしても、日番谷隊長はどこに居るのだろうか?」
浮竹、ルキア、一護は十三番隊隊舎に居た。
「あやつらは、また来ると言っておりましたが?」
ルキアが言う。
「でも、早くしねぇと冬獅郎が・・・っ!」
一護が言う。
「しかし「呼んだか?」
浮竹の声を遮って聞こえてきたその声は、三人の良く知る、否三人が捜している人物そのものの声だった。
声のしたほうを見てみると、そこには隊首会を開いてまで捜していた、日番谷冬獅郎だった。
「冬獅郎!!」
「「日番谷隊長!!」」
三人は驚いて日番谷を見る。


「なんだ?」
日番谷は平然と返す。
「お前、何でここに・・・」
一護が呆然と訊く。
「俺がここに居ちゃいけないのか?」
「いや・・・そうじゃなくて・・・」
「日番谷隊長。敵はどうしたのですか?」
ルキアが日番谷に訊く。
「ん?あぁ、別にお前らの気にすることじゃねぇよ」
日番谷が無表情で言う。
「しかし「それより、黒崎、朽木。お前らには来て欲しい場所がある」
ルキアの言葉を遮って、日番谷が言う。
「「来て欲しい場所?」」
一護とルキアがそろえて言う。
「ああ」
日番谷がそう言うのと同時に一護とルキアと日番谷の体が消えていく。
「な、なんだ!?」
「うわっ!?」
慌てる一護とルキア。その中で日番谷だけが落ち着いている。
「慌てるな。すぐわかる」
「なっ!?一護君!朽木!日番谷隊長!」
今まで呆然と見ていた浮竹が叫んだときには、三人は消えていた。



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「っ・・・!ここは・・・!」
一護が目を開けるとそこは見慣れた現世だった。
「そうだ」
声のしたほうを向くと、先ほどと変わらず日番谷が居た。
「冬獅郎、来て欲しい場所って・・・」
「ああ、現世だ」
日番谷は先程と変わらない無表情で言う。
「なぜ現世に?」
「うぉ!!ルキア!!」
当たり前だが、一護の隣にルキアが居た。
「貴様・・・わたしがここに居たのを今まで気づかなかったのか!?」
ルキアは怒って言う。
「あ~・・・悪ぃ」
どうやら図星だったようだ。
「貴様・・・!ふざけ「もういいか?」
日番谷が二人の会話を遮って言う。
(わたし・・・日番谷隊長に嫌われてる!?)
毎度毎度遮られているルキアはそう思った。






「・・・そういえば冬獅郎、なんで現世?」
一護が改めて訊く。
「それは僕から説明するね」
突然聞こえてきた声に振り返る。そこに居たのは先日と変わらない草水の姿だった。
「貴様!!」
「お前!!」
二人が驚いていると、
「貴様とか、お前とか、そういうのやめてよ。僕には『草水』って名前があるんだからね!」
困ったように草水が言う。
「ひ・つ・が・や~~~!!!」
声がするほうを向くと、怤璽火がピョンピョン跳ねながら来た。
「うぉあ!!!!」
怤璽火はそのまま日番谷に抱きつく。日番谷はそれを受け止めきれず怤璽火と共に倒れこむ。下敷きになった日番谷はかなり痛そうだ。
「っ~~~~~!!退け!!怤璽火!!」
「なんだよw別にいいだろw」
「よくねぇ!!!」
「ゲフッ!!」
日番谷は怤璽火の鳩尾を思い切り殴る。
「と・・・冬獅郎!?」
敵とは思えないほど二人は仲良くなっていた。


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イイネ!