これ以上彼を苦しめないで・・・ 





「日番谷隊長・・・まだ、草冠のこと・・・」

「君だよね?日番谷冬獅郎君って」

「つまり、あなたが『心の傷の深い者』なんですよ」



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「冬獅郎!!」
「日番谷隊長!!」
同時刻、一護とルキアが日番谷の病室に来た。
「黒崎、朽木・・・どうした?」
日番谷が呆然とつぶやく。
「大丈夫か!?」
一護が慌てて訊く。
「何がだ?」
日番谷はまったくわけの分からない顔をしている。
「なにかありませんでしたか!?」
日番谷は一瞬たじろぐ。それを見て一護は更に問う。
「何かあったんだな!?」
「いや・・・俺は・・・」
日番谷は言葉に詰まる。
「冬獅郎・・・!」
一護は日番谷の眼を見て言う。
一護は日番谷を護ると己の魂に誓ったのだ。そうは引き下がらない。
「・・・はぁ。実は・・・」諦めたようにため息を吐くと、目を逸らしながら日番谷は言う。
「先程の隊士が、「俺が心の傷の深い者だ」と・・・」
その瞬間、一護とルキアが身を乗り出す。





「何だと!?」
「日番谷隊長!!本当にそう言ったのですか!?」
ほぼ叫ぶようにして言う。
「ああ・・・」
日番谷は二人の剣幕に驚きながらも頷く。
「日番谷隊長・・・まだ、草冠のこと・・・」
ルキアがそう言うと、日番谷は黙ってしまう。

「本当にこれでよかったのか?」
「自分は生きていていいのか?」
そんな気持ちが、日番谷の心の傷の錘になっていて・・・

急に黙った日番谷の様子を見て、一護は日番谷に視線を合わせるようにして方膝をつく。
「冬獅郎・・・無理にとは言わねぇ・・・俺たちが敵を倒すまでは、自分のことだけ考えろ。任務のことも気にしなくていい。敵がお前を狙ってると言ったんだったら、尚更だ」
一護は日番谷の肩に手を置きながら言う。
「俺たちがお前を護るから・・・」
一護がそう言うと、日番谷は眉間にしわを寄せる。
「・・・俺はお前らに護られなきゃいけないほど弱くは無い」
「だからっ「日番谷隊長」
一護の言葉を遮ってルキアが言う。



「相手の攻撃手段がわかりません。それに日番谷隊長が敵の狙いなら、日番谷隊長が自分自身を護るよりも、私たちが日番谷隊長を護ったほうが、安全性は高いです。ですから私たちを信じてください・・・」
ルキアが静かな瞳で日番谷を見ながら言う。
「・・・わかった」
日番谷は少し考えてから言う。
日番谷がルキアに優しいのか、それともルキアの説得がうまいのか、日番谷はルキアには甘かった。
「ありがとうございます!」
「さて、これからどうするよ」
一護が言う。
敵の狙いが日番谷と分かった以上、日番谷の傍には誰かが居なくてはならない。しかし敵の攻撃手段が分からないため、一護とルキアでは日番谷を護れる自身が無いのだ。
「とりあえず、総隊長に連絡を「そうはいかねぇな!」
ルキアの言葉を遮って、病室の窓から出てきたのは、十三番隊の隊士だったはずの敵だった。日番谷が慌てて振り向く。それを見て一護とルキアも振り向く。



「き、貴様は!!」
ルキアが驚いて言う。
「おいおい、まさか俺のことを本当に死神だと、同じ仲間だと思ったのか?ハハハッ!!残念!不正解~♪ハハハッ!!」
そう言うと馬鹿みたいにゲラゲラ笑う。
浮竹に報告していた時より外見は派手に変わっており、恋次より濃い色の赤が逆立っていて、まるで炎のように日の光を浴びて、輝いていた。
「君だよね?日番谷冬獅郎君って」
赤髪の男がゲラゲラ笑っている中、突然日番谷の後ろから声が聞こえた。
振り返ってみると、そこには現世でいうと5~6歳の小さな男の子が居た。染めているのか地毛なのか、男の子の髪は右半分は水色、左半分は緑色と不思議な髪色をしていた。
「もう、怤璽火(フジカ)。ちゃんと用件言ってよ」
その男の子が窓からきたうるさい奴を見て言う。
「悪ぃ悪ぃ草水(ソウスイ)。こいつら馬鹿でついおもしろくてなっ!」
怤璽火が日番谷の隣に居る子供を見て言う。





「お前ら一体「まったく怤璽火はいつもいつもそうですね」
何者、と続く日番谷の言葉を遮って扉から入ってきたのは、ついさっき日番谷の病室に来た隊士だった者だった。
「ッチ!お前も来たのか、風浪仝(フウロウドウ)・・・」
風浪仝と呼ばれた、肩までかかっている薄紫色の髪に眼鏡をしたその男が、日番谷の前に来て、
「何他人事の様に見ているんですか?」
「えっ・・・」
日番谷は呆然とつぶやく。
その様子を見て、一護とルキアが風浪仝の前に出て、日番谷を庇う。
「俺のことは無視かよ!!」
怤璽火のことは完全に無視されていた。
「まあまあ」
それを草水が慰める。この二人は仲が良さそうだ。
「あなたには僕達の声が聞こえるでしょう?」
風浪仝は前に出てきた二人を無視して、日番谷に声をかける。
「・・・当然だろ」
日番谷は警戒しながら言う。




「当然じゃ無いんですよ。実際この二人には僕達の声は聞き取れていません」
「何・・・?」
日番谷は眉をひそめる。
「冬獅郎、どうした?」
「日番谷隊長?」
二人は日番谷を振り返る。今までの会話が聞こえていなかったかのように、二人とも本当に訊いてくる。
「お前ら・・・!本当に聞こえてないのか!?」
「ほら、聞こえていないでしょう?」
今まで傍観していた風浪仝が言う。
「つまり、あなたが『心の傷の深い者』なんですよ」
冷たい目線で言われ、日番谷はたじろぐ。
「な、何言ってやがる・・・」
「我々は、人ではありません。もちろん魂魄でもない。虚でもない・・・」
日番谷は風浪仝の言っている意味がわからず、ただ睨んでいるだけだった。
「だから。我々は器がない、ただの感情の塊にしか過ぎないもの・・・」
「器・・・?」
「ですから、人の感情は手にとるようにわかる。貴方が今、どれほど傷ついているかということも・・・」





風浪仝は相変わらず冷たい目線で言う。
「俺は・・・そんなこと「草冠宗次郎のこと」
日番谷の言葉を遮って、風浪仝の口から出てきた名前に日番谷は驚愕する。
「幼馴染―――雛森桃、貴方を育ててくれた祖母・・・」
日番谷の目は徐々に驚きに開いていく。しかし、それは絶望へと変わっていく。
「なんで・・・知って・・・」
「知ってますよ。言ったでしょう?我々は、『感情の塊』―――もしくは『憎悪の塊』ですから」
それこそ恨みのこもった目で言う風浪仝。
「・・・憎悪の・・・塊・・・?」
そう日番谷がつぶやいた途端、日番谷のすぐ耳元から声が聞こえた。

『俺の声が聞こえるか?』

日番谷はバッと横を向く。だがそこには何もない。
「こっちだ、こっち」
次は風浪仝の方から聞こえた。
振り返ってみると、そこには人の形をした物。恋次を意識不明の重体にした元偽理吉が居た。




「お前は・・・?」
そう日番谷がつぶやくと、『それ』は、
「ほう・・・俺の声まで聞き取れるのか・・・たいしたものだ」
そう、それが言うと、一護の体をすり抜け日番谷の傍まで来た。
「うわっ!!」
一護は自分の体をすり抜けた『それ』を驚きながら見つめた。
「・・・お前、俺の声が聞こえるくらいなら、俺たちの仲間にならないか?」
日番谷はわけがわからないといった感じで、呆然とつぶやく。
「俺が・・・お前たちの・・・?」
「そうだ。俺たちの役目は『心の傷の深い者』を助けること。ここに居る、怤璽火、草水、風浪仝。皆、心に深い傷を負った者たちだ。我々のほかにまだ仲間はたくさん居る。そして仲間を助け合い、生きてゆく・・・」
「心に深い傷を負った者たちって・・・丯闇(カイアン)もだろ」
怤璽火が言う。
「貴様・・・空気の読めん奴だな」
怤璽火を睨みながら風浪仝が言う。
「うるせぇ!真面目野郎!」
この二人は仲が悪そうだ。




「黙れ!」
丯闇が怒鳴る。
「へ~い」
「はい、申し訳ありませんでした」
二人は正反対な返事をする。
「どうだ?日番谷冬獅郎」
丯闇が日番谷を見て言う。
「・・・フザけたこと言ってんじゃねぇよ・・・誰がお前らの仲間になんかなるかよ・・・」
日番谷は丯闇達を睨みながら言う。
丯闇はそんな日番谷の様子を見て、はぁ~・・・と静かにため息を吐くと、日番谷の綺麗な翡翠色の瞳を見る。
日番谷は丯闇の顔に目がないのに、見られている感覚から抜け出せない。
(なんだ・・・これは・・・)
一護とルキアは今にも意識を失いそうな日番谷に気づき、慌てて駆け寄る。
「冬獅郎!?」
「日番谷隊長!?どうされましたか!?」
そんな慌てた二人の姿は、日番谷には既に見えなくなっていた。
(黒崎・・・朽木・・・)
そして、日番谷は完全に気を失った。



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イイネ!