これ以上彼を苦しめないで・・・
「さっぱりわかんねぇんだよ。そんなの探したってどうすんんだって」
「あの者が嘘をついた、ということになるな」
「だって貴方なんでしょう?『心の傷のもっとも深い者』は」
.
「一護、どうした?」
突然ルキアが訊いてきた。
「ん?あぁ、少し考えてただけだ」
「そうか」
(そういえば冬獅郎のときもこうだったな。俺そんなに集中力あったか?)
と、思う一護だった。
「そういえばルキア、いつまでもここにいても始まらないし、冬獅郎のところに行こうぜ。療養中だから、このことを知らねぇかもしれない」
「そうだな。では日番谷隊長のところに行こう」
こうして二人は日番谷の病室へ向かった。
(痛てぇ・・・何なんだ?さっきからするこの頭痛は?)
同時刻、日番谷はいきなりきた頭痛に悩まされていた。
「冬獅郎~、入っていいか~?」
そこに一護たちが来た。
「あ、ああ」
返事をすると同時に一護たちが入ってきた。
「失礼します、日番谷隊長。
「・・・朽木?」
ルキアが来ることが珍しく、少なからず驚く日番谷。
「お見舞いに来ました」
「そうか。悪いな」
「いいえ」
朽木みたいな副隊長がほしいなと思う日番谷だった。
「冬獅郎。実はルキアが謎の反応についての情報を持ってきてよ」
「何?」
「実は・・・」
ルキアは先ほど一護に話したことを日番谷に話す。
「そうか・・・」
ルキアの話を聞き終えた日番谷は言う。
「『心の傷の深い者』か・・・」
「さっぱりわかんねぇんだよ。そんなの探したってどうすんだって」
「そうだな・・・」
三人は考え込む。
「―――っ!!」
日番谷はまた突然の頭痛がきた。
「冬獅郎!!」
「日番谷隊長!!」
一護とルキアが駆け寄る。
「どうした!?冬獅郎!?」
「・・・いや・・・なんでもない・・・」
頭を押さえながら日番谷は言う。
「なんでもなくねぇだろ!!・・・頭痛いのか?」
「とにかく、横になっていてください」
ルキアが日番谷の体をベッドに寝かしながら言う。
「いつからなんだ?」
一護が近くにあった椅子に座ってから言う。
「30分前・・・くらいか・・・」
「30分前っつたら・・・」
一護が記憶をさかのぼって考える。
「・・・確か、恋次の前に反応しているものが姿を現したときではないか」
ルキアが一護より先に言う。
「・・・でもあんまり関係ないんじゃないか?冬獅郎の体が不安定なだけかもしれないし」
「そうかもしれんが・・・」
「・・・別にたいしたことは無い」
日番谷が二人に心配かけまいと、起き上がろうとする。
「だめだ!まだ休んどけ!爺さんにも言われてんだろ!」
そう言いながら、一護は日番谷をベッドに戻す。
「だが・・・!」
「日番谷隊長、私たちのことは大丈夫ですから、日番谷隊長は体をゆっくりと休めていてください」
そう言うルキアの顔は、とても穏やかだった。
日番谷はそのルキアの顔をしばらく見つめる。そして諦めたかのようにため息を吐くと、
「・・・そうか、わかった」
そう言って力を抜く。
「そういうことだ!わかったな、冬獅郎!」
一護が言う。
「偉そうに・・・!」
ルキアが眉間にしわを寄せて言う。
日番谷に見せた顔とは大違いだ。
「確かに・・・」
日番谷が言う。
「な・・・なんだよ!!」
日番谷があまりにも冷めた眼で見てくるので、一護は先ほどの偉そうな態度から、一気にたじろぐ。その顔はなんとも頼りない。←
「黒崎なんかと違って、お前には説得力があるしな」
「日番谷隊長!わ、わたしは・・・そんな・・・/ / / / /」
逆にルキアは顔を真っ赤に染めて照れていた。
「いや、俺はお前のような副隊長が欲しいよ」
日番谷が苦笑いしながら言う。
それは乱菊のことを思い浮かべながら言っているからだろう。
「そ、そんな / / / / / /!!」
ついにルキアは頭から湯気を出して、激しく頭を振った。
だが一護だけはそれを、先ほどの日番谷のように冷たい眼で見て、
「お前・・・確信犯かよ!!」
と言った。そのとき、
「失礼します」
と一人の隊士が入ってきた。
「なんだ?」
日番谷が答える。
「死神代行・黒崎一護様と十三番隊・朽木ルキア様にお客様が来ております。至急白道門前まで来てください、とのことです」
「わかりました。一護、誰だか知らんが行くぞ」
「俺、流魂街に知り合い居たっけ?」
「ともかく行くぞ。では日番谷隊長失礼しました」
「ああ」
そう言って二人は出て行った。
「お前、何番隊の隊士だ?」
日番谷は二人が出て行ってすぐ、体を起こしてその隊士に訊いた。
「・・・」
隊士は二人が出て行った扉をじっと見たまま答えない。
「・・・おい?」
日番谷は不振に思って問う。
「日番谷隊長・・・」
その隊士が扉を見つめたまま言う。
「・・・なんだよ」
「草冠宗次郎の事は心の中で整理がついたんですか?」
振り返った隊士の顔は、心配しているというよりも、記者が事情聴取をしているときの顔だった。
「―――!・・・そんなことお前には関係ないだろ」
一瞬だけ動揺したが、日番谷は拒絶するように言う。
「・・・まぁ確かに私には関係ありませんが・・・そういえば最近、謎の反応に皆様悩まされていますよね?・・・それ、全て貴方の所為だって事、覚えておいてくださいね」
そう言うと、ニヤリと笑う。
「な、何言ってやがる・・・!」
驚愕して言う日番谷に隊士は、
「・・・だって、貴方なんでしょう?『心の傷のもっとも深い者』は」
どこから情報を手にしたのか、隊士はルキアが教えてくれた言葉と同じ事を言った。
「お前・・・どこでそれを・・・!」
「時期に迎えが来ますよ、『日番谷隊長』。それまでもうしばらく、お待ちください」
そう言うと、隊士は扉を開けて消えていった。
隊士が出て行った後も、日番谷は呆然としていた。
「どういうことだ・・・?」
そのころ白動門前。
「よう、兕丹坊」
一護が兕丹坊に声をかける。
「おう、一護でねえか。どうしたんだ?」
「ここらへんに、俺らに用があるっていう客が居るって言われて来たんだ」
一護は事情を説明する。
「そうか。だが今まで誰も客みてぇなのは来てねぇど」
「「何!?」」
「本当か!?兕丹坊!」
一護が慌てて訊く。
「ああ」
「どういうことだよ、ルキア?」
一護がルキアを見る。
「あの者が嘘をついた・・・ということになるな」
「ってことは・・・っ!!冬獅郎!?」
一護がハッと言う。
「日番谷隊長が危ない!!急ぐぞ、一護!!」
「ああ!!」
二人は日番谷の病室目指して駆け出した。
「見つけたのか?」
元偽理吉が訊く。
「はい、彼です。『心の傷のもっとも深い者』」
日番谷の病室に来た隊士が言う。
「『日番谷冬獅郎』っていうんだよね」
兕丹坊に質問した子供が言う。
「ああ、草冠の事件のときのことを考えれば、間違いねぇ」
浮竹に恋次のことを報告した隊士が言う。
「彼、草冠のことを僕が言った瞬間かすかに動揺したましたよ?」
病室隊士が言う。
「当たり前だろ。『心の傷の深い者』はそいつなんだからよ」
報告隊士が言う。
「とにかく、近づくぞ」
元偽理吉が言う。