これ以上彼を苦しめないで・・・ 





「誰か・・・助けてくれェ・・・うわぁぁぁああああああ!!!!!!!」

「まさか・・・テメェが・・・!」

「十三番隊の隊士がその一部始終を見ていたと報告があってな」


.


『何が起こるかわからない!孤立しないように!』
十一番隊士が一人やられたとの情報が入り、「謎の物体」は「謎の人物」になった。
十一番隊の隊士の死因は不明。斬魄刀で斬られたようでは無く、きれいに真っ二つだったのだ。相手の武器が分からない以上、一人で出歩くことは死ぬようなものだった。
そして、犠牲者は十一番隊の隊士だけでは無かった。

「誰か・・・助けてくれェ・・・うわぁぁぁあああああああ!!!!!!!」
「やめろ・・・ぐぁぁああああああ!!!!!」
「お前がッ・・・やめ・・・ぎゃぁぁああああああ!!!!!!!!!」

次々と隊士たちが殺られていく。死神たちは不安と恐怖で焦っていた。
わからない事がありすぎるのだ。反応してもその場所には何も無い。殺し方がわからない。容姿もわからない。目的がわからない。組織なのか、単体なのかも。そんな中で、死神たちは防ぎようが無いのだ。そしてついに・・・




「ここらへんだよな・・・反応は・・・」
六番隊副隊長・阿散井恋次は反応がある場所に来ていた。隊長格は隊をまとめろと言われているが、恋次は六番隊隊長朽木白哉に隊を任せて、一人で調査していたのだ。
「たく・・・なんで俺が・・・」
実は任せ「て」いたのではなく、白哉に任務を任せ「られた」のだった。
『―――』
一瞬。背後に気配を感じとる。
「誰だ!?」
振り返ってみると、そこには人間の「形」をした「物」が立っていた。あくまで「形」をしているだけの「物」である。恋次は自身の斬魄刀・蛇尾丸の柄を握りながら言う。
「まさか・・・てめぇが・・・!?」
『・・・』
だが何も言わない。
「何とか言いやがれ!!」
すると口の無いそれは恋次の脳を伝えて言ってきた。
『・・・オマエハ・・・イママデノヤツヨリ・・・ツヨイナ・・・?』
「・・・あ?」
聞き取りにくい。


『ソウカ・・・オマエニハ・・・キキトリニクイカ・・・』
そう言うといきなり姿が変わった。
「くっ・・・!」
あまりの眩しさに恋次は目を瞑る。
そこに現れたのは、恋次の部下の理吉だった。
「理吉・・・!」
恋次が驚いて言うと、
「そうか、こいつの名は『理吉』というのか・・・」
ニヤリと笑いながら言う。
「こいつのほうが話を聞きやすいだろう?」
「なっ・・・!お前・・・」
やはりこいつはさっきの「アレ」だった。
「俺は相手の記憶にある奴を真似することができる」
「じゃあ理吉は・・・!」
「ちゃんと居るだろうな。俺は真似ただけだ」
それを聞いて恋次は安堵の息を吐いた。



「・・・質問がある」
「なんだ?」
いきなり理吉の顔をしたやつ―――偽理吉が訊いてきた。
「・・・お前は敵の前に誰かを連れてくることはできるか?」
理吉の顔で言われると、理吉が生意気になったみたいでむかつく。←
「どういうことだ?」
「・・・それぐらいお前は偉いかと訊いているんだ」
むかつく。
「・・・さあな」
「・・・そうか」
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥ
「ぐわぁぁぁあああ!!!!!」
恋次の腹が切れた。副隊長なので隊士たちのように真っ二つにはならなかったが、それでも大量出血で死ぬくらいの傷だった。
「最後にいい事を教えてやろう。俺の目的は―――――」
「・・・なんだ・・・と・・・?」



―――心の傷の深い者を探すことだ。






その言葉を最後に恋次は意識を失った。
偽理吉はその様子を見ながら姿を消した。
そのあとすぐに本物の理吉が通りかかる。
「・・・!れ、恋次さん!」
急いで恋次に駆け寄りその体を揺する。
「恋次さん!しっかりしてください!恋次さん!」

「阿散井がやられた!?」
ベッドに体を起こした日番谷は驚く。
「はい、阿散井恋次六番隊副隊長はそのあとすぐ四番隊に運ばれましたが、意識不明の重体です」
伝令が言う。
「そうか・・・わかった・・・」
そう日番谷が言うと、伝令はスッと消えた。
伝令が消えた後、日番谷は考え込む。
(阿散井がやられるほどの強さを持った奴・・・か)
少なくとも隊長格を一人やれるほどの実力なのだ。十分強い。
(殺されなかっただけマシか・・・)



恋次の病室。
「恋次・・・」
一護は日番谷の病室を出て、恋次の病室に来ていた。
たまたま日番谷の病室を出て、恋次のところに行こうと思っていたら、恋次が運ばれてきて、そのまま付いてきたというわけだ。
しばらくすると、タタタタタタタタという乱菊ほどではない足音が聞こえてきた。
そして病室の扉が開くと
「恋次!」
という声とともに、ルキアが入ってきた。
「ルキア!」
「おお、一護か」
ずいぶん慌てて来たのだろう。息を切らしていた。
「何故貴様が尸魂界に?」
ルキアは不思議そうに訊いた。
「冬獅郎の見舞いに来たんだ」
「そうか・・・日番谷隊長の・・・。わたしもあとで行かねば」
「そうだな」
二人はそれっきり黙った。
「・・・六番隊の理吉っていう隊士が言うにはな」
「ん?」
いきなり一護が言い出した。
「自分が来たときにはもう既に恋次は倒れていたらしい」
「・・・そうか」
ルキアは考え込むように黙る。
「・・・実はな」
「どうした?」
ルキアは顔を上げて一護を見る。
「実は・・・十三番隊の隊士がその一部始終を見ていたと報告があってな」
「なに!?」
それは一人の隊士が十二番隊の報告を浮竹にしていた後のことである。






「どういうことだ!?」
浮竹は驚愕し、唖然としている。
「ということは、ここも反応しているということですよね?」
ルキアが驚きながら訊く。
「ああ、そうなる・・・」
浮竹はいまだに驚いている。
「「浮竹隊長!!」」
そこに現れたのは同隊三席の虎徹清音と子椿仙太郎だ。
「「北流魂外をすみずみまで捜索しましたが特に異常はありませんでした!!」」
「そうか」
声をそろえて言う二人に、浮竹はうなずく。
「いったい何が「た、たいちょう~!!!」
ルキアが呆然とつぶやいた言葉を遮って、一人の隊士が青ざめて走ってきた。
「どうした!?」
浮竹も隊士のあわてぶりに驚いて訊く。
「そ、それが・・・で、出たんです・・・」
まるで幽霊でも出たかのような言い方だ。
「なにが出たんだ?」
浮竹も隊士が落ち着くように優しく訊く。
「反応の・・・反応の物体が・・・」
「「「「!!!!」」」」
周りに居る皆が驚く。





「見たのか?」
「は、はい・・・あ、阿散井ふ、副隊長と・・・共に・・・」
その言葉を聞いた瞬間、ルキアが身を乗り出した。
「恋次がっ!?」
「共に?」
浮竹が言葉をつなげる。
「共に・・・居て・・・話して・・・いました・・」
「何を?」
「阿散井副隊長が・・・倒れて・・・「何!?「朽木!!」
浮竹が、隊士にこれ以上負担をかけないようにルキアを黙らせる。
ルキアは自分がしたことに気づく。
「あ・・・すいません・・・」
「倒れて・・・どうした・・・?」
浮竹は話を戻す。
「あいつが・・・あいつが・・・目的を・・・言って・・・」
皆は、口を挟まず、黙って聞いている。
「心の傷の深い者を探している・・・と・・・」
「「心の傷の深い者?」」

「というわけだ」
ルキアは説明を終える。
「心の傷の深い者ねぇ・・・」
そう言って一護は考える。
(心の傷の深い者・・・そんなもん探してどうすんだ?・・・こころのきずのふかいもの・・・言葉通りなのか?誰なんだそれは・・・)
一護もルキアも気づかなかった。



「心の傷の深い者」はすぐ近くに居るということに。



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イイネ!