これ以上彼を苦しめないで・・・
彼は何故こんなに苦しめられなければいけないのか?
何故彼だけがこんな目に合わされなければならないのか?
それは運命と言ってしまえば簡単なのかもしれない・・・
彼は光。
光を壊す者は闇。
光を護る者は架け橋。
「死ね。黒崎一護・・・」
「てめぇだけは絶対に許さねぇ!!」
「貴様ら、日番谷隊長に何をした!?」
「吐けよ、日番谷隊長の居場所を!」
「光は闇に落ちたのだ」
「お前らには無理だ」
「助けようとか思わないほうがいいよ。死ぬから」
「てめぇに俺たちの何がわかる!!!!!」
「たすけて・・・黒崎・・・」
「冬獅郎ーーーーー!!!!!!!!!!」
これ以上彼を苦しめないで・・・。これ以上彼を―――キズツケナイデ・・・。
***
双殛の丘。
「さ、もう戻ろうぜ!冬獅郎!」
「・・・『冬獅郎』じゃねぇ!『日番谷隊長』だ!」
こうして、草冠宗次郎の復讐劇は終わった・・・
そして後日・・・
四番隊、総合救護詰所。
「冬獅郎、居るか?入るぞ」
「ああ」
許可をもらったので俺は病室の扉を開けた。
するとそこにはベッドで体を起こした冬獅郎がいた。
「大丈夫か?」
「ああ、傷のほうはな。痛みはまだある」
どうして冬獅郎が四番隊に居るかというと、あの復讐騒動が終わり、皆の所に戻った俺たちは、冬獅郎は総隊長に王印を渡し、俺は井上たちに結末を教えるために現世に戻ろうとしていたんだ。でも、突然乱菊さんの叫び声がして、その声に振り返ってみると、冬獅郎が倒れていた。卯ノ花さんの話だと、腹の傷と精神的な疵のせいで倒れたんだと言う。
それで、冬獅郎は四番隊に運ばれ、俺は一旦現世に戻り、井上たちに事情を話してから、また尸魂界に戻ってきたというわけだ。
「ったく!無茶しすぎなんだよ!お前は」
「うるせぇな」
冬獅郎は、この事件の前と今とでは、明らかに表情の数が違う。前はずっと眉間にしわよせて(今もなんだけど。というか俺も人のこと言えないし・・・)いかにも『隊長』って面してたのに、いまはなんというか・・・表情が軽くなったな。今も、口では「うるせぇ」って言ってっけど、いかにもっていう表情はしてねぇし。今までずっと苦しんできたんだな・・・草冠のことは冬獅郎のなかで決着はついたのかな?
気になるけど、俺は訊かない。それは冬獅郎の心の問題だから・・・
でもこのときに、俺は訊くべきだったんだ。
そうすればこれから起こる出来事を
トメラレタカモシレナイ
突然黙った俺を気にかけたのだろう。
「どうした?」
「えっ!?」
冬獅郎が声をかけてきた。
「べ、別に。何でもねえよ」
「?・・・そうか」
考え事をしているときに話しかけられるのは意外と驚くということを、俺は学んだ。←バカ
「ほら!井上たちからの見舞いだ!」
怪しまれてたので俺は早々に話しを変えた。
「ああ、すまな・・・」
「どうした?冬獅郎」
「・・・これはなんだ?」
「?」
井上たちからの見舞いを見た瞬間、冬獅郎は固まった。俺も覗いてみると、
「んな!!」
そこに入っていたものは・・・いろんな組み合わせの食い物(井上から)。服(石田)。なんか可愛いもの(チャド)、など。・・・正直、引く。
「・・・」
「・・・まぁ、とりあえず貰っとけ」
「・・・はぁ・・・」
これはさすがに同情する。
(がんばれ!冬獅郎!)
俺は心の中で応援した。
ダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!!!
「「ん?」」
いきなり聞こえてきたものすごい足音と共にやってきたのは・・・
「たいちょうーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 」
十番隊副隊長松本乱菊だった。
「ら、乱菊さ「たいちょ~う!!!!」
俺の言葉を遮って乱菊さんは冬獅郎に抱きついた。
「なっ!ま、松本!!」
「たいちょうたいちょうたいちょう!!!!」
「うっ!!」
冬獅郎は今怪我人。乱菊さんの抱きしめはいつも強力・・・となると・・・!!
俺は冬獅郎に目を向けた・・・
「―――」
「とうしろぉお―――!!」
当たり前のように冬獅郎は白目をむいて今にも死にそうだった(もう死んでるけど)。
「ら、乱菊さん!!冬獅郎死にかけてますって!!乱菊さん!!」
「・・・あら」
乱菊さんが腕の力を緩めた途端に、冬獅郎はその場に崩れ落ちた。
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!・・・松本!!毎度毎度俺を殺す気か!?」
「大丈夫か!?冬獅「やですねぇ☆殺す気なんてあるわけないじゃないですか☆」
また俺の言葉を遮られた・・・俺って忘れられてる?
てか冬獅郎、毎度毎度って・・・!・・・よく今まで生きてこれたな・・・
「ゲホッ!すまない、助かった黒崎」
「えっ!?あ、いや!大丈夫か?」
「ああ。なんとかな」
冬獅郎・・・お前はいつも死のの危機にさらされてるんだな・・・
「それより・・・どうした松本・・・」
「はい、ここが分からなくて☆」
「またか・・・」
またっ!?まさかその分からない書類を持ってくるたびに抱きしめ攻撃を!? (勝手につけた)
・・・でも、乱菊さん。楽しそうだな。そりゃそうだよな。帰ってきたんだから。
そのとき・・・
「ん?」
ひらひらと舞いながら、地獄蝶が来た。
この地獄蝶の伝令が、この物語の始まりだった・・・