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立海女子マネージャーな夢
立海面子と恋が始まることはありません。立海面子とは。
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「どしたの大丈夫?」
頭上から声をかけられ、伏せていた頭をあげる。
「中川か、わりぃな、平気」
クラスメイトの中川は、席が隣とだけあって、結構話す仲だ。大体朝練が終わって、チャイムがなるギリギリに来るこいつは、鞄を傾げたまま、首を傾げる。
「そう?なんか顔色悪いけど」
ここ最近よく言われる言葉だ。苦笑いして手をふる。親父の失業で家計は火の車、そのせいで成長期の俺は朝飯抜き。そんな家庭の事情を話しても仕方あるまい。あー、でも昼飯も握り飯だけはきついかもな…。テニス部の面々は気を遣って、ブン太でさえも飯をわけてくれたりするが、かえって申し訳ないし、情けない。
「そうだ」
突然声をあげて鞄をがさごそし出す中川。なんだ?
「ジャッカル、今日ご飯持ってきてる?もし購買で買う予定ならさー」
でかめの弁当箱を出してくる。
「これ食べてくれない?」
「え?」
ぽかんとした俺を無視して話し出す。
「なんかさ、父親にもお弁当作ったのにさ、なんと今日は会社の昼食会でお弁当いらないんだって。娘の愛情弁当いらないってどういうことよ」
中川は料理がうまいのは調理実習で知っていた。時々自分の弁当も作っているらしいが、これは…。
「いや、でも」
謙遜する俺にあ、と声を出す。
「やっぱ持ってきてた?じゃあ適当に皆でつまむからいいや」
「いや、貰う!頂くけど!」
慌てて声を出して弁当を受け取る。父親のためのものだったとだけあってか、ずっしり重い弁当を手に持った俺に中川は笑顔を作った。
「よかった、助かる。多かったら残していいから」
***
昼休み
結局家から持ってきた握り飯は休み時間に食べてしまった。朝飯代わりだ。弁当箱を持って屋上へ行く。
「お?珍しいな今日は弁当かよぃ」
隣でブン太が声をあげる。まぁな、答えて弁当の包みをとく。大きめの2段弁当。上の段にはおかずが、下の段には梅干が乗っかったご飯がいっぱいに詰め込まれている。中川の親父さんって、結構食う人なんだな。
「へぇ、豪華じゃん」
ブン太がのぞき込んでくる。確かに豪華だ。唐揚げに卵焼き、煮物にポテト、うまそう。
「すごいね」
幸村も感心したように言う。別に隠すことでもないので話すことにした。
「なんかクラスの中川ってやつが、父親の分も間違えて作ったから食ってくれって渡してくれてな。ありがてぇ。」
「ほお」
唐揚げを口に含む。うーん、うまい。
「それって、フラグじゃねぇの?」
同じく弁当を頬張るブン太がにやけ顔で言う。女子からの弁当。俺も少しは期待しなかったわけではない。しかし
「でも中川だしなぁ…」
「どういう子なんじゃ」
「弁当貰っといてこういうこと言っていいのかわかんねぇけど、すっげぇ男っぽいっつーか、話してても女子って感じしねーんだよな」
この弁当だって、本当に父親のモノになるはずだったんだろうし。にしてもうまい。最近ちゃんとした昼食をあまりとっていなかった俺は時々喉に詰まらせながらも弁当をかきこむ。
「いやーこれは始まるになるかもしれねぇぞぃ」
「そうじゃのう」
すっかりからかいモードに入っているブン太と仁王。そんな二人を嗜める柳生。なんか久しぶりに気持ちよく昼飯食えてるなぁ俺。
***
「さんきゅ、うまかったぜ」
「…ん?ああ、どういたしまして」
こいつ忘れてたな。呆れ顔になりつつ空になった弁当箱を返す。受け取った中川は少し驚いた顔をして弁当箱を振る。
「すげー、全部食べてくれたの?」
「うまかったからな」
すっかり腹が膨れた。午後の授業は眠気との戦いになるだろうな。
「そんなにうまかったか、褒めていいぞ」
「褒めてるだろ…毎日でも作って欲しいくらいだぜ」
「ああ、いいよ」
「いや冗談だけど」
今のが成立するのは色々とまずいんじゃないのか?いらんことを考える。
「なーんだ、実験台になってもらおうと思ったのに」
「実験台ってお前」
「ビカチュウのキャラ弁作りたいんだよね」
どこまで本気なのか。でも甘えてもいいのなら、あやかりたい思いも強い。
「まぁ、俺殆ど購買とかで済ますからまた作りすぎたら恵んでくれよ」
思考の結果、そう返すことにした。
***
「結局あの日から1ヶ月くらい中川、弁当作ってくれたよな」
「あの時期キャラ弁にハマっていてね」
貰った弁当が段々とキャラクターの形になっていくのは、見ていて面白かったが、ブン太を中心とした全員にからかわれた。ビカチュウを食う俺はシュールだったらしい。今も皆の携帯にその時の画像が残っている。
「ナカは気が遣えるのか馬鹿なのか分からないね」
「後者じゃろ」
中川のキャラ弁が完成した数日前、父親も再就職し、俺の食事事情も危機を脱した。そう考えると随分タイミングがいいもんだったが。
「えー、俺にもキャラ弁作ってくださいよ」
「じゃあキュアキュアのやつでいい?」
「いやっすよ!」
二人のやりとりに笑う。中川はこういうやつなんだと思う。自覚があるのかないのか知らないが、時々人を助けてくれる。そんなやつがマネージャーになるという話が出て、最初は迷惑がかかるんじゃないかと心配したが、今じゃ慣れたもんだ。
「じゃあジャッカルのキャラ弁にしよう、作りやすそう」
「おい、誰がハゲだって?」