贈り物
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「良かった……生きててくれて……あやちゃん、三ツ谷くんも……」
ボロボロと涙を流しながら言うタケミっちに二人で顔を見合わせる。他の皆も何を言っているのか分からない様子でぽかんとしていた。ただ、マイキーとドラケン、ヒナちゃんだけが大切なものを見るように彼を見つめていた。
「相変わらず、タケミっちは大げさだよね」
「はは、だな」
ぽつぽつと電灯の点る道を小さい声で話しながら帰る。
久し振りに皆で集まった。タケミっちとヒナちゃんの結婚を祝う前祝という名の同窓会のようなものだ。もちろん私も仕事終わりの三ツ谷と一緒に参加した。
全員集まるのは久々だったこともあり、少しハメを外して飲みすぎてしまったかもしれない。
「おい、危ねーぞ」
「あ、ごめん」
覚束ない足取りを心配してか、三ツ谷が私の手を握る。それが嬉しくて、そのままぶんぶんと手を振って歩いた。
「つっても、大げさじゃないかもな」
「何が?」
「タケミっち」
どういうこと?と聞こうとしてやめた。三ツ谷はまっすぐ前を向いたまま。懐かしいものを見るようなその目で、思い出した。
私たちはあまりにもたくさんのものを亡くしすぎてる。
場地やエマちゃん……今は笑っているけど、長い時間を塀の中で過ごした仲間だっている。
「ごめん、私、無神経だった」
「違うって」
私よりもずっと大きな手に力が籠められる。
「生きてて良かったな、俺たち」
ニカっと笑う顔は、いつもの三ツ谷のそれで、なんだか胸のあたりがきゅうと縮こまった。
「……うん」
「はは、真っ赤」
「お酒のせい」
玄関の鍵を三ツ谷が開けて、先に私が中に入る。
ショートブーツを脱いでふらふらと廊下を歩けば、後ろから来た三ツ谷がリビングのソファまでエスコートしてくれた。
「座ってな。水持ってくる」
「はーい」
やっぱり少しは気を張っていたのだろう。家に着いた瞬間にどっと酔いが回った気がする。
ふかふかのソファにお尻をつけたら身体が重たくなって、そのままころりと横に転がった。その様子を見て、ぬっと背もたれから顔を出した三ツ谷が笑う。
「限界?」
「んー」
熱い顔を少しでも覚まそうと両手の平で顔を覆った。
「転がったままでいいから手、どけて。メイク落とすぞ」
「ありがと」
「ん。ちょっと頭上げて」
言われた通り、頭を持ち上げると三ツ谷がするりと滑り込む。「よし」の声で頭を下ろすと、後頭部に筋肉がしっかり詰まった太股の感触。面白くてちょっと笑ってしまう。
「ふふ」
「何?」
「んふふ、寝心地悪い」
「文句言うなー」
メイク落としシートが顔を滑る。自分でやるよりもずっと優しい感触に、大事にされてるなぁと感じた。ひんやりしたシートの感触が気持ち良くてうとうとしているうちに、顔はすっかり綺麗にされておでこを軽く小突かれる。
「終わったぞ。起きて、水のみな」
「ちょうだい」
「零れるから。ほら、起きろって」
ここまできたら甘え切ってやろうと思ったが、そうはいかないらしい。三ツ谷はぐずる私を無理やり起こして水の入ったグラスを持たせる。一口含む。冷たくて美味しい。
「飲んだ」
「飲んだ?じゃあ寝るか」
「うん」
三ツ谷に手を引かれてのろのろと寝室に移動する。
暗い部屋に入って、ベッドまで一直線。道中で来ていた服を脱ぎ散らしたけど、三ツ谷は怒らなかった。
「風邪ひくぞ」
「あついの」
「せめてブランケットくらい着てくれ」
さらさらのブランケットが掛けられて、脱がないようにかその上からぎゅうと抱きしめられた。
「みつや、あつい」
「ん、大人しく寝ろ」
「あついってば」
「明日起きたらいいもんやるから良い子で寝ろ」
ぽんぽんと、寝かしつけるように私のお腹を叩く三ツ谷の手があったかい。
いいもの?と呟きながら、意識がとろとろと融けて行った。
「三ツ谷!?」
「騒ぐと頭に響くぞー」
「っ、つぅ……じゃ、なくて!」
「おはよ、あや」
「おはよう……」
目が覚めて、一番最初に見たのはベッドサイドに置かれた小さな箱。ドラマや映画でしか見たことのないようなベルベットのそれをおそるおそる開ければ、シンプルだけど綺麗な石が着いた指輪。
大急ぎでリビングに向かえば、いつも通りの三ツ谷がいつも通り朝ご飯を用意してくれてる。今日はしじみの味噌汁と玉子焼き、鮭もある!じゃなくて……
「これ!」
ぐい、と指輪の箱を見せると照れたような困ったような顔で近寄ってきた。
私の手から箱を取って、指輪を取り出す。すごく自然な動きで左手を掬われて、薬指に指輪が嵌った。すごい。ぴったり。
「本当はさ、ぱーちんが結婚決めたときから考えてた。でも俺もお前も、仕事が軌道に乗り始めたばっかだったしってうだうだしてたらタケミっちにまで先越されちまったから……遅くなってごめん」
色々な気持ちがこみ上げて来て、視界が滲む。
「ぅえ……」
「……このタイミングで吐くなよ……?」
「違うよぉぉ」
ぼろぼろと勝手に零れる涙。
困ったように笑う三ツ谷が抱きしめてあやすけど、嬉しいしびっくりするし二日酔いで頭は痛いしで涙はどうにも止まらない。
「三ツ谷すきぃい」
「おーおー、お前も三ツ谷になんだぞー」
「うぇぇえん」
「ふは、子どもみたいな泣き方」
涙と鼻水でぐしょぐしょのまま交わしたキスはお酒とみそ汁の味がして最悪だった。
◆◆◆あとがき◆◆◆
クロウド様
2400hitsキリリクありがとうございました!
東リベの幸せな夢……ということで、12年後はきっちり幸せメイカーになりそうな三ツ谷で書かせていただきました!
これからも応援お願いいたします!
七瀬 弥生
ボロボロと涙を流しながら言うタケミっちに二人で顔を見合わせる。他の皆も何を言っているのか分からない様子でぽかんとしていた。ただ、マイキーとドラケン、ヒナちゃんだけが大切なものを見るように彼を見つめていた。
「相変わらず、タケミっちは大げさだよね」
「はは、だな」
ぽつぽつと電灯の点る道を小さい声で話しながら帰る。
久し振りに皆で集まった。タケミっちとヒナちゃんの結婚を祝う前祝という名の同窓会のようなものだ。もちろん私も仕事終わりの三ツ谷と一緒に参加した。
全員集まるのは久々だったこともあり、少しハメを外して飲みすぎてしまったかもしれない。
「おい、危ねーぞ」
「あ、ごめん」
覚束ない足取りを心配してか、三ツ谷が私の手を握る。それが嬉しくて、そのままぶんぶんと手を振って歩いた。
「つっても、大げさじゃないかもな」
「何が?」
「タケミっち」
どういうこと?と聞こうとしてやめた。三ツ谷はまっすぐ前を向いたまま。懐かしいものを見るようなその目で、思い出した。
私たちはあまりにもたくさんのものを亡くしすぎてる。
場地やエマちゃん……今は笑っているけど、長い時間を塀の中で過ごした仲間だっている。
「ごめん、私、無神経だった」
「違うって」
私よりもずっと大きな手に力が籠められる。
「生きてて良かったな、俺たち」
ニカっと笑う顔は、いつもの三ツ谷のそれで、なんだか胸のあたりがきゅうと縮こまった。
「……うん」
「はは、真っ赤」
「お酒のせい」
玄関の鍵を三ツ谷が開けて、先に私が中に入る。
ショートブーツを脱いでふらふらと廊下を歩けば、後ろから来た三ツ谷がリビングのソファまでエスコートしてくれた。
「座ってな。水持ってくる」
「はーい」
やっぱり少しは気を張っていたのだろう。家に着いた瞬間にどっと酔いが回った気がする。
ふかふかのソファにお尻をつけたら身体が重たくなって、そのままころりと横に転がった。その様子を見て、ぬっと背もたれから顔を出した三ツ谷が笑う。
「限界?」
「んー」
熱い顔を少しでも覚まそうと両手の平で顔を覆った。
「転がったままでいいから手、どけて。メイク落とすぞ」
「ありがと」
「ん。ちょっと頭上げて」
言われた通り、頭を持ち上げると三ツ谷がするりと滑り込む。「よし」の声で頭を下ろすと、後頭部に筋肉がしっかり詰まった太股の感触。面白くてちょっと笑ってしまう。
「ふふ」
「何?」
「んふふ、寝心地悪い」
「文句言うなー」
メイク落としシートが顔を滑る。自分でやるよりもずっと優しい感触に、大事にされてるなぁと感じた。ひんやりしたシートの感触が気持ち良くてうとうとしているうちに、顔はすっかり綺麗にされておでこを軽く小突かれる。
「終わったぞ。起きて、水のみな」
「ちょうだい」
「零れるから。ほら、起きろって」
ここまできたら甘え切ってやろうと思ったが、そうはいかないらしい。三ツ谷はぐずる私を無理やり起こして水の入ったグラスを持たせる。一口含む。冷たくて美味しい。
「飲んだ」
「飲んだ?じゃあ寝るか」
「うん」
三ツ谷に手を引かれてのろのろと寝室に移動する。
暗い部屋に入って、ベッドまで一直線。道中で来ていた服を脱ぎ散らしたけど、三ツ谷は怒らなかった。
「風邪ひくぞ」
「あついの」
「せめてブランケットくらい着てくれ」
さらさらのブランケットが掛けられて、脱がないようにかその上からぎゅうと抱きしめられた。
「みつや、あつい」
「ん、大人しく寝ろ」
「あついってば」
「明日起きたらいいもんやるから良い子で寝ろ」
ぽんぽんと、寝かしつけるように私のお腹を叩く三ツ谷の手があったかい。
いいもの?と呟きながら、意識がとろとろと融けて行った。
「三ツ谷!?」
「騒ぐと頭に響くぞー」
「っ、つぅ……じゃ、なくて!」
「おはよ、あや」
「おはよう……」
目が覚めて、一番最初に見たのはベッドサイドに置かれた小さな箱。ドラマや映画でしか見たことのないようなベルベットのそれをおそるおそる開ければ、シンプルだけど綺麗な石が着いた指輪。
大急ぎでリビングに向かえば、いつも通りの三ツ谷がいつも通り朝ご飯を用意してくれてる。今日はしじみの味噌汁と玉子焼き、鮭もある!じゃなくて……
「これ!」
ぐい、と指輪の箱を見せると照れたような困ったような顔で近寄ってきた。
私の手から箱を取って、指輪を取り出す。すごく自然な動きで左手を掬われて、薬指に指輪が嵌った。すごい。ぴったり。
「本当はさ、ぱーちんが結婚決めたときから考えてた。でも俺もお前も、仕事が軌道に乗り始めたばっかだったしってうだうだしてたらタケミっちにまで先越されちまったから……遅くなってごめん」
色々な気持ちがこみ上げて来て、視界が滲む。
「ぅえ……」
「……このタイミングで吐くなよ……?」
「違うよぉぉ」
ぼろぼろと勝手に零れる涙。
困ったように笑う三ツ谷が抱きしめてあやすけど、嬉しいしびっくりするし二日酔いで頭は痛いしで涙はどうにも止まらない。
「三ツ谷すきぃい」
「おーおー、お前も三ツ谷になんだぞー」
「うぇぇえん」
「ふは、子どもみたいな泣き方」
涙と鼻水でぐしょぐしょのまま交わしたキスはお酒とみそ汁の味がして最悪だった。
◆◆◆あとがき◆◆◆
クロウド様
2400hitsキリリクありがとうございました!
東リベの幸せな夢……ということで、12年後はきっちり幸せメイカーになりそうな三ツ谷で書かせていただきました!
これからも応援お願いいたします!
七瀬 弥生