tearless BABY
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昼下がりの渋谷。
テスト前で学校が早く終わるという武道さんを大通りに面したカフェに呼び出した。
端っこのテラス席を確保し、ホットのキャラメルラテを飲みながら待っていると、制服を着崩した武道さんがやってくる。
「ごめん!お待たせ」
「こちらこそ、急に呼び出してごめんね」
片手を上げて店員を呼びメニューを持ってきてもらう。
武道さんはちらりと目を通してからホットコーヒーを注文した。
「意外と大人」
「はは、中身は26歳なもんで……」
「でも炭酸とか好きでしょう?」
「まぁ、うん」
ファーストフードかファミレスにすれば良かったかな、と考えつつ話を始めた。
「別に用事ってわけじゃないの。未来の、12年後の話がしたくて」
「と、言いますと」
「うーん……好きなアーティストとか、ドラマとか」
そう言うと武道さんは腕を組んで考え始めた。そんなに難しい話をしただろうか。
「いや、実はさ……オレ、めちゃくちゃボロいアパートに住んでて、部屋も汚くてさ。レンタルビデオ屋でバイトしながらだらだら生きてたから、葵ちゃんとは話が合わないかも、なんて……」
おそらく武道さんの中での私は、キラキラしたお店の中で綺麗なドレスを着て髪を巻いて、爪も伸ばしてピカピカさせて……そんな派手な女なのだろう。
まずはそこの誤解を解こう。
「実はね、私、借金があるの」
「へ?」
「多分、武道さんでも私でも一生かかっても返せないくらいの借金」
「あ、そうなの……?」
「だからキャバクラで働いてたし、蘭ちゃんの犬になることになった。別にお金なんて持ってない。家だって蘭ちゃんのとこに住む前はボロアパートだったよ」
武道さんは目をぱちぱちさせて私を見ていた。
「ね、レンタルビデオ屋ってことは映画とか格安で借りれるの?」
「え、あー……一応、社割はあったよ。バイトだから割引大きくはなかったけど」
「へぇ、じゃあいっぱい観た?」
「実は映画とかはあんまり……あ、でもドラマは観た」
「例えば?」
挙げられたのはどれもこれも流行った国内ドラマ。不良ものに医療ドラマ、ラブストーリーなどジャンルは様々だ。
「それ私も観た!ヒロインが最後、幼馴染と駆け落ちするやつ」
「うそ!?最後そうなるの!?」
「あ、まだ観てなかった?ごめん」
そうやって昔流行ったドラマの話をしていると段々、お互いに気安くなってくる。話は次第にドラマからファッション、私生活の話なんかに移って、またドラマの話に戻る。そうして、気づけばあたりは薄暗くなっていた。
「やば!もうこんな時間!」
「用事?」
「集会行かないと!」
出欠確認でもあるのだろうか。以外に真面目なんだよな、不良って。なんて思いながら、そろそろ私も帰る時間だと立ち上がった。
「葵ちゃんは今日バイト?」
「今日は休み。明日は朝からなの」
「そっか。頑張ってね!」
「うん、武道さんも」
それぞれお会計を済ませて店を出る。先に扉を開けた武道さんが立ち止まるものだから、その背中にぶつかって私も止まった。
「んぶっ!ちょっと、」
「よ~、葵チャン」
「ん?」
立ち止まったまま動かない武道さんに文句を言おうとすると、その向こうから名前を呼ばれる。聞き覚えのある声に首を傾げ、武道さんの身体からひょっこりと顔を出して覗き込むように向こうを見た。
「あ゛」
店の前には、ポケットに手を突っ込んだまま並んで立つ蘭ちゃんと竜胆くん。そして彼らに向かい合うようにドラケンと三ツ谷、マイキーがいる。
まさに一触即発。彼らの異様な雰囲気に、通行人たちが避けるように距離を取って行く。
「葵、こいつらと知り合いか?」
「えー、と」
「てめーらには関係ないだろーが。葵、さっさと帰って飯にすんぞー」
「おいコラ何勝手に決めてんだ。つーか、なんだよメシって」
今にも殴り掛かりそうなドラケン。それをわざと無視して煽る蘭ちゃん。
このままじゃ往来で喧嘩が始まってしまう。
「ちょ、ちょっと待って。場所、変えませんか……?」
チカチカと切れかけの電灯が明滅する空き地。
話し合いをするには不相応だが、喧嘩になった場合にはおあつらえ向き。いや、そんな心配をするのも変な話だけど。
「で、どういうこと、葵?」
仕切り直し、という風にマイキーが切り出す。
どうやら場所を変えたことで頭が冷えたのだろう。蘭ちゃんは黙ったまま自分の三つ編みの先を弄っているだけだ。
「ええと、先になんであそこに勢ぞろいしてたか聞いても良い?」
「別に。集会前にサイゼでも行くかってケンちんと三ツ谷と歩いてたらタケミっちと葵見つけたから覗いてただけ」
「声かけてよ」
「なんか楽しそうにしてたし。タケミっち浮気とかしてんじゃねーかって監視してたんだよ」
「前科あるしな」
ドラケンの冷たい一言に、武道さんが目を逸らす。
「で、蘭ちゃん達は?」
「お前、蘭ちゃんがあげた服は?」
「今その話してないよ」
関係のない話をして面倒事を避けようとするのは蘭ちゃんの癖だ。遠回しに聞いてくれるなと言われているが、マイキーたちの手前そうもいかない。
「竜胆くん」
「はぁ……兄ちゃんとお前の家行ったら留守だったから探しに出たんだよ。バイト休みなのに家にいねぇって。チームのやつらから情報集めてあの店に行ったらこいつらがいたってだけ」
「なるほど」
「で、服は?」
「あんな高そうなのほいほい着れないよ」
蘭ちゃんの目がス、と細められる。あ、失敗した。思ったときにはすでに遅い。
「は?着れねぇ服なんて渡してねーんだよ」
「着ないとは言ってないよ」
「じゃあ着ろ。今すぐそれ脱げ。脱げねーなら蘭ちゃんが剥いてやる」
完全に機嫌が悪くなってしまった。武道さんがそわそわしているのが分かる。見えないけどきっとマイキーたちも思うところはあるだろう。
彼らに説明をしないといけないとは思うけど、それよりも蘭ちゃんを宥める方が先だ。こんなところで裸にされては困る。こんなところでなくても困る。
「分かった。着るから。帰ろう、ね」
蘭ちゃんの腕を掴んで、空き地の入口へと向かう。すれ違いざまに三ツ谷が何かを言おうとしていたが、そんな隙をみせずにひたすら歩いた。
空き地を出ると蘭ちゃんは私が掴んでいた方の腕を肩に回して、鼻歌を歌い出した。どうやら機嫌は直ったらしい。
「今日は緑のやつな」
「……うん」
ライトグリーンのワンピースがあったな、と思い出しながら返事をする。後ろから竜胆くんのため息が聞こえた。
「蘭ちゃん、こういうのはさ、恋人にやってあげないと」
「は?」
記憶の通りのライトグリーンのワンピースを着て、食事の準備をする。竜胆くんにお皿を出してもらって、三人分の夕食をローテーブルに並べた。
「服」
「葵ちゃんは馬鹿なのかー?」
「兄ちゃん、先食うぞ」
蘭ちゃんの横暴に慣れっこの竜胆くんは先に食事を始める。私はと言えば、蘭ちゃんの話が終わるまではどうにも箸を持つ気に慣れない。躾とはかくも強い力を持つのです。
「男が服を送る意味、分かるか?」
伸びっぱなしの髪の毛の先をくいくいと引きながら馬鹿にするように尋ねる。悪いけれど、そんなことが分からないほど初心ではない。だから言っているのだ。
「蘭ちゃんの思ってるような女にはなれないよ、私」
都合の良い女でもなければ、抱き心地の良い女でもない。ただ、蘭ちゃんにとって目新しくて従順なだけの犬です。あとちょっぴり料理が上手。
「私は蘭ちゃんの犬にはなれるけど、女にはなれないよ」
「は?犬ってなんだ?」
「犬は犬」
わんわん、と握りこぶしを二つ、顔の横で振って見せると竜胆くんまでが箸をとめて怪訝な顔で見てきた。ちょっと恥ずかしいからやめて欲しい。
「前から思ってたんだけどな~。お前、男でもいるのか?」
「恋人って意味ならいないよ」
「恋人って意味じゃないなら?」
「……いる、かも」
大事な人がいる。"あっち"の蘭ちゃんはもう私のことなんか捨てて新しい犬を飼ってるかもだけど。
「帰るわ」
「は、ちょっと兄ちゃん!?」
バン!と壊れそうなほど乱暴にドアを閉めて蘭ちゃんは出て行った。
こんな答え方をすれば、彼が怒る事なんて想像できたのに。
「お前さ……」
「蘭ちゃんは私のこと好きじゃないよ。手に入らないから追いかけるだけ」
「追いかけられてる自覚あんじゃん」
「そこまで鈍感でも初心でもない」
自分に向けられる好意はちゃんと分かってるつもりだ。それを利用すればほんの少しだけ楽に生きられることも知ってる。
でも、ここにいる彼が私の知っている彼とは違うとしても、蘭ちゃんに嘘はつけない。
「飼い主の手を噛むなんてこと、犬にはあってはいけないのです」
「……なんだよ、それ」
「竜胆くん、おかず余るだろうからタッパーに入れて持って帰ってね」
これ以上は何も言わないよ。
そんな意味を込めて、一等綺麗に笑って見せた。
テスト前で学校が早く終わるという武道さんを大通りに面したカフェに呼び出した。
端っこのテラス席を確保し、ホットのキャラメルラテを飲みながら待っていると、制服を着崩した武道さんがやってくる。
「ごめん!お待たせ」
「こちらこそ、急に呼び出してごめんね」
片手を上げて店員を呼びメニューを持ってきてもらう。
武道さんはちらりと目を通してからホットコーヒーを注文した。
「意外と大人」
「はは、中身は26歳なもんで……」
「でも炭酸とか好きでしょう?」
「まぁ、うん」
ファーストフードかファミレスにすれば良かったかな、と考えつつ話を始めた。
「別に用事ってわけじゃないの。未来の、12年後の話がしたくて」
「と、言いますと」
「うーん……好きなアーティストとか、ドラマとか」
そう言うと武道さんは腕を組んで考え始めた。そんなに難しい話をしただろうか。
「いや、実はさ……オレ、めちゃくちゃボロいアパートに住んでて、部屋も汚くてさ。レンタルビデオ屋でバイトしながらだらだら生きてたから、葵ちゃんとは話が合わないかも、なんて……」
おそらく武道さんの中での私は、キラキラしたお店の中で綺麗なドレスを着て髪を巻いて、爪も伸ばしてピカピカさせて……そんな派手な女なのだろう。
まずはそこの誤解を解こう。
「実はね、私、借金があるの」
「へ?」
「多分、武道さんでも私でも一生かかっても返せないくらいの借金」
「あ、そうなの……?」
「だからキャバクラで働いてたし、蘭ちゃんの犬になることになった。別にお金なんて持ってない。家だって蘭ちゃんのとこに住む前はボロアパートだったよ」
武道さんは目をぱちぱちさせて私を見ていた。
「ね、レンタルビデオ屋ってことは映画とか格安で借りれるの?」
「え、あー……一応、社割はあったよ。バイトだから割引大きくはなかったけど」
「へぇ、じゃあいっぱい観た?」
「実は映画とかはあんまり……あ、でもドラマは観た」
「例えば?」
挙げられたのはどれもこれも流行った国内ドラマ。不良ものに医療ドラマ、ラブストーリーなどジャンルは様々だ。
「それ私も観た!ヒロインが最後、幼馴染と駆け落ちするやつ」
「うそ!?最後そうなるの!?」
「あ、まだ観てなかった?ごめん」
そうやって昔流行ったドラマの話をしていると段々、お互いに気安くなってくる。話は次第にドラマからファッション、私生活の話なんかに移って、またドラマの話に戻る。そうして、気づけばあたりは薄暗くなっていた。
「やば!もうこんな時間!」
「用事?」
「集会行かないと!」
出欠確認でもあるのだろうか。以外に真面目なんだよな、不良って。なんて思いながら、そろそろ私も帰る時間だと立ち上がった。
「葵ちゃんは今日バイト?」
「今日は休み。明日は朝からなの」
「そっか。頑張ってね!」
「うん、武道さんも」
それぞれお会計を済ませて店を出る。先に扉を開けた武道さんが立ち止まるものだから、その背中にぶつかって私も止まった。
「んぶっ!ちょっと、」
「よ~、葵チャン」
「ん?」
立ち止まったまま動かない武道さんに文句を言おうとすると、その向こうから名前を呼ばれる。聞き覚えのある声に首を傾げ、武道さんの身体からひょっこりと顔を出して覗き込むように向こうを見た。
「あ゛」
店の前には、ポケットに手を突っ込んだまま並んで立つ蘭ちゃんと竜胆くん。そして彼らに向かい合うようにドラケンと三ツ谷、マイキーがいる。
まさに一触即発。彼らの異様な雰囲気に、通行人たちが避けるように距離を取って行く。
「葵、こいつらと知り合いか?」
「えー、と」
「てめーらには関係ないだろーが。葵、さっさと帰って飯にすんぞー」
「おいコラ何勝手に決めてんだ。つーか、なんだよメシって」
今にも殴り掛かりそうなドラケン。それをわざと無視して煽る蘭ちゃん。
このままじゃ往来で喧嘩が始まってしまう。
「ちょ、ちょっと待って。場所、変えませんか……?」
チカチカと切れかけの電灯が明滅する空き地。
話し合いをするには不相応だが、喧嘩になった場合にはおあつらえ向き。いや、そんな心配をするのも変な話だけど。
「で、どういうこと、葵?」
仕切り直し、という風にマイキーが切り出す。
どうやら場所を変えたことで頭が冷えたのだろう。蘭ちゃんは黙ったまま自分の三つ編みの先を弄っているだけだ。
「ええと、先になんであそこに勢ぞろいしてたか聞いても良い?」
「別に。集会前にサイゼでも行くかってケンちんと三ツ谷と歩いてたらタケミっちと葵見つけたから覗いてただけ」
「声かけてよ」
「なんか楽しそうにしてたし。タケミっち浮気とかしてんじゃねーかって監視してたんだよ」
「前科あるしな」
ドラケンの冷たい一言に、武道さんが目を逸らす。
「で、蘭ちゃん達は?」
「お前、蘭ちゃんがあげた服は?」
「今その話してないよ」
関係のない話をして面倒事を避けようとするのは蘭ちゃんの癖だ。遠回しに聞いてくれるなと言われているが、マイキーたちの手前そうもいかない。
「竜胆くん」
「はぁ……兄ちゃんとお前の家行ったら留守だったから探しに出たんだよ。バイト休みなのに家にいねぇって。チームのやつらから情報集めてあの店に行ったらこいつらがいたってだけ」
「なるほど」
「で、服は?」
「あんな高そうなのほいほい着れないよ」
蘭ちゃんの目がス、と細められる。あ、失敗した。思ったときにはすでに遅い。
「は?着れねぇ服なんて渡してねーんだよ」
「着ないとは言ってないよ」
「じゃあ着ろ。今すぐそれ脱げ。脱げねーなら蘭ちゃんが剥いてやる」
完全に機嫌が悪くなってしまった。武道さんがそわそわしているのが分かる。見えないけどきっとマイキーたちも思うところはあるだろう。
彼らに説明をしないといけないとは思うけど、それよりも蘭ちゃんを宥める方が先だ。こんなところで裸にされては困る。こんなところでなくても困る。
「分かった。着るから。帰ろう、ね」
蘭ちゃんの腕を掴んで、空き地の入口へと向かう。すれ違いざまに三ツ谷が何かを言おうとしていたが、そんな隙をみせずにひたすら歩いた。
空き地を出ると蘭ちゃんは私が掴んでいた方の腕を肩に回して、鼻歌を歌い出した。どうやら機嫌は直ったらしい。
「今日は緑のやつな」
「……うん」
ライトグリーンのワンピースがあったな、と思い出しながら返事をする。後ろから竜胆くんのため息が聞こえた。
「蘭ちゃん、こういうのはさ、恋人にやってあげないと」
「は?」
記憶の通りのライトグリーンのワンピースを着て、食事の準備をする。竜胆くんにお皿を出してもらって、三人分の夕食をローテーブルに並べた。
「服」
「葵ちゃんは馬鹿なのかー?」
「兄ちゃん、先食うぞ」
蘭ちゃんの横暴に慣れっこの竜胆くんは先に食事を始める。私はと言えば、蘭ちゃんの話が終わるまではどうにも箸を持つ気に慣れない。躾とはかくも強い力を持つのです。
「男が服を送る意味、分かるか?」
伸びっぱなしの髪の毛の先をくいくいと引きながら馬鹿にするように尋ねる。悪いけれど、そんなことが分からないほど初心ではない。だから言っているのだ。
「蘭ちゃんの思ってるような女にはなれないよ、私」
都合の良い女でもなければ、抱き心地の良い女でもない。ただ、蘭ちゃんにとって目新しくて従順なだけの犬です。あとちょっぴり料理が上手。
「私は蘭ちゃんの犬にはなれるけど、女にはなれないよ」
「は?犬ってなんだ?」
「犬は犬」
わんわん、と握りこぶしを二つ、顔の横で振って見せると竜胆くんまでが箸をとめて怪訝な顔で見てきた。ちょっと恥ずかしいからやめて欲しい。
「前から思ってたんだけどな~。お前、男でもいるのか?」
「恋人って意味ならいないよ」
「恋人って意味じゃないなら?」
「……いる、かも」
大事な人がいる。"あっち"の蘭ちゃんはもう私のことなんか捨てて新しい犬を飼ってるかもだけど。
「帰るわ」
「は、ちょっと兄ちゃん!?」
バン!と壊れそうなほど乱暴にドアを閉めて蘭ちゃんは出て行った。
こんな答え方をすれば、彼が怒る事なんて想像できたのに。
「お前さ……」
「蘭ちゃんは私のこと好きじゃないよ。手に入らないから追いかけるだけ」
「追いかけられてる自覚あんじゃん」
「そこまで鈍感でも初心でもない」
自分に向けられる好意はちゃんと分かってるつもりだ。それを利用すればほんの少しだけ楽に生きられることも知ってる。
でも、ここにいる彼が私の知っている彼とは違うとしても、蘭ちゃんに嘘はつけない。
「飼い主の手を噛むなんてこと、犬にはあってはいけないのです」
「……なんだよ、それ」
「竜胆くん、おかず余るだろうからタッパーに入れて持って帰ってね」
これ以上は何も言わないよ。
そんな意味を込めて、一等綺麗に笑って見せた。
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