tearless BABY
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「葵、これあげる。ルナとマナのついでで作りすぎちまってさ」
「葵ーこれ着るか?店の嬢の古着だけど」
「葵ちゃん!スニーカーのセールあンだけど一緒に行かね?」
狭いアパートの一室に、少しずつ『私のもの』が増えていく。
蘭ちゃんと一緒に暮らしていたときは、蘭ちゃんの選んだものが置かれていただけだから自分のものって意識がなかった。だから何だか変な気分。
「なんかごちゃごちゃしてきたな」
「そうなんだよね……そろそろ片付けないと……」
床に座って携帯の小さな画面でテレビを見ながら言う竜胆くん。
なんで居るの、とかいつまで居るの、とかはもう言わないことにした。今まで意識したことなかったけど、この兄弟は意外にそっくりなのだ。特に、自分のやりたいことはどんな手を使っても曲げないところとか。
「今日休み?」
「ううん。遅番」
「へぇ」
自分から聞いたくせにどうでも良さそうな返事。ほら、こういうところもそっくり。
だから気にしたって無駄だろう。彼のことは放っておいて片付けを始めることにした。
薄っぺらいマッドレスを敷いたベッドに三ツ谷から貰ったぬいぐるみを並べる。くま、うさぎ、いぬ……肉食動物に囲まれたら可哀想だからうさぎはちょっと離してあげよう。いやでも一匹は可哀想か?
「それ必要かよ」
「え?」
「どっちでもよくね?」
「いや、そうなんだけど……」
なんだか気になり始めたら止まらなくなってしまったのだ。三ツ谷が可愛く作ってるものだから余計に。
「じゃあうさぎだけ離しとけよ」
「一匹じゃ可哀想じゃない?」
「うさぎは縄張り意識強いからむしろ群れに入れるとストレスで死ぬぞ」
「嘘!?」
竜胆くんの一言でうさぎのポジションが決まる。
「よし」
「つまんねぇことこだわるのな」
「つまんないっていうか、貰い物だから大事にしたい」
何も持ってないから、せめてもらったものくらいは丁寧に扱いたいのだ。そう言うと、竜胆くんは理解ができないという顔をした。そりゃそうだろう。きっと彼らはいろんなものを持っている。お金も、名声も。少なくとも私の知っている蘭ちゃんは欲しいものは全部手に入れていた。
「じゃあオレがあげたモンも大事にしてくれんの?」
「兄貴」
「ただいま~」
勝手知ったる、と言わんばかりに平然と部屋に入ってきた蘭ちゃんの手には紙袋が二つ。
「あとで宅配来るから」
「何買ったんだよ」
「棚」
「棚ァ?」
竜胆くんが目をまんまるにして叫ぶ。
「竜胆組み立てよろしくな~」
「はぁ!?なんで俺が!」
「兄ちゃん買い物して疲れたんだよ」
どさっと放り投げられた紙袋には私でも知ってるようなブランドロゴが入っている。中には薄い紙で包まれた、おそらく服……。
「蘭ちゃん、まさかとは思うけどここに住むつもりじゃ……」
「こんな狭いとこで暮らせると思うか?」
いいえ、多分あなたには無理です。
「やる」
「え」
「こっち服、こっち靴」
にこにこ上機嫌な蘭ちゃんは紙袋を指差してどっかりベッドに座りこんだ。
さっさと開けろ。言外にそう言われているような気がしておそるおそる包みをほどいていく。
「うわぁ……」
絶対に高い。そんな服が次々出てきた。
「ちゃ~んと着ろよ」
「いや、でも……」
「助けてやっただろ?」
それはご飯作ったのでチャラでは……。そんな言葉は恐ろしくて口に出せなかった。
結局「大事にします」と、着るとも着ないとも答えずにその場は濁した。
ハロウィンのあの日以来、蘭ちゃんと竜胆くんは時々こうやって遊びに来るようになった。何をするでもなくごろごろしたり、ご飯を食べるだけだったり、適当に時間を潰して帰っていく。今日も届いた棚を竜胆くんが組み立て終わったら帰って行った。
「いらっしゃいませー」
ピロリロ鳴る入店音に適当に声を出しながら煙草の補充をする。
「葵ちゃん」
「ん?あ、武道くん」
ハロウィンから数日後、26歳の『武道さん』は未来へ帰って、こちらには『武道くん』が戻って来たらしい。私のことを知らない中学生の彼は、ほとんどコンビニには立ち寄らなくなったのだけど、珍しいこともあるものだ。
「ごめん、葵ちゃん」
「武道くん?」
「もう一度助けて欲しい」
「……もしかして、武道さん?」
黄色い頭がコクリと頷く。
他にお客さんはいない。タバコの什器を置いて、カウンターの前にいる武道さんに向き直った。
「未来、変わってなかった?」
「変わってた。変わってたよ」
「じゃあ、」
「でもヒナは死んだ」
悲壮な顔だった。きっと私には想像もできない辛いことがあったんだろう。
「私にできることある?」
「分からない。けど、未来のこと知ってるのは葵ちゃんだけだから」
頼れる人がいない不安な気持ちはよく分かる。
正直私には何もできない。喧嘩もできなければ、お金も、権力も何もないのだ。それでも、
「話くらいは聞くよ。元々本職なもんで」
お酒の席で鍛えた営業スマイルでそう言うと、武道さんは力なく笑った。
「あ?何してんだ、タケミっち」
「あ、ドラケンくん……」
「最近ここ来ねえと思ってたのに。どうした?」
「いや、その~……」
「喧嘩してたの。私と」
「はぁ?」
素直すぎる彼には上手い嘘は思いつかなかったらしいから助け船を出してやる。
「で、さっき謝ってもらったところ。仕方ないから許してあげます」
「あ、ありがとう?」
「なんだそりゃ」
面白そうに笑って、ドラケンはレジ横に置いてあるどら焼きをカウンターに置いた。
「125円です」
「はいよ」
「ちょうどお預かりします」
「タケミっち何かいる?今なら奢ってやるよ」
「え!?いやいやいや!そんな……」
「んじゃ葵、肉まんとあんまんひとつずつ追加」
「はぁい」
什器からほかほかの中華まんを取り出して袋に入れる。
でかい図体している彼だが、なんだかんだ中学生。からしはいつも要らないというので、入れない。
「葵、何時まで?」
「今日は2時まで」
「は?遅くねぇ?」
「遅番だもん」
「まぁ良いわ。集会終わってちょっと流したら送ってってやるから。一人で帰るなよ?」
ありがとう、と返して袋を渡す。ドラケンと三ツ谷は私が暗くなってから帰る時には送って行ってくれるようになった。多分、店長や加代子さんに頼まれているのだろう。どうせ遅くまで遊んでるならついでに送ってあげなさい!ってとこだ。
正直、この辺は灯りも少ないし、彼らのようなやんちゃな子が多いから助かってはいる。
「武道くん、またね」
「あ、うん。また!」
「おーい、タケミっち。てめーまたヒナちゃんに殴られっぞ」
「いや!これは違うんですよ、ドラケンくん!」
自動ドアが閉まって声が聞こえなくなる。そこで、武道さんの話を聞いて自分が失望と、ちょっとの安堵を覚えていることに気が付いた。
「最低だ」
自分ひとりが不幸じゃなくて良かった、なんて。そんなことを考えている自分に嫌悪する。
頭をぶんぶんと振って、途中だったたばこの補充を再開した。
竜胆くんが作ってくれた棚に、散らかったままのものを並べていく。知らない間に押し入れをクローゼットみたいにしてくれていたらしいから、そこにも貰い物の服や靴を仕舞った。
「流石に普段着にはできないぞ、これ」
近所の安いコインランドリーでは絶対に洗えないような良い生地の服にゾッとした。
これはいざという時に着ることにしよう。正直、いざという時がいつなのかは分からないけど。おしゃれが必要な時っていつだ?
合コン。こっちに合コンセッティングしてくれるような友達もいないのに?
アフタヌーンティー。2005年にアフタヌーンティーって流行ってたっけ?っていうかこれも一緒に行くような友達いないからダメ。
デート。これは一番ないな。
同伴……?今はそういう仕事してない。
うんうん唸りながら考えても答えは出なかったから、諦めて綺麗にしまっておくことに決めた。
「ふう」
とりあえず、床に置きっぱなしになっていたものたちは綺麗に片付いた。
一応お礼を言っておこうと、携帯のカメラを起動して棚の写真を撮る。メール画面を開いて、写真を添付して送った。
『おかげさまで部屋がきれいになりました。ありがとうございます』
うにうにと動くドッドでできた絵文字を使って感謝の気持ちを表す。きっと返事は来ないだろうけど、これは自己満足、と思って携帯を閉じる。
いつの間にやら時刻は4時を回りそうになっていた。バイトは昼からだから寝る時間はあるけど、さすがにそろそろ寝ないとしんどい。電気を消して、ベッドに転がった。枕元には三ツ谷のぬいぐるみ。
「この部屋も随分変わっちゃったねぇ」
そう言えば、大分髪が伸びた気がする。
段々、今までの私から遠のいているような気がしてどきりとした。もし元の時代に戻っても蘭ちゃんに気づかれなかったらどうしよう。要らないって言われたら……。どきどきと心臓が変な音を立てる。
いけない。夜中に考え事をするのは良くない。
目を瞑って無理やり眠りに落ちようとする。
明日、武道さんに連絡をしよう。向こうの話が聞きたい。肝心なことは知らなくてもいい。アーティストとか、流行ってた歌とか、そんなので良い。忘れないように。変わらないように。
ドキドキを抑えつけるように大きく息を吸い込んだ。
「葵ーこれ着るか?店の嬢の古着だけど」
「葵ちゃん!スニーカーのセールあンだけど一緒に行かね?」
狭いアパートの一室に、少しずつ『私のもの』が増えていく。
蘭ちゃんと一緒に暮らしていたときは、蘭ちゃんの選んだものが置かれていただけだから自分のものって意識がなかった。だから何だか変な気分。
「なんかごちゃごちゃしてきたな」
「そうなんだよね……そろそろ片付けないと……」
床に座って携帯の小さな画面でテレビを見ながら言う竜胆くん。
なんで居るの、とかいつまで居るの、とかはもう言わないことにした。今まで意識したことなかったけど、この兄弟は意外にそっくりなのだ。特に、自分のやりたいことはどんな手を使っても曲げないところとか。
「今日休み?」
「ううん。遅番」
「へぇ」
自分から聞いたくせにどうでも良さそうな返事。ほら、こういうところもそっくり。
だから気にしたって無駄だろう。彼のことは放っておいて片付けを始めることにした。
薄っぺらいマッドレスを敷いたベッドに三ツ谷から貰ったぬいぐるみを並べる。くま、うさぎ、いぬ……肉食動物に囲まれたら可哀想だからうさぎはちょっと離してあげよう。いやでも一匹は可哀想か?
「それ必要かよ」
「え?」
「どっちでもよくね?」
「いや、そうなんだけど……」
なんだか気になり始めたら止まらなくなってしまったのだ。三ツ谷が可愛く作ってるものだから余計に。
「じゃあうさぎだけ離しとけよ」
「一匹じゃ可哀想じゃない?」
「うさぎは縄張り意識強いからむしろ群れに入れるとストレスで死ぬぞ」
「嘘!?」
竜胆くんの一言でうさぎのポジションが決まる。
「よし」
「つまんねぇことこだわるのな」
「つまんないっていうか、貰い物だから大事にしたい」
何も持ってないから、せめてもらったものくらいは丁寧に扱いたいのだ。そう言うと、竜胆くんは理解ができないという顔をした。そりゃそうだろう。きっと彼らはいろんなものを持っている。お金も、名声も。少なくとも私の知っている蘭ちゃんは欲しいものは全部手に入れていた。
「じゃあオレがあげたモンも大事にしてくれんの?」
「兄貴」
「ただいま~」
勝手知ったる、と言わんばかりに平然と部屋に入ってきた蘭ちゃんの手には紙袋が二つ。
「あとで宅配来るから」
「何買ったんだよ」
「棚」
「棚ァ?」
竜胆くんが目をまんまるにして叫ぶ。
「竜胆組み立てよろしくな~」
「はぁ!?なんで俺が!」
「兄ちゃん買い物して疲れたんだよ」
どさっと放り投げられた紙袋には私でも知ってるようなブランドロゴが入っている。中には薄い紙で包まれた、おそらく服……。
「蘭ちゃん、まさかとは思うけどここに住むつもりじゃ……」
「こんな狭いとこで暮らせると思うか?」
いいえ、多分あなたには無理です。
「やる」
「え」
「こっち服、こっち靴」
にこにこ上機嫌な蘭ちゃんは紙袋を指差してどっかりベッドに座りこんだ。
さっさと開けろ。言外にそう言われているような気がしておそるおそる包みをほどいていく。
「うわぁ……」
絶対に高い。そんな服が次々出てきた。
「ちゃ~んと着ろよ」
「いや、でも……」
「助けてやっただろ?」
それはご飯作ったのでチャラでは……。そんな言葉は恐ろしくて口に出せなかった。
結局「大事にします」と、着るとも着ないとも答えずにその場は濁した。
ハロウィンのあの日以来、蘭ちゃんと竜胆くんは時々こうやって遊びに来るようになった。何をするでもなくごろごろしたり、ご飯を食べるだけだったり、適当に時間を潰して帰っていく。今日も届いた棚を竜胆くんが組み立て終わったら帰って行った。
「いらっしゃいませー」
ピロリロ鳴る入店音に適当に声を出しながら煙草の補充をする。
「葵ちゃん」
「ん?あ、武道くん」
ハロウィンから数日後、26歳の『武道さん』は未来へ帰って、こちらには『武道くん』が戻って来たらしい。私のことを知らない中学生の彼は、ほとんどコンビニには立ち寄らなくなったのだけど、珍しいこともあるものだ。
「ごめん、葵ちゃん」
「武道くん?」
「もう一度助けて欲しい」
「……もしかして、武道さん?」
黄色い頭がコクリと頷く。
他にお客さんはいない。タバコの什器を置いて、カウンターの前にいる武道さんに向き直った。
「未来、変わってなかった?」
「変わってた。変わってたよ」
「じゃあ、」
「でもヒナは死んだ」
悲壮な顔だった。きっと私には想像もできない辛いことがあったんだろう。
「私にできることある?」
「分からない。けど、未来のこと知ってるのは葵ちゃんだけだから」
頼れる人がいない不安な気持ちはよく分かる。
正直私には何もできない。喧嘩もできなければ、お金も、権力も何もないのだ。それでも、
「話くらいは聞くよ。元々本職なもんで」
お酒の席で鍛えた営業スマイルでそう言うと、武道さんは力なく笑った。
「あ?何してんだ、タケミっち」
「あ、ドラケンくん……」
「最近ここ来ねえと思ってたのに。どうした?」
「いや、その~……」
「喧嘩してたの。私と」
「はぁ?」
素直すぎる彼には上手い嘘は思いつかなかったらしいから助け船を出してやる。
「で、さっき謝ってもらったところ。仕方ないから許してあげます」
「あ、ありがとう?」
「なんだそりゃ」
面白そうに笑って、ドラケンはレジ横に置いてあるどら焼きをカウンターに置いた。
「125円です」
「はいよ」
「ちょうどお預かりします」
「タケミっち何かいる?今なら奢ってやるよ」
「え!?いやいやいや!そんな……」
「んじゃ葵、肉まんとあんまんひとつずつ追加」
「はぁい」
什器からほかほかの中華まんを取り出して袋に入れる。
でかい図体している彼だが、なんだかんだ中学生。からしはいつも要らないというので、入れない。
「葵、何時まで?」
「今日は2時まで」
「は?遅くねぇ?」
「遅番だもん」
「まぁ良いわ。集会終わってちょっと流したら送ってってやるから。一人で帰るなよ?」
ありがとう、と返して袋を渡す。ドラケンと三ツ谷は私が暗くなってから帰る時には送って行ってくれるようになった。多分、店長や加代子さんに頼まれているのだろう。どうせ遅くまで遊んでるならついでに送ってあげなさい!ってとこだ。
正直、この辺は灯りも少ないし、彼らのようなやんちゃな子が多いから助かってはいる。
「武道くん、またね」
「あ、うん。また!」
「おーい、タケミっち。てめーまたヒナちゃんに殴られっぞ」
「いや!これは違うんですよ、ドラケンくん!」
自動ドアが閉まって声が聞こえなくなる。そこで、武道さんの話を聞いて自分が失望と、ちょっとの安堵を覚えていることに気が付いた。
「最低だ」
自分ひとりが不幸じゃなくて良かった、なんて。そんなことを考えている自分に嫌悪する。
頭をぶんぶんと振って、途中だったたばこの補充を再開した。
竜胆くんが作ってくれた棚に、散らかったままのものを並べていく。知らない間に押し入れをクローゼットみたいにしてくれていたらしいから、そこにも貰い物の服や靴を仕舞った。
「流石に普段着にはできないぞ、これ」
近所の安いコインランドリーでは絶対に洗えないような良い生地の服にゾッとした。
これはいざという時に着ることにしよう。正直、いざという時がいつなのかは分からないけど。おしゃれが必要な時っていつだ?
合コン。こっちに合コンセッティングしてくれるような友達もいないのに?
アフタヌーンティー。2005年にアフタヌーンティーって流行ってたっけ?っていうかこれも一緒に行くような友達いないからダメ。
デート。これは一番ないな。
同伴……?今はそういう仕事してない。
うんうん唸りながら考えても答えは出なかったから、諦めて綺麗にしまっておくことに決めた。
「ふう」
とりあえず、床に置きっぱなしになっていたものたちは綺麗に片付いた。
一応お礼を言っておこうと、携帯のカメラを起動して棚の写真を撮る。メール画面を開いて、写真を添付して送った。
『おかげさまで部屋がきれいになりました。ありがとうございます』
うにうにと動くドッドでできた絵文字を使って感謝の気持ちを表す。きっと返事は来ないだろうけど、これは自己満足、と思って携帯を閉じる。
いつの間にやら時刻は4時を回りそうになっていた。バイトは昼からだから寝る時間はあるけど、さすがにそろそろ寝ないとしんどい。電気を消して、ベッドに転がった。枕元には三ツ谷のぬいぐるみ。
「この部屋も随分変わっちゃったねぇ」
そう言えば、大分髪が伸びた気がする。
段々、今までの私から遠のいているような気がしてどきりとした。もし元の時代に戻っても蘭ちゃんに気づかれなかったらどうしよう。要らないって言われたら……。どきどきと心臓が変な音を立てる。
いけない。夜中に考え事をするのは良くない。
目を瞑って無理やり眠りに落ちようとする。
明日、武道さんに連絡をしよう。向こうの話が聞きたい。肝心なことは知らなくてもいい。アーティストとか、流行ってた歌とか、そんなので良い。忘れないように。変わらないように。
ドキドキを抑えつけるように大きく息を吸い込んだ。