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オニと人間(未完

「名前を変える」

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貴女の名前は?

_



_「"妖"?」

女「はい。この旅館は私の父が営んでいたのですが…ここ半年ほど前に、お客さまから『妖を見た』と言われたのです。

その一件以来、他の客や従業員からも霊が出たなどのことが相次ぎ、客足が遠のき始めました。

そして売上が半分を下回った時、街一番の道士様に"妖祓い"を頼んだのですですが」

_「この街で1番?」

女「そうです。門番から聞いたかと思いますが、北区と南区の中心に《御殿》と呼ばれる道士様達の施設が建っておりまして、大きな門と周辺を高い柵で囲ってあるので行けば一目で分かります。

その中には役場や宿場、境内と道士様達の長である方の屋敷があるんです」

_「その長に断られたの?」


**の言葉に若女将は俯き、首を横に振る。


女「いいえ…道士長様に祓って頂けはしたのですが」

ツ「一時的なものだった、と?」

女「その通りなのです」


話の流れからツォンは直ぐに察した様だ。


女「一月も経たぬ内に再び妖が出るようになって、その噂も広まり…ついには町民すら近づかなくなってしまいました。

父も床に伏せってしまいまして、私が父の代わりに店に立ち、もう一度『祓ってほしい』と道士長様にお願いしに行ったのですが…今の私たちには納められない額を提示されてしまって…もう」


若女将は両手で顔を覆い、泣き出してしまった。


_「酷い…ねぇ、ツォン」

ツ「わかっている。ちょうど泊まれるところも探していた所だしな」

女「…ではっ」


若女将が顔を上げて二人を見る。


_「うん、私たちに任せて!」


**の笑顔に見て、また彼女は嬉しそうに涙を流す。


女「滞在中の料金は戴きません、その代わりに経営の軌道が戻るまで『祓い料』をお待ちいただきたいのです」

_「別に良いよね」

ツ「元より代金など貰うつもりはない、宿代をタダにして貰えるだけで十分だ」

_「そうだよ、こんな立派な旅館に泊まらせて貰えるなんてお得が過ぎるよ!」

女「っあ、ありがとうございます!!本当に…」


若女将が深々と頭を下げる。


_「他に従業員は、どんな人がいるの?」

女「先代の頃から支えてくれている年配の方々が残ってくれています。板前と下足番、男衆の3人と仲居が4人ですね。いつでも再開できるようにと毎日の手入れを欠かさずにいてくれてるんです」

_「皆、この旅館のこと大好きなんですね」

女「とても有り難いことです。お客が離れても昔から居る人たちが残って側にいてくれるだけで、こんなに心強いなんて」

_「うんうんッ」

女「住み込みなので館内で会えます」


涙を拭った若女将が、紙を差し出した。


女「これが、ここの案内見取り図になります」


三つ折りの紙を開く。


_「結構、広いんだね〜」

ツ「風呂が大きそうだな」

女「うちの自慢の一つなんです。近くの温泉を引いてきているので狭いですが露天風呂もあります」

_「え、温泉!それは入らなきゃ。まともなお風呂、久しぶりなんだよね」


ウキウキした様子の**に、若女将は元気づけられたらしく微笑みながら立ち上がる。


女「今日は、ゆっくりお休みください。館内は自由に歩き回ってもらって大丈夫です、皆にも伝えておきますから。食事の用意しておきますね」


そう言って彼女は部屋から出て行った。

少ない荷物を部屋の隅に置いて、襖を開けた棚から浴衣を取り出す。


_「早く行こ!」

ツ「はいはい」


子供みたいにハシャぐ**の後を、案内図を片手に着いて歩いていくツォン。


_「ほんと静かだね」

ツ「この広さで他に客が居ないとなるとな」





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