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オニと人間(未完
「名前を変える」
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ーーー 以下は口伝のみで伝えられている、
とあるオニの伝説である ーーー
遥か昔、とある山にオニが住んでいた。
その山の麓には村があった。
ある日、村の子供が山に入って遊んでいた時、オニに出会った。
長い間ひとりぼっちだったオニは、すぐに子供と仲良くなった。
その子供が『夜になると村に妖がやってきて田畑を荒らして困っている』と大人たちが話していたことを伝えると、オニが「悪い妖はやっつけてやる」と約束し、そして見事に村人たちの前で妖を退治して見せた。
村人と子供たちは大層に喜び、子供が友達だと自慢するオニを村は受け入れ感謝した。
嬉しかったオニは、その村に近づく獣や妖を打ち払い守り続け、村が平和になり幸せな生活が送っていけることをオニのおかげだと喜んだ。
それから数十年の月日が流れた。
オニとの共存が当たり前になっていた頃、
近年、稀に見ぬ大嵐で長雨が降り続いていた。
元々、多くの水を含んでいた山の土が大雨に流され始め、地崩れを起こした。
山の麓に寄り添うようにあった村は流れ込んだ土砂によって、半分近くが土砂で埋まってしまった。
家畜も田畑も村人も飲み込んだ土砂崩れを山から見ていたオニが、心配して村へと駆けつけた。
絶望と哀しみに暮れていた村人の側に近づいた時、一石が投じられた。
村人は叫んだ。
「どうして助けてくれなかったんだ!!」
その村人は、昔からオニの存在を快く思っていない者たちの一人だった。
自然による災害はオニのせいではなく、それをたった一人のオニが守れる規模ではないと分かっていても、村人の行き場のない思いはオニに向けられた。
「お前のせいで村が壊れた!」
「お前みたいな妖がいるから神が怒ったんだ!」
「この厄病神が‼️」
今まで守ってもらっていた感謝も忘れて、次々に村人らは石をオニに投げつけて山へ追い返した。
それからというものオニの姿は見られなくなり、村人は数年を費やして流れ込んだ土砂を取り除き、田畑や家畜を取り戻して村を再起させようと踏ん張った。
だが以前のように守ってくれるモノもおらず、隣の村からも遠く離れていた村は、度重なる獣や妖の被害に苛まされた。
困り果てた村人は、また土砂崩れなどの災害が起きないようにと、山道の行き止まりに小柄ながらも立派な祠を建てて供物を捧げるようになった。
村で獲れた食物や肉を、そして時には「口減らし」を理由に幼い者が供物として捧げられた。
一月後に祠にやってくると前の月に捧げた供物が綺麗に無くなっていることで、村人たちは山神が頂いているのだと信じた。
これで、もうあのような不幸が起きることはないと安堵もした。
その実、一部の村人たちは捧げた供物はオニの手に渡っていることを知っていた。
祠の奥の小部屋の壁が絡繰仕掛けになっており、人が出入りできるように造ってあったからだ。
一時の感情でオニを退けてしまったことで、村が害悪にされされているのだと解っている村人たちが、また昔のように陰ながらでも村を守ってほしいと願って、時折、手紙も添えた。
口減らしの犠牲となった幼子たちは、オニが山の奥に穴を掘って埋めてやり、墓を作った。
そうして後年、ついに事件が起きてしまった。
なにやら夜なのに村の方が騒がしい。
松明の火がチラホラと動いているのが、山の中腹から見下ろせた。
けれど、もう人間と関わらないと決めていたオニは、ただ眺めていた。
寝床にしている祠の裏に戻った時、人の声がした。
叫びながら祠の戸を叩いている。
「頼む、お願いだっ」
ドンドンと叩く音と声が次第に弱まっていく。
「ともだち…だろ、なぁっ」
立ち去ろうとしたオニの耳に届いた声に、情景が思い浮かぶ。
そしてオニは祠の前に回った。
「***!」
久しぶりに再開した友達は全身に深い切り傷を負っていて、痛々しく、息も絶え絶えだった。
「あぁ、やっと…会えた」
村人に追われているんだという友達を背負って、オニは山の崖を登った。
「やはり、お前は凄いな」
悲しげな表情をするオニに友達は小さく笑い、話し始めた。
「次の供物に、選ばれた」
そう口にした。
「反対したんだ、こんなこと続けたって意味はないって。だって、そうだろ? いくら人を捧げたって村を襲う妖の被害は減りもしない。山神を信じたって変わらないなら、もう一度お前をって」
友達はオニの腕を掴んだ。
「けど、お前のことをよく思わない奴らと賛成してくれた大人たちの間で争いが始まってしまった。
奴らは、言い出した自分を殺そうと追ってきたから山に逃げてきたんだ」
友達はオニの腕に抱かれるように寄りかかる。
「頼む、止めてくれとは言わない。あんな村、無くなってしまえばいい。だから…」
ギュッと抱きしめた友達の体から力が抜けて、ズルッと倒れた。
そこにいるのは人ではない、オニは叫んだ。
咽び泣いた。
夜が明けて朝日が昇る頃、オニは友達を喰い尽くした。
骨は、その場に埋めた。
その足でオニは山を駆け下りて村に向かった。
最初は、山に逃げ込んだ友達を追いかけ探していた村人らに飛びかかる。
「お、お前はっ…ぎゃああああぁ!!」
並びに喉を爪で切り裂けば、短い悲鳴を発して村人らは倒れた。
声を聞きつけ集まってきた村人を次々に襲い殺して、オニは村へ入っていった。
そして、村人、家畜に至るまで全ての命を絶たせた。
それからというもの、オニは山に立ち入る全ての人や妖を殺/害した。
やがてオニの存在を知り、退治するために修練を積む者が現れ始め、それらが対魔師の始祖となったと言われている。
だが、いくら特別な力を持てたとしても、血を浴び続けた凶悪な力に勝ることはできず、無惨に命を散らしていった。
そうして百年を過ぎた時、遂に神仏が現れて、オニを人も妖も近寄れぬ深い山奥に閉じ込めた。
神は言った。
「お前を求める人間は後を絶つことはない。けれど、ここまで辿り着く者には厳しすぎる道のり、多くの者は諦めてしまうだろう。
それでも、もしここに辿り着けた者が良き人間であったなら、お前は、その人間と共に生き、学び、正しいことを身につけなさい。
もし、また外で悪さをするならば、私は何度でも、お前をここに閉じ込めるでしょう」
そう言い残して神は消えた。
オニは何百年も山の奥深く、独りで過ごした。
幾百年の間、後悔していたのか、過去のことを考えたのか定かではない。
ーーこれは各地に残された対魔師の伝承として密かに伝えられている、「山鬼伝説」である。
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ーーー 以下は口伝のみで伝えられている、
とあるオニの伝説である ーーー
遥か昔、とある山にオニが住んでいた。
その山の麓には村があった。
ある日、村の子供が山に入って遊んでいた時、オニに出会った。
長い間ひとりぼっちだったオニは、すぐに子供と仲良くなった。
その子供が『夜になると村に妖がやってきて田畑を荒らして困っている』と大人たちが話していたことを伝えると、オニが「悪い妖はやっつけてやる」と約束し、そして見事に村人たちの前で妖を退治して見せた。
村人と子供たちは大層に喜び、子供が友達だと自慢するオニを村は受け入れ感謝した。
嬉しかったオニは、その村に近づく獣や妖を打ち払い守り続け、村が平和になり幸せな生活が送っていけることをオニのおかげだと喜んだ。
それから数十年の月日が流れた。
オニとの共存が当たり前になっていた頃、
近年、稀に見ぬ大嵐で長雨が降り続いていた。
元々、多くの水を含んでいた山の土が大雨に流され始め、地崩れを起こした。
山の麓に寄り添うようにあった村は流れ込んだ土砂によって、半分近くが土砂で埋まってしまった。
家畜も田畑も村人も飲み込んだ土砂崩れを山から見ていたオニが、心配して村へと駆けつけた。
絶望と哀しみに暮れていた村人の側に近づいた時、一石が投じられた。
村人は叫んだ。
「どうして助けてくれなかったんだ!!」
その村人は、昔からオニの存在を快く思っていない者たちの一人だった。
自然による災害はオニのせいではなく、それをたった一人のオニが守れる規模ではないと分かっていても、村人の行き場のない思いはオニに向けられた。
「お前のせいで村が壊れた!」
「お前みたいな妖がいるから神が怒ったんだ!」
「この厄病神が‼️」
今まで守ってもらっていた感謝も忘れて、次々に村人らは石をオニに投げつけて山へ追い返した。
それからというものオニの姿は見られなくなり、村人は数年を費やして流れ込んだ土砂を取り除き、田畑や家畜を取り戻して村を再起させようと踏ん張った。
だが以前のように守ってくれるモノもおらず、隣の村からも遠く離れていた村は、度重なる獣や妖の被害に苛まされた。
困り果てた村人は、また土砂崩れなどの災害が起きないようにと、山道の行き止まりに小柄ながらも立派な祠を建てて供物を捧げるようになった。
村で獲れた食物や肉を、そして時には「口減らし」を理由に幼い者が供物として捧げられた。
一月後に祠にやってくると前の月に捧げた供物が綺麗に無くなっていることで、村人たちは山神が頂いているのだと信じた。
これで、もうあのような不幸が起きることはないと安堵もした。
その実、一部の村人たちは捧げた供物はオニの手に渡っていることを知っていた。
祠の奥の小部屋の壁が絡繰仕掛けになっており、人が出入りできるように造ってあったからだ。
一時の感情でオニを退けてしまったことで、村が害悪にされされているのだと解っている村人たちが、また昔のように陰ながらでも村を守ってほしいと願って、時折、手紙も添えた。
口減らしの犠牲となった幼子たちは、オニが山の奥に穴を掘って埋めてやり、墓を作った。
そうして後年、ついに事件が起きてしまった。
なにやら夜なのに村の方が騒がしい。
松明の火がチラホラと動いているのが、山の中腹から見下ろせた。
けれど、もう人間と関わらないと決めていたオニは、ただ眺めていた。
寝床にしている祠の裏に戻った時、人の声がした。
叫びながら祠の戸を叩いている。
「頼む、お願いだっ」
ドンドンと叩く音と声が次第に弱まっていく。
「ともだち…だろ、なぁっ」
立ち去ろうとしたオニの耳に届いた声に、情景が思い浮かぶ。
そしてオニは祠の前に回った。
「***!」
久しぶりに再開した友達は全身に深い切り傷を負っていて、痛々しく、息も絶え絶えだった。
「あぁ、やっと…会えた」
村人に追われているんだという友達を背負って、オニは山の崖を登った。
「やはり、お前は凄いな」
悲しげな表情をするオニに友達は小さく笑い、話し始めた。
「次の供物に、選ばれた」
そう口にした。
「反対したんだ、こんなこと続けたって意味はないって。だって、そうだろ? いくら人を捧げたって村を襲う妖の被害は減りもしない。山神を信じたって変わらないなら、もう一度お前をって」
友達はオニの腕を掴んだ。
「けど、お前のことをよく思わない奴らと賛成してくれた大人たちの間で争いが始まってしまった。
奴らは、言い出した自分を殺そうと追ってきたから山に逃げてきたんだ」
友達はオニの腕に抱かれるように寄りかかる。
「頼む、止めてくれとは言わない。あんな村、無くなってしまえばいい。だから…」
ギュッと抱きしめた友達の体から力が抜けて、ズルッと倒れた。
そこにいるのは人ではない、オニは叫んだ。
咽び泣いた。
夜が明けて朝日が昇る頃、オニは友達を喰い尽くした。
骨は、その場に埋めた。
その足でオニは山を駆け下りて村に向かった。
最初は、山に逃げ込んだ友達を追いかけ探していた村人らに飛びかかる。
「お、お前はっ…ぎゃああああぁ!!」
並びに喉を爪で切り裂けば、短い悲鳴を発して村人らは倒れた。
声を聞きつけ集まってきた村人を次々に襲い殺して、オニは村へ入っていった。
そして、村人、家畜に至るまで全ての命を絶たせた。
それからというもの、オニは山に立ち入る全ての人や妖を殺/害した。
やがてオニの存在を知り、退治するために修練を積む者が現れ始め、それらが対魔師の始祖となったと言われている。
だが、いくら特別な力を持てたとしても、血を浴び続けた凶悪な力に勝ることはできず、無惨に命を散らしていった。
そうして百年を過ぎた時、遂に神仏が現れて、オニを人も妖も近寄れぬ深い山奥に閉じ込めた。
神は言った。
「お前を求める人間は後を絶つことはない。けれど、ここまで辿り着く者には厳しすぎる道のり、多くの者は諦めてしまうだろう。
それでも、もしここに辿り着けた者が良き人間であったなら、お前は、その人間と共に生き、学び、正しいことを身につけなさい。
もし、また外で悪さをするならば、私は何度でも、お前をここに閉じ込めるでしょう」
そう言い残して神は消えた。
オニは何百年も山の奥深く、独りで過ごした。
幾百年の間、後悔していたのか、過去のことを考えたのか定かではない。
ーーこれは各地に残された対魔師の伝承として密かに伝えられている、「山鬼伝説」である。
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