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女「最低‼️」


バシッと平手を打つ音の後、角から女性が飛び出して走り去る。

気不味い場面に出会したな、と思いながら恐る恐る角から先を覗いてみると、そこには見知った顔があった。


「ルゥ」


幼馴染の人物に近寄る。

その頬にはクッキリとしたビンタの跡が赤く染めていた。


「うわ、痛そう。大丈夫？」


バッグの中を探っては、取り出した冷えピタを差し出す。普段、熱を出しやすいからと持ち歩いている物が役に立つとは。


ル「ありがとう」


ふわり..優しい笑みを浮かべる彼は、＊＊の幼馴染だ。

容姿、家柄、教養、実力を兼ね備えたカースト上位の彼は、とにかく昔から異性にモテている。

いつも誰かしらと付き合い隣にその異性を侍らせているが、あまり長く続いた話は聞かなかった。


よく振られる場面に遭遇してしまうのは不運なのだろうか。


「…また、振られたの？」

ル「そのようだな」


平然と言うルーファウス、
その心は何処にあるのだろう。


ル「つまらん男、だそうだ」

「そんな事ないのに」

ル「そういうお前こそ、また振られただろう」

「ぅ」


情報通の彼の元には様々な噂話が寄せられてくる。
大学構内の殆どのことを把握しているのではないだろうか。


つい先日、付き合い始めたばかりの彼氏に別れを告げられた。

＊＊も小柄で愛らしい姿をしている為か、よく告白されては付き合うのだが何故か長続きしない。

ポロ..＊＊の目から涙が流れ落ちる。


ル「泣くほど好きだったのか？」

「…分からない」


失意なのかすら分からない。
ただただ哀しくなる。


ル「オレなら泣かせはしない」


指で、その涙を拭いながらルーファウスは言う。

いつもの言葉で慰めてくれる彼に＊＊は泣きながら笑む。


「私には勿体ないよ」


彼の隣に立てる程、美人ではないことくらい解っている。


ル「(…どうして上手く伝わらない)」


もどかしさに息が詰まる。

けれど自分の言葉で笑顔になるのを見ると、どうでも良くよくなってしまう。

笑顔も、泣き顔も、彼の前では見せる＊＊。
特別である事を自覚もしている。

だからこそ、もっと特別になりたいと欲してしまう。


ル「(どうすれば互いに唯一になれるのか)」


一番、欲しいと渇望する存在が手に入らないのは何故なのか。他の物なら、どんな物でも手にすることが出来るのに…。


手段を選ばなければ得ることは出来るだろう。

だが、それでは駄目なのだ。
心ごと総て自分に向いていなければ意味はない。


彼女の鈍感なまでの天然さのせいか、
ルーファウスの気持ちには気付かない。

近すぎるせいかもしれないが、離れることが出来ない。それは望まない。


「そういえば保険医、変わったって聞いた？」

ル「そうなのか」


興味無さそうに素気なく返事するルーファウス。


「メンクイの友達が『凄いカッコいい人きた！』って騒いでたから」

ル「気になるのか？」

「気になるより、絶対お世話になるもん…」


体の弱い＊＊は保健室の常連だ。
わざわざ見に行かなくても利用する時に嫌でも会うことになる。

そんな話をしながら２人は大学寮に戻ってきた。

ロビーホールの階段を上がった右側が女子寮で、左側が男子寮と分かれている。食堂などは一緒だ。


ル「そうだ、レポート用の本を見つけておいたぞ。後で部屋に来てくれ」

「本当？わかった、後でトークするね」


そう交わして２人は自室へと戻った。




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