Key.

あれから俺は、幻獣界、封魔壁より羽ばたいたフェニックスが最後を迎えたという洞窟へ足を運んだ。


あちこちで宿を取ったり買い物をするたびに、仲間の動向を耳にした。



元帝国将軍が、打倒ケフカのために再び剣を握った。

フィガロ国王が自国を救うために、王弟と共に、見事に魔物を討った。

世界一のギャンブラーが新しい艇を携えて、大空を飛んだ。


セリスを筆頭に、離れ離れになった仲間たちが集結していく。

そんな彼女の活躍を風の噂で聞きながら、俺は何も気付かない振りをして、ただただ秘宝を手にするために無心になった。



これがなくては、何も始まらない。

レイチェルが蘇ったら今度こそ彼女に愛していると伝え、セリスの想いを受け入れて尚、今後の人生を考える。


間違いなく、どちらかを泣かせてしまう結果になるだろう。

それは俺が、セリスへの想いを曖昧にしてしまった、己の不甲斐なさのため。

それならいっそ不甲斐ないなりに、答えを彼女らに示すしかない。



―――愛しい女を泣かせてまでも探す価値はあるか?

―――あぁ、あるさ。



心に決めた今でも耳に残る、フーガンの言葉。

それに今答える、俺。


そう、間違いなく探す価値はあるのだ。

俺には、守りたい女がいる。

約束を果たし、彼女たちをこの手で守ってやる使命がある。

俺のせいで泣かせてしまうならば、心の傷が癒えるまで守る。

それができなければ、俺は二度と、レイチェルの前にも、セリスの前にも立つことはできない。

ロック・コールという男として、もう、生きてはいけないだろう。


目の前にできてしまった矛盾の壁は、溶かしてでも壊してでも、必ず消してから目の前の真実を受け入れる。

これが、二十五年間生きてきた、俺の信念だから。

そして、ほら、見付けたぜ?

俺の未来を託した、神々しいお宝を。


「ロック……」


噴き出すマグマの中に眠る、最後の宝箱の鍵を開けた。

このマグマにも負けないほどの熱を帯びた石は、後ろから響いた愛しい女の声にも反応するほどに輝いていた。


フーガン、俺は前に進むよ。

あんたの言う通り、俺はろくでなしかもしれない。

だからこそ、それを覆すほどの時間を費やしてきたんだ。

少しでも、彼女たちにまっとうな自分を見せるために。


「みんな、やっと見付けたんだ! あの世から魂を呼び戻す秘宝を!」



fin.
2013/06/10

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