Key.

野心ある者は、ただそれだけを力に物事を推し進めようとする。

そんな者たちに魔導を注入を行ったことで、本来人間とは相容れない幻獣の力は異常反発を引き起こし、人体に何かしらの影響を与えた。

その結果、ケフカは人格が崩壊し、ガストラは全体的に防御力を損なうこととなった。


「じゃあ、ガストラやケフカの印が捺されているのは……」

「奴らは何かの拍子で、自分たちに死が訪れるだろうことを察していた。この秘宝は、近い将来にその日が来た時の保険だ」


同じ魔導実験を行ったことで、互いに死を意識したということか。


「お前のいうセリスとは、特徴からいって、元帝国軍の将、セリス・シェールのことだろう。金色の長い髪をした美しい少女。俺はあの娘の下に就いたこともある。綺麗だが、圧倒的な氷魔法の力と、孤独を持っていた」


セリスが無事だったのは、元々野心を持ち合わせていなかったからだ。

花や蝶を可愛い可愛いと愛でる、優しい女の子だったから。


「セリス……」

「まったく、伝書鳩が持って来た依頼書など、阿呆らしくて燃やしてしまおうかと思ったわ。内容が曖昧過ぎて、依頼人の本気などちっとも伝わらない」


俺の手垢が付くほどに、紙面の中心に皺が集まる。

無意識だが、手元がブルブルと震えていた。

屈辱だったが、この男が言うことも最もだ。


「本当は、そんな生半可な奴の頼みなぞ聞きたくもなかったが、……愛しい女を泣かせてまでも探す価値はあるか? そう思うのなら、やれるだけやってみるが良い。幻獣フェニックスの魔石、己が手にするのだ」

「すまねぇ……ラフー・ル・ドルガン」
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